第20話 モテるって辛い(優葉、矢吹視点)

優葉side


「優葉さん、付き合ってください!」


ホームルームが終わって直ぐにほとんど関わりもない男子生徒に呼び出された。


「ごめんなさい」


私には既に好きな人がいるので告白お断りした。


これで10回目のお断りだ。


「そう……ですよね……すいませんでした」


その名前も知らない男子生徒の顔がみるみる悲しげな表情になっていく。


そして耐えきれなくなったかの様にその場から駆け足で去っていった。


「はぁ」


自分以外みーんな居なくなった屋上で私は溜息をついた。


「なんでみんなフラれるって分かってて告白してくるんすかね」


私にも人の心があるので、自分のせいで相手が悲しい顔をしていると罪悪感が湧いてくる。


それは何回繰り返しても慣れない。


罰ゲーム的な感じで大人しそうな子が周りに囃し立てられながら来たり、「俺なら行けんじゃね?」という、どこから湧いてくるのか分からない自信を持ってくる人もいる。


謎の自信を持ってきた人は間髪入れずにお断りしてるが。


「……モテるって辛いっす」


中々痛い発言だが、この場には自分1人しか居ないので他の人に聞かれる心配はない。


それに実際私はモテている。


「どうやったら告白されないようになるんすかね……」


告白されても絶対にOKを出すつもりはないので、告白にくる人を減らしたい。


何人もフっていると流石に罪悪感が積もってくる。


1度だけ、男嫌いな女子を演じてみたのだが、ドMな男子が自ら罵られに来るので嫌になってしまった。


「どうしよう…………あ!そうだ!」


私もしかしたら天才かもしれない。


樹君を私の彼氏として広めれば良いんだ!!


そうすれば、告白してくる人も減ってくるはず!


いきなり他校の彼氏が出来たと言っても、急すぎて嘘だとバレてしまいそう……


よし、匂わせ作戦で行こう!


時々樹君の影をチラつかせて、段々仲良くなって付き合いましたよ感出そう!


「じゃあ帰ったらオンスタにそれっぽい投稿してみるっすか」


そう呟きながら写真のフォルダを開いて、私は気づいた。


「樹君との2ショット写真がない!!」


これは大問題だ。


妻と夫だけが写っている写真が無いだなんて!


「樹君に今から会いに行くっす!!」


私はそう言って、同波高校の最寄り駅を調べ電車乗った。


そして同波高校の最寄り駅に着くと何故かそこには雫ちゃんがいた。


「雫ちゃん?どうしたの?」


「あれ、優葉ちゃんこそどうしたの?」


「樹君に会いにきた!!」


「はぁ、あんたもそうなのね」


どうやら雫ちゃんも樹君に会いにきたみたいだ。


「そろそろ樹君がくる頃合いだと思うけど」


「そうっすね!」


私は周りを見渡して、同波高校の制服を着ている人を探した。


すると、樹君が人混みに紛れて居た。


「樹く〜〜……」


冬樹ちゃんとイチャイチャしている。


(胸当たってる……)


私には無い大きな胸が樹君に当たっている。


その事実だけで耐えられなかった。


それを受け入れる樹君も許せなかった。


(やっぱり、樹君はしっかり私が管理しないと浮気しちゃうかもしれないっすね)


私は樹君を拘束するために近づいていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


矢吹side


「つら」


ミーは下校途中そんな事を呟いた。


下校はいつも1人なので今のを聞かれる心配はない。


なんで1人かって?


男子たちがいつもミーに絡んでくるせいで、女子たちから不興を買っているからだ。


男子は大方部活、女子も居るには居るが私を嫌っている人ばかり。


酷い話だ。


ミーは何にもしてないのに。


「ほんっっと、これだから男は嫌いよ」


実はミー、極度の男嫌いだ。


まぁ、樹君はミーを困らせるような何かをしてくる人間ではないと分かっている。


優葉ちゃんの時といい、雪花ちゃんの時といい女馴れしている感じはなかったので一応信用はしている。


樹君の様子を見るに、あの下着事件も偶々だろう。


「あ〜、矢吹ちゃ〜ん」


キショい声を上げて男子が近づいてきた。


多分こいつはいっっも色んな女子に声掛けまくっては、逃げられを繰り返してる哀れな人だろう。


なんとなく顔を見たことがある。


「今から遊ばない?」


「ごめんなさ〜い、私今から用事があって〜」


なんでこんなのにお淑やかに接しなきゃならないのだろうか。


1年生の頃、もっと素を出しておけば良かった。


ミーは1年生の頃、俗に言うインキャという奴で自分の席で1日の学校生活殆どを完結させていた。


男子に絡まれる事も無かった。


しかし「こんな自分はもう嫌だ!!」と一念発起して、イメチェンしたら今度は虫のように男子が集ってくる。


これでは女子の友達など出来るはずがない。


イメチェンで得たものといえば、男子の人気と女子の不興。


どっちも要らない。


「そう言わずにさぁ〜」


「あ、もうほんと今日は無理なんです、すいません」


「ちょっと待ってよ〜」


ミーは小走りでその場を立ち去った。


「どうすれば男が寄り付かなくなるだろう?」


色々考えて、彼氏がいることにするという案が思い浮かんだ。


しかし、それではそのうち不都合が生じてしまうだろう。


不都合が生じないようにするにはどうするか……


「あ、樹君に万が一の彼氏役を頼もう」


良い人材が居たのを忘れていた。


樹君は人が良いので頼めば直ぐ引き受けてくれそうだし頼んでみよう。


「よし、じゃあ早速同波高校行こ」


2人きりの状態で話したいから、ミーは同波高校へ向かった。


「雫ちゃん?どうしたの?」


「あれ、優葉ちゃんこそどうしたの?」


同波高校の最寄り駅に着くと、優葉ちゃんがいた。


どうしたのだろうか?


あ、そういえば樹君に弁当を作ったと言っていたのでその感想をいち早く聞くためにここに来たのかもしれない。


優葉ちゃんは樹君のことが大好きなので全然その可能性はある。


「樹君に会いにきたっす!!」


やっぱりそうだった。


これじゃあ、あの話をするのは無理だな……


また今度にしよう。


どうしようもないので私はそう割り切って今回は諦めた。


「そろそろ樹君がくる頃合いだと思うけど」


同波高校の生徒の集団が見え始めたので樹君がくるのもそろそろだろう。


「そうっすね!」


ミーは周りを見渡して、樹君を見つけた。


その瞬間、私は頭が痛くなった。


「ヤダ!!」


雪花ちゃんとイチャイチャしている。


「樹く〜〜……」


優葉ちゃんが声を出した直後、横で炎が燃え上がったような錯覚が起きた。


その方向を見ると、優葉ちゃんが樹君を見て微動だにせず固まっている。


そして何も言わずに、樹君の方へと歩いていった。


(絶対面倒な事になる……)


ミーはそれを察知して、他人のふりを始めたのだった。



後書き


明日からカクコンだ!


あとなんか還元リワード?が20%増加するらしい!

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