第12話 責任=処女 は?
「あ」
「あ……………」
「すまん」
俺はすかさずドアを閉めた。
かな~りまずい状況だ。
思いっきりドアを全開にして入ったのならば間違えてしまった感が出るだろうが、さっきの俺は少しだけドアを開けて覗き込むようなかたちで見てしまった。
はたから見ればただの覗き見犯である。
「きゃぁぁぁぁぁ~!」
その瞬間、優葉の悲鳴が風呂場から響いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どういう事か説明してください、樹君」
俺はリビングのど真ん中で正座をさせられ、風呂から上がった優葉に尋問されていた。
顔が赤いのはシャワーを浴びてきたからだけではないだろう。
今は矢吹が風呂に入ってるので冬樹が部屋にいるがドン引きした目で俺を見ている。
そりゃそうだ、初日から風呂場の脱衣所を覗き同年代の女子の裸を見たんだから。
警察出動案件だ。
「樹」
俺が黙っていると、さっきまで君ついてたのに急に呼び捨てにされた。
コワイ。
「いや、あのですね、歯ブラシを取りに行こうとして色んな部屋を回ったわけですよ。でもどこにも無くて、残ったのが脱衣場だったんですよ。それで覗き込んでしまったんです」
俺は全力で弁明した。
これで家に送り返されたらたまったものではない。
親にどう説明する?
「風呂場を覗いて優葉さんの裸を見ました」
とでも言ってみろ。
母さんにしばかれるぞ。
「わざとじゃ無いんすね?」
「はい、本当に間違えました」
「じゃあ許すっす」
「えっ……」
めっちゃ早く許しを貰えた。
自分で思うのも何だけど、そんな簡単に許しちゃっていいんだ。
普通にここから追い出されるくらいの覚悟はしてたんだけど。
まぁ許してもらえるならそれでいいか。
「許す代わりに責任取ってください」
「はい、取ります」
そういうことか。
彼女でもない女子の裸を見てしまった男がすることはただ1つ。
せっぷkー
「私の処女を貰ってください!」
「は??」
俺の思考をぶった切って、とんでもない発言が聞こえて気がする。
「あの、今なんて?」
「私の処女を貰ってくださいって言ったっす」
「それはダメよ!優葉ちゃん!」
今の発言を聞いた冬樹も流石に止めに入ってる。
彼女いない歴=年齢の童貞にはどう反応すればいいのか分からないので助かった。
「樹君、どうせ童貞っすよね?」
童貞なのは事実なんだけど、少し煽られてる気がするのは気のせいだろうか。
あと、なんでそんな事を聞いてくるのだろう?
「童貞だけど……なんで?」
というかなんでこんな話を女子としなければならないのだろうか。
俺らさっきから問題がある発言しかしてないぞ。
「裸見たんだから責任持って私を嫁に貰ってください!」
とんでもない事言い出したぞこいつ。
裸見たという理由だけで、彼氏でもない人と付き合うのは普通にダメだろ。
「ダメだよ、それは」
「ダメじゃないっす!」
「樹君の童貞はわt」
「キモい話辞めな?」
「「「はい」」」
矢吹がリビングに戻って来てそう言った。
切れ味のある一言が飛んできて、俺たちは速攻で「はい」と答えた。
「マジで初日からやらかし過ぎだな、俺」
俺はシャワーを浴びながらそう独りごちていた。
ルームシェア初日から女子の裸を覗き見る男子高校生がこの世のどこにいるだろうか?
どこを探しても俺だけだろうな。
「ガチャ」
そんな事を考えていると、俺の後ろで風呂場のドアが少しだけ開いた。
「なんだ?」
「ジーーーー」
「……………」
隙間を見るとここで目の合うはずのない優葉と目が合った。
そしてその目はさっきの仕返しです、と言っている。
確信犯だ。
間違いとかではなく、見に来てる。
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
俺は優葉さながらの悲鳴をあげた。
我ながら気持ちが悪い声だったと思う。
「うるさいから黙れ!!」
「はい」
矢吹の怒号がリビングから飛んできた。
さっきから当たり強くないですかね?矢吹さん?
「ガチャ」
すると風呂場のドアが閉じた。
今日起こった出来事
-優葉の裸を見る
-優葉に裸を見られる ←new!
オワっている。
なんとも言えない気持ちでシャワーを浴びて風呂から出た頃には時間は11時を回っていた。
明日は祝日で学校は休みなので、ゆっくり寝れるだろう。
そう信じたい。
「じゃあ、トランプしましょう!!」
俺の願い、秒で爆散!
ベットに行って籠ったところで、言ってるのが冬樹だから無理矢理引き摺り出されるだろう。
俺もこんな夜に冬樹と格闘したくないので大人しくトランプをやる事にした。
「まずはババ抜きやろう!」
ババ抜きが始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マジでもう1戦だけ!お願いします!」
時刻が午前1時を過ぎようとしてる中、俺は3人に向かってそう言っていた。
かれこれ2時間近くババ抜きを楽しんだだろう。
何故こうなってるかって?
全て俺が負けず嫌いな事が原因だ。
あまりにもババ抜きが弱すぎて1回も勝ててないから絶対に勝とうと意地を張った結果がこれだ。
仕方ないやら何やらと思っていた心はどこに行ってしまったのだろう?
「え〜眠い〜」
「流石に寝ましょうよ〜」
「眠いっす」
3人とももう睡眠モードに入っている。
これ以上起こしておくのは明日の体調に響いてしまうだろう。
「ん〜、分かった、寝るか」
辞めると決まった途端、気が抜けて俺にも強烈な眠気が襲ってきた。
「あれっすよね、みんな同じ部屋で寝るんすよね」
俺はその言葉を聞いて、すぐに眠気が消し飛んだ。
完全に忘れてたー!
「樹………大丈夫よね?」
「私は別に良いっすよ!」
「…………」
何やら女子3人がそう俺に対して言ってきた。
見ると疑わしげな目を向けるのが2人、何かを期待する様な目を向けているのが1人いた。
大体、今ので察した。
要は、俺が夜に女子に何かしないという事だろう。
安心しろ!俺は彼女居ない歴=年齢の童貞だぞ!
「マジでそこは大丈夫」
「覗き見犯が言ってもな〜」
「うっ」
「冗談冗談、何もしないって分かってるから。おやすみ〜」
そう言って電気を消した。
引っ越した直後は「絶対緊張して寝れないだろ」とか思っていたが、今は眠過ぎて普通に寝そうだ。
そしてベットに入って秒で眠りについた。
「かしゃかしゃ」
俺は謎の音で目が覚めた。
時間は午前9時ちょうどだ。
少し首を回して他のベットを見ると優葉を除いてみんな居なくなっていた。
「んん〜〜、ん?なんだこれ!?」
背を伸ばそうと上げた俺の手には、手錠が着いていた。
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