番外編 4人のはじまり

「ガチで勝てないな」


俺はRITを初めて1週間程、勝てなすぎて萎えていた。


始めたばかりで上手くいかないのは当然だが、1キルもせずに死んでしまう。


「野良スクワットでやってみるか」


ずっと1人でやっていても成長しないだろうと思い、俺は野良スクワットでマッチングを始めた。


スクワットとは4人チームでプレイモードだ。


時々、暴言厨とか指示厨がいるらしいのだが1発目からマッチングしたりはしないだろう。


結構すぐにマッチングし、ロード画面に切り替わった。


チームメンバー-メルタン-ダークマター-エンジェル


そう画面に表示された。


みんな独特な名前だな……


「あ、あー、聞こえてますか〜?」


エンジェルがボイスチャットをオンにしたようだ。


もしかして指示厨なのか……


「聞こえてますよ〜」


ダークマターがボイスチャットをオンにしそう答えた。


「どうも〜」


それに続いてメルタンもボイスチャットをオンにして話し始めた。


「蜜柑大好き星人さん?話せる?」


正直なところ俺はあまりボイスチャットをオンにしたくない。


理由は単純、マイク付きヘッドホンを取りに行くのがめんどくさいからだ。


それにこの試合でしか関わりを持たない相手とわざわざ会話する必要もないだろう。


なので俺はチャットで「すいません。話せません」と送信した。


「オッケーオッケー」


ダークマターなる人物がそう言った。


そんなことを話していると試合が始まった。


初動で高レア度の武器や防具が見つかり、3人が敵を薙ぎ倒していってそれはもう順調だった。


(これ勝てるんじゃね?)


俺は内心そう思い始めていた時だった。


「おい、返せよ」


「いや俺の物資だろ」


エンジェルとダークマターの間で物資の奪い合いが始まった。


「俺の方が強いんだから俺に寄越せよ」


「は?こっちの方が強いわ」


「ちょっと落ち着けよ」


メルタンが仲裁に入った。


「というかお前何キルしたよ?ロクにしてないだろ」


「は?お前のキャリーしてたんだろ。さっきからキルパクしやがって」


仲裁が入るも言い争いはヒートアップしていった。


俺はどうするべきなんだ?


メルタンと同じように仲裁に入るor無視する、のどちらかだ。


悩んだ末、俺は仲裁にする事を選んだ。


そしてチャットで「一旦落ち着いてください」と送った。


しかし、そのメッセージに目を向けて無いのだろう。


喧嘩をやめる様子はない。


そしてギズギズしたまま戦闘が始まり俺たちは負けてしまった。


「どっちが強いか確かめるためにタイマンしろよ」


「分かったよ、やってやるよ」


「じゃあ、メルタンさんと蜜柑大好き星人さんにズルとかしないか審判やって貰うか」


「……分かりました」


メルタンがそう答えた。


「蜜柑大好き星人さんは?」


正直、めっちゃ嫌だ。


でも、これで俺が拒否して喧嘩がさらにヒートアップしたらそれもそれで嫌だ。


ならOKするしかないだろう。


「いいですよ」


そうチャットに送った。


「じゃあフレンド申請するから入って来い」


「分かった」


そして、エンジェルとダークマターがチームを離脱した。


「お互い災難ですね……では」


それだけ言ってメルタンも抜けてしまった。


「気まず過ぎだろ」


俺はそう呟きロビーに戻った。


ロビーに戻ると、言われた通りエンジェルからフレンド申請が届いており、許可すると速攻でチームへの招待が来た。


そのあと、メルタンとえダークマターも入って来た。


「全員来たから、始めるぞ」


そうしてクリエイティブモードに入った。


このモードは自分でステージを作って遊べるモードだ。


ロードが終わると2人は速攻でV字の建築物を作った。


「スタート」


メルタンがそう言った瞬間、2人が凄い勢いで建築を始めた。


空高くで銃声が聞こえる。


「はぁぁぁ?」


少ししてエンジェルがそう言った。


「一本先取〜」


どうやらエンジェルが負けたようだ。


多分3本先取なのだろう。


「クソっ、次だ次」


そしてまたさっきと同じようにV字の建築物を作りその上に建築を始めた。


すると、建築を始めてすぐに


「は?あれ当ててくんのかよ、キッショ」


とダークマターが言った。


今度はダークマターが負けたみたいだ。


「次ラストな、負けても台パンすんなよ」


「こっちのセリフだわ、ボケ」


またV字の建築物を作り、その上に建築を始めた。


しかし今回はさっきと違い全然終わらない。


上でずっと銃声が鳴っている。


「「ドゴォン」」


同時に2つの銃声が響いた。


「げ、相打ちかよ……」


「このゲームで相打ちとか始めてなったわ」


どうやら相打ちになったらしい。


「じゃあ、もっかいyー」


「もう辞めません?」


エンジェルがそう言ってきた。


さっきまで喧嘩腰だったのに急にどうしたんだろうか?


「別に俺だってゲームして喧嘩したいわけじゃないんすよ。やるなら普通にやりたい」


「………それもそうだな………」


エンジェルの声のトーンが少し下がった。


少し声に反省が滲んでいる。


「それに相打ちになるくらいだから実力も互角なんだろ。もうさ、普通にスクワットやらね?」


「………そうだな、やるか」


俺たちが仲裁するまでも無く、2人で解決したようだ。


喧嘩が落ち着いてくれたようで良かった。


「メルタンと蜜柑大好き星人はどうする?やる?」


「良いよ、やろう」


メルタンがそう答えた。


この平和な空気で俺が(すいません、ちょっと俺は……)とは送りずらい。


(弱いけど大丈夫ですか?)


少し引き気味でそう送った。


「全然良いよ。俺らがキャリーするから」


なんだ、普通に話した良い奴じゃないか。


これなら話しても良いだろう。


そう判断し俺は、ヘッドホンを取りに行きボイスチャットをオンにした。


「お願いします……」


「お!!蜜柑大好き星人喋れるのか!」


ダークマターがそう反応した。


「さっきマイク付きヘッドホンが傍に無かったので……」


「なんだ、そういう事だったのか」


「あ、てかさ名前長くて呼ぶのめんどいから、蜜柑って読んで良い?」


今度はエンジェルがそう言ってきた。


「いいですよ」


「よし!そうと決まったらスクワットやるか!!」


「あとさ、俺どっかで蜜柑の声聞いたことある気がする……」


ダークマターがそう言った。


「多分気のせいですよ〜」


そして俺たちは和やかな雰囲気で試合を始めたのだった。



後書き


勤労感謝の日だから2話投稿してみた。

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