第15話 ノーデリカシーは良くない

「樹君どうしたの?」


「ドアが顔面直撃した……」


「可哀想に、じゃあやりましょうか!」


冬樹もまた、全然可哀想と思っていないであろう声色でそう言った。


なんで誰も俺の心配をしてくれないのだろうか。


冷たい人たちだ。


そう思いながら部屋のど真ん中にある丸テーブルに近づいた。


丸テーブルの下にWi-Fiルーターがあり、テーブルの上には4台のPCが並んでいる。


各々ゲーミングチェアを持って来ているので準備は完璧だ。


「待って、まだ設定終わってない」


矢吹はあの時、風呂に入っていたからWi-Fiの設定をしていなかったようだ。


テーブルの下でモゾモゾしている。


「ちょっと回線の調子確かめるのと、少し腕ならししたいから1回ソロでやってくる」


俺はすでににWi-Fi設定が済んでいるので3人にそう告げてRITを起動した。


初めてみると、回線が悪いなどはなく普段通りにプレイする事が出来た。


「ん、右に敵いるな……」


そう、呟いた時だった。


マウスを握っていない左の二の腕に何か柔らかい感触がした。


一瞬だけ左側に目を向けると冬樹が俺のゲーム画面を覗き込んでいて、他の人と桁違いの大きさのソレが俺の二の腕に当たっていた。


うまーく冬樹の谷間に挟まって当たっている。


しかし、冬樹は気づいていないのか俺のゲーム画面をジーッと見ている。


一瞬「胸が当たってる」と言おうかと思ったが、俺がそういうところばかり意識している変態だと思われそうなので、俺はなにも言わずにゲームを続行した。


そんな事を気にしているうちに、さっき右側に見えていた敵がすぐ近くまで来ていた。


多分相手に自分の位置がバレていないのでこのまま隠れ続けて、奇襲を仕掛けようとした。


すると冬樹がさっきより近づいて来た。


なんとなく柔らかいな〜じゃなくてはっきりと布越しでも感触が分かるほどだ。


段々と集中が冬樹の双山へと意識が移っていった。


(集中しろ〜、集中)


集中しないと、動きと男の大切なものガチガチになってしまいそうだ。


(柔らかぁ……)


しかし残念なことに集中出来ない。


「あ………」


結果だ、奇襲するはずが初弾を見事に外し、逆襲されショットガンでワンパンされしまった。


「ザッコ、ププププ〜」


コイツ………


普通にイラついた。


「さっきから俺の二の腕に冬樹の胸が当たってて集中出来ないんですけど」


俺は抗議の声を上げた。


「だってワザと当ててるも〜ん」


ワザとだったのかよ!?


通りで綺麗に俺の二の腕が谷間に挟まったわけだよ!


あと意図的に胸を当てるとか変態がする事だ。


「グニグニしてて落ち着かないからやめ、痛!?」


その瞬間、俺の脛に強烈な痛みが走った。


椅子の下をみると矢吹の右腕が見える。


おそらく手刀を入れたのだろう。


「なんで!?俺なんも悪い事してないじゃん!?」


俺はまたもや抗議の声を上げた。


さっきの冬樹の胸に関しては俺が正しいだろうが、これは理不尽過ぎる。


「少しは言う事考えたら?自分の発言を顧みてみて」


矢吹がそう言ったので、俺は自分の発言を顧みてみた。


「さっきから集中出来ないですけど」


多分これは大丈夫だ、次。


「グニグニしてて落ち着かない」


絶対にlこれじゃん。


感想を率直に言い過ぎてる。


「グニグニしてて落ち着かないがダメだっ、痛!?なんで!?」


「ダメだと思うならもう1回言わないで」


「すいません」


優葉と冬樹も自分の身体を抱き締めて後退して行っている。


「いや、優葉は当たるほないd、痛!!」


「だから!何回やるのよ!!」


確かに(当たるほど無いだろ)はノーデリカシーだった。


これは殴られても仕方がない。


取り敢えず優葉に謝っておこう。


「優葉ごめん」


「樹君さっきなんて言おうとしました?」


優葉から殺気が漂ってきた。


いくら鈍い俺でもこれは分かる。


どうやら優葉の地雷を踏んだらしい。


「いや、なんでもありません」


「今日の夜覚えておいてね?」


「ヒィィィ!」


ニッコリと笑ってそう言ってきたが、目が笑っていない。


今朝みたいに黒々としている。


「設定終わった」


そのタイミングで矢吹がテーブルの下から出てきた。


「じゃあやりましょうか!!」


設定が終わったので、ようやく全員がゲーミングチェアに座りゲームを起動した。


ゲーム始めるまでの道のり厳し過ぎだろ。


「ボイスチャットしないでやるの久しぶりっすね」


俺たちが一緒にやるようになってから、ずっとボイスチャットを付けてRITをしていたので少し違和感がある。


「喧嘩が始まりだったっけか?」


「多分そんなんだった気がするっす」


「ミーのパーティー入って来て」


思い出話に走りそうになった所を、矢吹が制止してくれた。


「そこそこ良い物資だな……何やってんの!?」


試合中に優葉が俺にグレネードを投げてくる。


残念な事にこのゲームは、味方の銃のダメージは受けないが爆発物からダメージは受けてしまう。


だから俺は速攻でダウンしてしまった。


「ランクマッチじゃないから別に良いけど、やめて!?」


そして俺は担ぎ上げられて、小屋に放り出されドアを閉められた。


ダウン中はドアを開ける事が出来ないので監禁状態だ。


どうしてゲームでも監禁されるの?


最終的には復活させてもらったが、いつか優葉に復讐する事を心に決めた。


そのあとは、優葉に利敵されることもなく和気藹々とゲームをした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お腹減った〜」


冬樹の声で俺はゲームから目を離した。


時計を見ると、もう午後8時だ。


夕飯にはちょうどいい時間帯だろう。


「夕飯にする?」


「「そーしよう」」


俺が聞くと矢吹と優葉がそう答えた。


というか引っ越してきて初めて、ここで夕飯食べる気がする。


「誰が作る?」


矢吹がそう言った。


俺はまず料理が出来ない。


優葉は今朝望まぬ形で料理上手だと知った。


冬樹と矢吹は分からん!


誰が作るのだろうかと考えていると


「じゃあ女子3人で料理対決しましょう!!」


「「「え?」」」


冬樹が唐突に料理対決の開催を宣言した。



後書き


どうも、土曜授業で脳が破壊された作者です。

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