第16話 浮気……?←付き合ってないでしょ!?

「じゃあ、女子3人で料理対決しましょう!」


「「「え?」」」


冬樹が唐突に料理対決を宣言した。


みんな戸惑っている。


俺は料理出来ない前提で省かれているので良いが、矢吹と優葉はどうなのか?


「なんでっすか?」


この疑問が出るのは当然だろう。


「誰の料理が1番美味しいか樹くんに審査してもらって、その中で1番美味しかった人を料理当番にします!」


「やってもいいわよ」


「樹くんの胃袋掴んでやるっす!」


2人とも謎にやる気を出し始めた。


優葉に至っては腕まくりをして、やる気満々だ。


「俺が審査すんの!?」


「みんな1人分作るから頑張って食べてね」


つまり俺は今日の夕飯、優葉、矢吹、冬樹が作った3人分の料理を食べるようなのか……


うん、無理だ。


胃がはち切れるぞ。


俺は男子の中で言ったら割と少食な部類だ。


それに、矢吹が料理出来るのか分からないので怖い。


あそこまでやる気を出しているなら、料理が出来ると信じたいがやっぱり不安だ。


「俺少食だからそんなに食べれないんだけど!?」


「まぁまぁ、いいから樹くんはRITでもして待ってて」


「あ、待っ」


(バタン、ガチャ)


ドアが閉まり鍵をかけられた音が聞こえた。


この物件、残念なことに内からも外からも鍵で施錠するタイプのドアなので、鍵がないと中からも開けられない。


とんだ欠陥物件だ。


なんで鍵がないと中からも開けられない設計にしたのだろう。


「RITするか……」


俺はこの部屋から出る事が出来ないので諦めて冬樹の言った通りにRITを始めた。


「なんか足りない……」


数試合やってそう思った。


普段ゲームをする時は、あの3人とやっているが今日は1人ぼっちだ。


もしかしたら誰とも会話せずに1人でゲームをするのは、冬樹たちとフレンドになって以来1度もないかもしれない。


要するにゲーム音以外の音が静か過ぎるのだ。


「どうしよ……野良スクワットしてみようかな」


ふと、そう思い、スクワットでマッチングを始めた。


野良でやるのは今回で2度目。


1度目は冬樹たちと出会ったときだ。


そんな事を考えているとすぐにマッチングした。


チームメンバー

-いちごミルク

-player

-player


嘘でしょ、botを2人居るんだけど。


このゲームは20秒以内にマッチングしないとbotが追加される仕様になっている。


それにこのゲームはソロモードでプレイしている人口が多く、野良でやる人が少ない上に夕食の時間と重なってしまったのでこうなったんだろう。


まあboyも全く役に立たないという訳ではないので、頑張れば勝てるだろう。


「よろしくおねがいしまぁす」


ゴソゴソっと音がした後、途轍も無く可愛いロリボイスが聞こえた。


なんだこれの声……可愛い過ぎる。


声だけで、美幼女なんだろうなと想像出来る……


俺は速攻でヘッドホンを取ってきて、ボイスチャットをオンにした。


我ながら単純だとは思うよ?でもさしょうがないじゃん。


「よろしくお願いしま〜す」


「あ!話せるんですね!」


こんな可愛い声聞いたことないぞ!っていうくらい可愛い。


ちなみに言っておくが、俺は決してロリコンではない。


これは男として当然の反応だ。


そして、普通に試合が始まったのだが中盤に死んでしまった。


そのタイミングで時計を見ると冬樹たちが料理を作り終わりそうな時間だったので俺はそこでゲームをやめる事にした。


「フレンドになってもらってもいいですかぁ?」


「もちろん!」


反射的にそう答えた。


そしてフレンドになったあと俺はチームを抜けた。


「ふぅ、そろそろ出来る頃かな……ヒィ!」


振り向くと、優葉が俺の真後ろに立っていた。


ヘッドホンをしていたからドアを開けた音が聞こえなかったんだろう。


優葉はエプロンも何も付けていないので、料理は作り終わったのだろう。


「すまん、今行くわ」


遅れてしまったことを軽く謝り、俺は立ち上がって部屋を出ようとした。


「待って欲しいっす」


優葉に腕を掴まれた。


「バタン」


すると優葉はドアを閉めて、俺との距離を詰めてきた。


「樹くんは私が料理してる間、何してたんすか?」


「冬樹が言ってた通りRITだよ」


というかそれ以外何もする事がない。


なんの意図があったのだろう?


「誰と、話してたんすか?」


「野良でやってたときに、味方がボイスチャットオンにしたから俺も話してただけ」


「男っすか?女っすか?フレンドになったっすか?」


どういう意図だ?


「女でフレンドなったよ」


俺は正直にそう答えた。


その瞬間、さっきまで普通だった優葉の目が一気に光を失った。


(俺またなにか地雷踏んだ……?)


俺は意図せずに地雷を踏みやすタイプらしいので、優葉の様子を見て不安になった。


「へ〜、樹くんは私が一生懸命料理をしている時に、浮気をしていたと?」


「浮気??」


なんの事だろうか?


「樹くんの奥さんは私っすよね?」


その言葉で俺は全てを理解した。


俺が監禁された時に、優葉は「今日から樹くんのお嫁さんは私っすよ?」と言っていた。


つまり優葉は今、俺が女子とゲームをしていた事を浮気と言っているのだろう。


「いや、俺たち付き合ってないよ!?」


「樹くん、自分で責任取るって言ってたっすよね?」


確かに言った。


優葉の裸と一緒によーく覚えている。


だから否定出来ない。


「浮気っす、フレンド解除っす」


すると優葉は俺のPCを勝手に操作し始めた。


そしてあの子のフレンドを切ろうと招待画面を開いた。


「やめてくれ!俺の数少ないネッ友がぁ!!」


と言って止めに入った。


そしてカーソルがいちごミルクの文字に向かった。


(終わった…切られる)


そう思ったのだが、何故は優葉はそのままチャット画面を開いた。


思い留まってくれたのか。


そう思ったのだが、やっぱり不安なので画面を覗き込んだ。


「なにをしてんの!?」


そこには(私の男に手を出すな、女狐)と打ち込まれ、送信されていた。


そしてそのまま流れるようにフレンド解除を選択しようとした。


「やめろぉ!」


俺は最後の抵抗で優葉の右手を掴み、クリックするのを止めた。


「何するんすか!?」


妨害が入った事で優葉が俺の手を振り払おうと身体を捻った時だった。


「うわ、ちょ!危ない!!」


何故、あの体制からバランスを崩すのか分からないが優葉が俺に寄っ掛かってきた。


そして俺はいきなりの出来事に対応できず、そのまま後ろ向きに転んでしまった。


「いってぇ……っていうか退いてくれ!」


優葉がいつの間にか俺の上に馬乗りになっていた。


腹部に優葉の体重がかかっている。


「優葉ちゃーん、冷めちゃうよ〜………」


矢吹が最悪なタイミングで部屋に入ってきた。


「料理は冷めるけど、2人は熱々だね」


上手いな……ってそうじゃないだろ!!


「熱々じゃない!!」


「じゃあ何やってるの?」


今の状況を客観的に見る。


2人きりの部屋で男子校生の馬乗りになっている女子高生。


変な誤解を生んで当然な状況だ。


俺はさっきの事を説明しようとした。


「優葉が勝手にフレンド消そうとしてきたから、止めようとしたら……」


「言い訳いいから、そういうプレイでしょ?」


「違う!!」


話を聞いても貰えなかった。


「そういうプレイするのはいいけど、ご飯後にしてよ」


そう言って矢吹は部屋から出てってしまった。


あとそういうプレイってなに!?


「「…………」」


き、気まずい……


「ご、ご飯冷めちゃうから行きますか!」


「そ、そうだな!い、行こうか!」


これ以上気まずい空気にならないようにする為に、俺たちは急いでリビングに戻ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る