第29話 校則は破ってはいけません4
「シュッ………」
何かに火がつくようなした後、導線に火のついたロケット花火が小窓から投げ込まれて来た。
「これが爆発する前に出てこないと火傷するっすよ?」
優葉の声が小窓の外から聞こえて来た。
そんな言葉を聞いてる間にも、導線に着いた火が段々とロケット花火本体に近付いている。
「ちょっと!樹君早くドア開けて!」
「分かってるから待って!」
俺は急いでドアの鍵を開けて、横にスライドしようとした。
「開かないんだけど!?」
何かつっかえ棒的な物がドアの横に合って、開けることが出来なくなっている。
おそらく優葉が仕掛けた物だろう。
トイレから出ろと言っていたが、俺らを爆殺するつもりしかない。
「あれ?どうした?樹君?」
外から矢吹の声が聞こえた。
チャンスだ、矢吹に頼んでつっかえ棒を取ってもらおう。
「矢吹!つっかえ棒みたいなの取って!!」
「え〜ちょっと待ってね〜」
矢吹ののんびりとした声とカタ、カタカタと何かがドアに当たる音が聞こえた。
「う〜ん、取れないな〜」
普段は行動早くてテキパキしてるのに、なんでこういう時に限ってのんびりしてしまうのだろう?
「パチパチ………」
火の音が聞こえたので、焦って後ろを向くと冬樹は半脱ぎだった服を着直して、元通りの格好になっていた。
その後ろ、床に落っこちたロケット花火本体にもう直ぐ火がつきそうになっている。
「まだ!?」
「なんかね、引っかかってて取れない」
また、矢吹ののんびりとした声が聞こえた。
しかも取れないという内容の返答。
普段俺を叩いたり蹴ったりしているあの力を使って強引につっかえ棒を取ってくれよ!
「シューー」
そう願った直後、ロケット花火に火がつく音がした。
「あぁ、オワったな」
「シュボッ!」
「きゃあ!」
ロケット花火は1回強く光を放ち、勢いよく俺に向かって飛んできた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、どういうことか説明してくれるっすよね?」
「……………」
俺と冬樹、2人はボロボロの状態で地べたに正座させられていた。
正座させられてるのは公衆トイレのすぐ近く、社会人カップルが1組いるくらいで他は誰もいないところだ。
「ねぇ、どういうことっすか?」
少し髪が焦げてチリチリになってしまってる俺と、色白の肌にロケット花火から出た燃えカスを沢山つけた冬樹。
そして俺を鬼の形相で見下す優葉。
「浮気でもしたのかな……?」
「あんな可愛い子で2股とかマジかよ………」
「あんな可愛い子?私は?」
「もちろん、俺の中では君が1番だよ」
偶々近くにいた、社会人カップルがイチャつきながらそんなことを言っているのが聞こえる。
2人の言う通り、はたから見ると公衆トイレで浮気していたのを彼女に見つかり、浮気相手と一緒に彼女から叱責を受けているようにしか見えない。
「私が樹君に色仕掛けをしたんです………」
俺が「本当に申し訳ございません」と言おうと思ったのだが、冬樹が自分で白状した。
しかも俺に罪をなすりつけるとかではなく、ちゃんと自白している。
「色仕掛けって、何したんっすか?」
「おっぱいとコンドームを使って誘惑しました」
うん、紛れもなく事実だ。
いつもふざけた感じを漂わせてる冬樹がここまで正直に話すのはこれが初めてだ。
優葉が怒っているのを察しているのだろう。
矢吹は眉間を押さえて「こいつらやってんな」とでも言いたげな顔をしている。
「へぇ〜、じゃああの冬樹ちゃんの生おっぱいを樹君が鷲掴みにしていたのも、冬樹ちゃんの誘惑が原因ってことっすね?」
「そうだけど、私は どうする? って選択を与えたわよ?それで揉むっていう選択をしたのは樹君」
「だそうよ、い、つ、き、君?」
優葉の怒りの矛先が俺へと向いた。
怖い、ただただ怖い。
殺気やら憎悪で満ちた視線が俺に飛んできている。
「はい、誘惑に敗北しました」
「私の時は敗北しなかったのに?」
それを言われると何故かすごい申し訳ない気持ちになった。
「はい」
「おっきなおっぱいの魅力に負けちゃったんだ?」
「はい」
「へぇ」
(怖っっ!!)
この問答を繰り返した直後の「へぇ」が1番怖い。
何考えてるか分からないので恐怖しか感じないからだ。
「優葉のおっぱいを冬樹ちゃんくらいまで大きく育ててくれるなら今回の件は見逃して上げてもいいっすよ?」
おっぱいを大きく育てる……?何かサプリメントとかおっぱいを大きくする食品を買ってこいということだろうか?
「大きく育てるので見逃してください」
「なら2人とも許すっす」
「やったぁ!」
「え?冬樹も?」
俺が許されるのは分かるが何故、主犯格である冬樹も一緒に許されるのだろうか?
「別に冬樹ちゃんには言うほど怒ってないので」
「理不尽過ぎじゃね?」
主犯は冬樹なのになんで冬樹は殆ど怒られないのだろう?
女子陣いつも対応の差が酷すぎない?
「で、ようやく説教終わった?終わったならみんなで花火やりましょう?」
横からカラフルな手持ち花火を右手に持った矢吹がそう言った。
俺たちが優葉に怒られ終わるのを待っていたようだ。
後ろで火のついた蝋燭が灯っていて、矢吹の左手にはチャッカマンも握られているので花火の準備は万端だ。
「そう(ね)(っすね)(するか)」
俺と冬樹も立ち上がって、蝋燭の側にある花火セットの元へ向かった。
後書き
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