第26話 校則は破ってはいけません1

「今度公園で花火でもして遊びません?」


「花火……もう夏っすもんね〜」


4人でRITをしていると冬樹がそう言ってきた。


優葉の言うように今は6月上旬、季節は完全に夏だ。


道路の脇に祭りの準備なのか、提灯が飾られているところも出てきている。


「やってみたいけどね………」


中学生の頃はそんな事出来る友達居なかったし第一、親が許可してくれるはずもないので夜遊びなど出来るはずも無いので、出来る事なら俺もやりたい。


「なにか出来ない理由でもあるんっすか?」


「俺らの高校って午後10時以降外出禁止とかいう校則なかったっけ?」


そう、同波高校には(午後10時以降、生徒のみでの外出を禁ずる)という校則があるのだ。


県や地域で外出時間に決まりはないのだが、何故か同波高校はそういう意味不明な校則を設けている。


高校生なんだし別に良いじゃないか!!


「別にバレなきゃ良いと思いますけど」


「そうだと良いんだけどねぇ」


あくまでも噂話なのだが、毎日夜の街を生徒指導の先生が徘徊しているという話がある。


実際に午後10時以降に遊びに行ったやつが反省文を書かされたという話もあるので、いつもではないが徘徊してはいるのは事実なのだろう。


同波高校にはタバコ吸ったり酒飲んだり校則破りまくるような不良はいないので生徒指導を受ける人など殆どいない。


だが極稀に「バレないだろ!」とか考えているのか、校則破って生徒指導室に連れ込まれる人もいる。


「というか、矢吹と優葉の学校は大丈夫なの?」


「そんな校則ないっすよ」


「ミーの学校もない」


「なんで私たちの学校だけぇ!」


実に厄介な校則だ。


12時以降とかなら理解できるけど10時以降は流石に厳しいだろ。


「でも雪花ちゃんはカツラとか被ればバレなくない?」


「樹君も、入学したばかりで顔覚えられてるっすか?」


「「確かに……」」


冬樹は日本だと、めっちゃ珍しい銀髪だ。


なのでそのまま夜出歩いたらすぐにバレてしまうだろう。


だが、髪色を変えてしまえば制服を着ているわけでもないので、顔をがっつり見られなければバレる心配はあまりないだろう。


優葉の言った通り俺もまだ入学して半年も経っていない新入生だ。


生徒指導の先生は2年生の担任なので、顔を覚えるどころか俺の顔を見た事すらないだろう。


「なら行っても大丈夫か……?」


「大丈夫っすよ!」


「ミーも大丈夫だとは思うけど」


「私も髪の毛隠すようにフード付きのパーカー着てくから行きましょう?」


「よし、じゃあ行こう!」


「じゃあ何曜日にします?」


「金曜日とかどう?」


生徒指導の先生とはいえ人間だ。


金曜日くらい休みたいと思うだろうし、疲れているからわざわざ夜の街を徘徊などしないだろう。


「次の日も休みだし……うん、金曜日にしましょう!」


こうして俺たち4人は夜遊びをする約束をしたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


金曜日………


ついにこの日がやってきた。


冬樹も薄手のパーカーを着て、フードを被り髪の毛を完璧に隠している。


俺は何も変装しなくても大丈夫かと思っていたが、少し不安だったので俺も薄手のパーカーを羽織ってフードを被った。


優葉と矢吹は校則を破っているわけでは無いので、普段と同じようにラフな格好だ。


虫除けスプレーとかも持ったしもう準備万端だ。


「よし!手持ち花火とロケット花火も買ったし、行きましょう!!」


「「「行こ〜!!」」」


俺たちは人があまり居ないであろう午後10時過ぎくらいに家を出て、電車に乗って火遊びのできる少し大きめな公園へと向かった。


「なんかワクワクするっすね」


こんな夜中に同年代の人同士で遊びに行く事など過去のなかったのと、校則を破る背徳感で余計に俺はワクワクしていた。


「あ、俺飲み物買うの忘れたからコンビニで買ってきていい?」


「そういえば私も持ってきてないから着いていくっす!」


「ミーたちも一応着いてく」


俺たちはそばにあった24時間営業のコンビニに入った。


普段だったら、同級生見られたくないので4人で行動はしないが今日に限っては夜遅いので会う可能性など殆どないので気にはしていない。


俺はコンビニに入って速攻でアクエリアスを手に取り、レジへと向かい会計を済ませ自動ドアの反応するギリギリ手前で3人待った。


待っていると、矢吹とさっきの店員さんが個人的に話しているのが目に入った。


(どうしたんだ?)


少し矢吹たちに近づき、会話の内容に耳を立てた。


「矢吹さん、どうしてこんな時間に?」


「あら、遠藤君?」


「覚えてくれたんですね!!」


この会話と、矢吹の様子で俺は察した。


多分矢吹と同じ学校の生徒だ。


矢吹に熱い視線を向けているので多分矢吹が好きなのだろう。


開明高校は外出時間に関する校則がないと言っていたので、時給が高くなるこの時間にバイトをする学生も少なからずいるだろう。


そして今の矢吹には彼氏のいる疑惑が流れている。


つまり………


「もしかして彼氏と遊んでるんですか……?」


(ですよね!!そうなりますよね!!)


こんな予測を建てる。


そのタイミングで矢吹が致命的なやらかしをした。


どう反応すればわからなくなった矢吹がこちらに視線を向けてきたのだ。


その視線の行く先を追って、バイトの学生も俺の事を見てきた。


目が合う事約2秒。


これほどまでに気まずい瞬間はあるのだろうか?


矢吹の事を好きな人と矢吹の彼氏(仮)が見つめ合うこの状況。


地獄だ。


「早くお会計を済ませてもらえるかな?」


「は、はい………」


バイトの店員が固まったので矢吹がそう促して、会計を済ませたのだった。



後書き


体調が治りました!!

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