第4話 胃袋も人外

「じゃあ食うか!」


「はいっす!」


「お腹減ったわ〜」


「ミーも沢山食べれそう」


入店するときに店員さんから凄い物を見るような目で見られたがあれは何だったんだろうか?


3人とも食べ放題を選択していた。


最初あんまり食べないだろうと思って食べ放題にしなくて良くないか?と俺は言っていたが、冬樹が食べ放題じゃないと足りないと強く言ってきたので俺たちは食べ放題専用の席に座っていた。


ここで思ったのが女子って意外とカロリーとか気にしないんだな、ということだ。


俺はてっきりカロリーとか気にするものだと思っていたが、それは勘違いだったらしい。


「今から食べ放題スタートだって」


俺がそう言って注文用のタブレットに手を伸ばすと、俺の手は空を切った。


タブレットの残像が視界の右端に見えたので、右を向くと女子3人にタブレットが占拠されていた。


食い意地が張っている。


「じゃあ、ミーはこの極上ハラミってやつ取り敢えず1枚」


「私は6枚で」


「「「6枚!?!?」」」


冬樹が発した言葉に俺たちは目を剥いた。


「お客様、お静かに願います」


「「「すいません」」」


店員さんに注意されてしまった。


「いくら何でも頼み過ぎじゃないか?」


少し声のトーンを下げて聞いてみた。


「そう?いつもこのくらい食べるけど」


「…………」


どうやら冬樹は大食い系女子らしい。


大食いとはいえ、流石に残すだろうと思い俺たちは冬樹の残しを食べられるよう少し少なめに頼んでおいた。


主に冬樹の頼んだ大量の肉が届くと俺たちは焼きながら雑談を始めた。


すると当然のようにゲームの話が始まった。


「みんなが良かったらなんだけど、今度RITの大会出てみない?」


あの武器はあーだーこーだ言っていると、冬樹がそう聞いてきた。


「俺は全然アリだけど。面白そうだし」


「ミーもいいと思うよ」


「私も出てみたいっす!」


俺たちは大会に出ることに全面同意だった。


何をするにしても目標があった方が楽しいだろう。


「じゃあ今エントリーしちゃう?」


「え、今申し込み期間なの?」


「そうよ、再来月の大会だもの」


再来月の大会のエントリーを今するってことは相当大規模な大会なのだろう。


「それってなんて言うたいk、あっちい!」


肉の脂が俺の腕に跳ねてきた。


肉が焼けたらしい。


そして、そのことに気づいた冬樹は我先にと肉へ箸を伸ばしていた。


焼肉行きたいと言ったのも冬樹だったし、相当お腹が減っていたのだろう。


「俺たちも食べるか………ん?」


網を見ると、つい数秒前まであったはずの肉4枚ほどが消失している。


「んっ〜〜!!」


悶絶するような声が冬樹の方から聞こえ、見るとリスのように頬をパンパンにして幸せそうに笑ってる。


俺の視線に気づいたのか頬を膨らましたまま俺の方を見てきた。


3人とも冬樹の方を凝視していた。


冬樹は小首を傾げている。


俺たちは顔を見合わせた。


(食べ放題にして良かったぁぁ)


冬樹は容姿だけでなく、胃袋の大きさも人外のようだ。


「みんなも食べないの?」


冬樹がそう聞いてきた。


「あ、ああ、食べるよ」


冬樹が頼んだ大量の肉は、冬樹1人で食べられるだろうと判断したのか優葉と矢吹も普通に頼み始めた。


「ん〜!歩いた後の焼肉は美味しいっすね!」


俺たちも冬樹ほど勢いではないが食べ始め、大会の話は忘れ去られてしまった。


「お会計8900円です………」


あのあと4人とも黙々と食べ続け、気づけば時間が終わっていた。


そして今、会計をしているのだが正面にいる店員さんが青い顔をしている。


俺たちの食った量を見てれば無理はない。


確実に赤字だ。


多分、冬樹1人で元を取ってるだろう。


「じゃあ、結構いい時間なのでここでお開きにしますか?」


「そうっすね」


スマホ画面を見ると6時30分と表記されていた。


俺はまだ遊んでいたいが、8時とか9時とかまで遊んで女の子1人で家に帰らせるとか危ないし帰るには良い時間と言って良いだろう。


俺が全員を家に送り届けることが出来たら話は別だが、残念なことに俺の体は1つしかないのでそうもいかない。


「じゃあ帰るか。また会う機会があれば遊ぼうな」


「はいっす!」


「またね」


「またね、ばいば〜い」


こうして俺たちの初オフ会は幕を下ろしたのであった。

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