第13話 監禁からのキス!?
「なんだこれ!?手錠!?」
俺の手首には100均でよく見る、安そうな手錠が着いていた。
100均の癖して、しっかりと鍵まで着いているので簡単には外れない。
無理矢理、輪っかと輪っかを繋いでる鎖を引き千切ろうとも思ったがこの手錠、見た目以上に頑丈でびくともしなかった。
「どうすんだこれ!外れねぇぞ!?」
俺の手に着いた手錠がガシャガシャと音を鳴らしている。
とりあえず部屋から出てみて、誰がやったか聞こう。
そう思い立ち上がろうとした。
「うわぁ!」
足がもつれて再度ベットに寝転んでしまった。
違和感を感じたので足を見てみると手に着いている手錠と同じものが着いている。
「動けねえじゃねぇか」
朝から拘束されるって、俺は前世で何かやらかしたのだろうか?
今世でも結構やらかしてるけど。
「誰かーー!助けてくれーーー!!」
「………………」
反応が無い。
さては俺、監禁されたな?
昨日の優葉の覗き見事件で警戒されたのかもしれない。
「朝から騒ぎすぎっす」
「おぉ!優葉!」
そうだ、まだ優葉が居た事を忘れていた。
ということは監禁じゃ無くて冬樹たちの悪戯か!
であれば、優葉に鍵を探して取ってきて貰おう。
「優葉、ちょっとこの手錠の鍵探してきて」
「いやっす」
「なんで!?」
間髪入れず拒否された。
俺に手錠をかけたのは優葉なのだろうか?
いや、やるとしたら冬樹だろう。
じゃあなんで拒否するんだろうか?
「責任………」
何やら不穏な単語が優葉の口から聞こえてきた。
昨日の騒ぎの原因の一端となった言葉だ。
「責任……取ってくれるんすよね……?」
そう言って、優葉が自分のベットから立ち上がりこちらに近付いてきた。
光の関係か分からないが、優葉の目が昨日より黒々としている気がする。
もう嫌な予感しかしない。
「隣失礼するっす」
そう言ってスルリと俺の掛け布団に入ってきた。
「ちょっ!出てって!」
反射的にベットから降りようとしたが、両手両足の自由が効かない事を思い出して動くのをやめた。
「お嫁さんにしてくれるっすよね?」
「ちょっと落ち着こうな?冬樹とかも居るから、一旦落ち着け?」
「冬樹ちゃんたち今日夕方まで出かけて帰ってきません」
嘘だろ…!?あいつら昨日そんな事言って無かったしタイミング悪すぎだろ!!
2人共居ないとなると本当にやばい気がしてきた。
俺は今、両手両足を縛られている。
つまり優葉に何をされようと俺は抵抗する手段がない。
「責任、取ってくださいよ?」
昨日まで可愛い後輩みたいな感じの存在だったのに………
何が優葉を変えてしまったのだろうか?
そんな事を考えていると、優葉が俺にしがみついてきた。
優葉の服の上から見えない胸が腕に当たった。
意外とあるな……じゃなくて!!
早く逃げ出だす手段を考えないと!
少し身じろぎをした。
「逃げないでください、今日から樹君のお嫁さんは私っすよ?」
昨日言ってた処女をあげる事は考え直した様だ。
しかし、お嫁に貰ってもらうという思考は変わらなかったらしい。
「だから樹君のお世話は全部私がするっす」
黒々とした目でそう告げてきた。
あ、これ無理だわ。逃げられないわ。
「じゃあ食料品買ってくるっすね」
そう言って、俺の掛け布団から抜け出てた。
「行ってくるっす……バタン、ガチャ」
ん?ガチャ!?部屋の鍵閉められた!?
まあ鍵を閉められたところで歩けない以上、ドアノブに手をかける事すら叶わないんだけどね。
俺は一旦冷静になって考えてみた。
家の中には誰もいない。
そして俺は手錠をつけられて監禁状態。
冷静になって考えてもよく分からなかったわ。
「なんでこうなったんだろ……」
誰も居なくなり静まり返った部屋でそう呟くのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「帰ったっすよ。樹君?」
その声で俺は目が覚めた。
ボーッとしていた筈だったが、いつの間にか寝てしまったらしい。
というか俺、よくこの状況下で寝れたな。
「おかえり、手錠とって」
「逃げそうなんでダメっす」
流れる様にお願いしてみたが、即刻拒否された。
「じゃあご飯作ってくるっす」
そう言ってまた部屋から出ていってしまった。
30分後………
「作ってきたっすよ」
優葉が戻ってきた。
手にお盆を持ち、その上から湯気が上がっている。
あと味噌汁のいい匂いが漂ってきた。
「いただきます……と言いたい所なんだけど、ご飯食べる時は手錠外してくれない?」
「ダメっす、私が食べさせます」
そう言ってお盆を俺の横に置いた。
「あ〜んっす」
「むぐっ」
口の中にスプーンで掬われた味噌汁が入ってきた。
お、美味しい……何というか身体に優しい味がする。
親鳥に餌を与えられる雛の気持ちが分かった気がした。
するとまた、優葉がスプーンを俺の口に伸ばしてきた。
一瞬口を開こうか迷ったが、開けなかったら口の中に無理矢理ねじ込まれる未来が想像出来たので俺は優葉のなすがままになったのであった。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
結局、最後まで優葉に食べさせられてしまった。
味は普通に美味しかったので良しとしよう。
ただ、体調不良でも無いのに彼女でもない同い年の女子にご飯を食べさせてもらう男子がどこにいるだろうか?
昨日から色々おかしくなっている気がする。
「あの、いつになったら手錠外してくれます?」
「樹君が逃げ出そうとしなくなったら、外してあげてもいいっすよ」
逃げ出そうとしなくなる……か。
どうやって証明すればいい?
「もし、樹君が私のほっぺにキスしてくれたら外して上げないこともないっす」
とんでもない条件出してきたな。
唇じゃないだけマシだがほっぺにキスも恋人じゃないんだしダメだろ。
しかし、今は一刻も早く手錠を外し解放されたい。
だから俺はすぐに決断した。
「じゃあ、分かった……するよ」
「え!?」
優葉が目を丸くした。
自分で言い出した条件なのにどうしてそんなに驚くのだろうか?
「わ、分かったっす」
そう言って、オドオドしながら俺の顔に頬を近づけてきた。
そして俺はそのまま顔を近づけて優葉の頬にキスをした。
ファーストキスは男でも大切だからそんな簡単にしてもいいのかって?
嬉しい事なのか残念な事なのか分からないが俺のファーストキスは遥か昔、保育園児の時に、今は疎遠となってしまった幼馴染に奪われている。
だからそんなに気にすることはないんだ!
「したぞ、取ってくれ」
「あゎゎゎゎ」
優葉の顔が「ボンッ」と音が聞こえそうなくらいの勢いで赤くなった。
そんなに恥ずかしくなるならあんな条件出さなきゃいいのに。
まあ良い、これで俺は解放され自由の身だ!
「優葉?取って?」
「わ、分かったっす。鍵持ってくるので待っててください」
食べ終わったお盆を持って、部屋から急ぎ足で退出していった。
そしてすぐに小さな鍵を持って部屋に戻ってきた。
「今開けるっすよ」
俺の手と足から手錠が外れた。
「あぁぁぁ〜〜」
ようやく背を伸ばす事ができた。
よし!解放されたならこの事冬樹たちに通達して対策してもらおう。
寝てる間にやられたらどうする事も出来ない。
「樹君、冬樹ちゃんたちには言わないでください」
嫌だね!!
言ってyーー
「言ったらこれ冬樹ちゃんたちに見せます」
そう言ってスマホ画面を見せてきた。
スマホ画面には俺が優葉にキスする瞬間が収められていた。
いつ写真なんて撮ってたんだよ!?そんな素振り無かっただろ!!
「ベットの上でキスをしてるこの画像……冬樹ちゃんたちに見せたらどうなるんすかね?」
確実に「え……もしかしてシちゃったの?」と冬樹に言われ、「キッモ」と矢吹に言われるのが目に見える。
ましてや冬樹に見られたりしたら学校とかでもネタにしてくるだろう。
「樹君、言わないっすよね?」
「ハイ」
俺に拒否権はなく、そう即答するしか無かった。
後書き
カクコン9に出そうと思ってるのでもし星押してない人いたら1つでも押してくれると嬉しいです!
追記
1回投稿したんですけど、おかしなところがあったので編集して再投稿しました。
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