第2話 自己紹介

「どうしたんですか?蜜柑さん」


「どうしたもこうしたもないだろ!!お前ら全員女子だったのかよ!!」


「男だなんて一言も言ってないじゃないすか」


「いや、でも声が男だっただろ!」


「「「それボイチェン」」」


ボイチェンとは声を変えるソフトである。


要するに、俺以外みんなボイチェンを使って男の声を出していたということだ。


「まあいいよ!とりあえず入ろっ!!」


「蜜柑、注目浴びてるから」


小声でエンジェルがそう言ってきた。


周りを見ると、確かに注目を浴びてしまっている。


聞きたいことが山ほどあるが、俺たちは一旦スタボに入った。


「なんでお前らはボイチェン使ってたんだ?」


飲み物を各々頼み話し俺は始めた。


「女の声でやるとクソみたいな出会い厨がいて落ち着かないからっす」


「そうなのよね」


「めっちゃ分かるわ」


どうやら同じ動機でボイチェンを使っていたらしい。


この手のfpsには一定数の出会い厨が存在する。


確かに絡まれるのはダルいだろう。


メルタンレベルのカワボになるとパーティに出会い厨がいたら地獄だろう。


「そういうことか……」


要するに、出会い厨から避けるためにボイチェンを使っていたところ、俺以外全員がボイチェンを使っているパーティーが出来てしまったと。


いや、どれくらいの確率だよ。


「蜜柑も納得したみたいだし自己紹介でもしますかっ!」


「「そうね(そうしましょうか)」」


「私がダークマターこと、古賀優葉ですっ!」


「エンジェルこと、冬樹雪花です」


「ミーがメルタンこと、矢吹雫」


「俺が蜜柑大好き星人こと久城樹だ。よろしく」


自己紹介が終わったが、1人聞き覚えのある名前のやつがいる。


「もしかしてだけど冬樹さん、同波(どうなみ)高校?」


俺は今1年生なのだが、冬樹さんの名前が2年生でめちゃくちゃ美人だと言われている人と同じなのだ。


「そうだけど、もしかして君も同波高校なの!?」


「そうです……」


どうやら先輩だったらしい。


「ちょっとこれから冬樹先輩って呼ぶようにします」


「それは絶対にやめて」


力強い声でそう言われた。


「いや、でも……」


「いつも一緒に敬語とか使わずにゲームやってたじゃん……これからも呼び捨てで友達としてやりたいよ……」


俯き気味でそう言ってきた。


「あーあー、樹くん女の子悲しませちゃった〜」


「ごめん、俺が悪かった。これからは呼び捨てにするわ」


「ほんと!?やった!」


そんなに呼び捨てにされるの嬉しいだろうか?


「ミーも呼び捨てで」


「私も呼び捨てでいいっす!」


「俺も好きなように呼んでくれて構わない」


「ちなみにみんな年齢いくつっすか?」


「俺高1」


「ミー高2」


「え……?」


色々小さいからてっきり中学生かと思ってたけど……


「何を考えてるのかな?」


ニッコリと笑いながらそう聞いてきた。


「ナンデモアリマセン」


こっっっわ!


「私はさっきの話で分かったと思うけど高2」


おっと?この流れで行くと、高1俺だけな気が……


「マジすか。私高1っす」


仲間いたわ。


「「「「…………」」」」


話すことがなくなってしまった。


「えっと、こっからどこ行きます?」


沈黙を破ったのはダークマターこと古賀優葉だ。


スタボで買った飲み物もみんな飲み終わってしまっている。


「ミーは近くにあるゲーセン行くのもいいと思うけど」


今更だけど、この人リアルでも一人称ミーなんだ。


「えーもう少しゆっくりしたいっす」


ダークマターこと古賀優葉がそう言った。


「私お腹減った」


エンジェルこと冬樹雪花がそう言った。


「みんなバラバラじゃねえかっ!!」


最終的にジャンケンでゲーセンに行くことが決まった。


「ちなみに私、音ゲーめっちゃ得意っすよ」


「ほう、俺も得意だが」


「勝負しますか?」


俺のゲーマーとしての血が騒いだ。


「やってやろうじゃねえか。絶対に勝つ」


「「あのー私たちも忘れないで欲しいんだけど」」


「矢吹?たちもやるか?」


「うん」


「やりますよ」


「じゃあ全員まとめてボッコボコにしてやりますよっ!」


突如、音ゲーバトルが勃発した。


後書き


メルタン=矢吹雫(やぶき しずく)

ダークマター=古賀優葉(こが ゆうは)

エンジェル=冬樹雪花(ふゆき せつか)




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