第1話 まさかの事実

「右潜伏してるから気を付けて」


「了解」


「ヤッベ左から詰めてきてる。エンジェル、一旦引いた方が良い」


俺は夜遅くまでネ友とLINE通話をしながらfpsをしていた。


「ふ〜〜、明日は学校あるしこれくらいにしてやめっか」


「そうすっか」


「ミーもねみぃし寝るわ」


「そいやぁ俺も明日学校だわ」


「じゃ、おつ〜」


「「「おつ〜」」」


いつもの挨拶をして俺は通話を切った。


時間は11時になる直前だ。


「じゃあ勉強するか〜」


ネ友とゲームをし、そのあと勉強をして寝る。


俺の日課だった。


いつも通り12時まで勉強をして眠りについた。


「やばい。寝坊した」


俺はバカみたいにうるさくなった目覚ましの音で目が覚めた。


時間はホームルーム開始30分前。


俺の家から登校にかかる時間は30分、詰んだ。


幸い寝癖が殆どなかったので、一縷の望みにかけて学校へと走って向かった。


しかし余裕で間に合わず、俺は休み時間に机に突っ伏していた。


「……………………」


「朝から死人のような顔してるねえ」


「うるさい………」


中性的な声が上から降ってきた。


いつもだったら多少言い返してるところだが生憎、俺にはそんな元気無かった。


「どうせネ友と夜遅くまでゲームして寝坊したとかでしょ?」


「…………」


「ねぇ、樹?聞いてる?」


「………」


「くじょういつきさーん、聞いてま〜」


「聞いとるわ!!」


何故こいつは朝からマックスギアのテンションでいられるのだろうか?


「死にそうな俺を叩き起こして何が聞きたい」


「1時間目の授業ってなんだっけ?」


「化学だ、というかそんなしょうもない事を聞くために俺を起こすな!!」


何故かこいつーー清水五月はしょうもない事で俺に話しかけてくる。


しかもこいつと中学1年から3年間もクラスが一緒だ。


挙句、下の名前も読みが同じという徹底ぶり。


五月とは腐れ縁だった。


「ちょっともう寝るわ」


「もう授業始まるよ?なんでもっと早く寝ないのさ」


「誰のせいだ!!誰の!!」


そして朝睡眠を取れなかった俺は、学校をいつ寝てもおかしくない状況で終えた。


「おーし、やるか」


家に帰った頃には眠気が飛んでいたので、少し勉強してからPCを起動した。


「エンジェル〜、ダークマター、メルタン〜早くこーい」


グループ通話に入っている3人の名前を呼んだ。


「起動してるからちょま」


エンジェルがそう答えた。


「りょーかーい」


いつも思うのだがエンジェルの声、エコーがかかったみたいな感じがするんだよなぁ。


しかも声が低いから時々何を言っているのか聞き取れないときがある。


「なーなー、俺たちさ一緒にゲームやって2年くらい経つじゃん?」


マッチング中、めっちゃイケボのダークマターがそんなことを言い始めた。


「だね」


「今度オフ会しね??」


(オ、オフ会!?)


「ちなみんなはどこ住み?俺東京」


「「俺は神奈川」」


俺とエンジェルの声がハモった。


「蜜柑!お前同じ県なのか!」


蜜柑とは俺のネトゲの名前が蜜柑大好き星人なので省略して、蜜柑と呼ばれている。


因みに、蜜柑はめっちゃ好きだ。


「マジか!エンジェル神奈川だったんだ!」


「メルタンはどこ?」


「ミー、千葉」


あんまり抑揚のない声でそう答えた。


(みんな関東圏じゃねえか!!)


「ますますオフ会の現実味が帯びてきたな」


「因みに俺マジで東京に近いよ?ほとんど東京って言ってもいいくらい」


「本当にオフ会出来んじゃね!?」


「ミーは全然しても良いよ。ネットの中とはいえ相当長い付き合いだし信用してるから」


「蜜柑は?」


「俺もめっちゃしてみたいわ」


これで全員の意見が一致した。


「じゃあさ、今週の土曜日でいい?日曜日だと次の日学校あるから大変だろうし」


「「「りょーかーい」」」


今日は木曜日だ。


ということは2日後、俺たちは初めてリアルで会うことになる。


「てかマッチング長くね?」


「確かに、全然始まらないわ」


いくらなんでも長すぎたので俺は調べてみた。


「あーお前ら、今日出来ないかもしれん。サーバーダウンしてるわ」


「うわーーガチが〜」


「じゃあミーは寝たい。すごく眠い」


そんな感じでみんな通話から抜けて行った。


まだ時間は10時だ。


勉強をしたい……が俺にもメルタンと同じように俺にも睡魔が襲ってきた。


(早く土曜日来ないかな〜)


年甲斐もなくワクワクしながら眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ついに………か」


オフ会当日だ。


メッセージボックスを見ると


(ミーは渋谷のスターボックス前にいるから、見つけたら話しかけて。服装は白のパーカーと黒いズボン)


メルタンからそう来ていた。


「よっしゃ、行くか!」


俺は太陽に向かってそう声を上げた。


「ここ…か?」


予定の場所に着いた。


しかし周りに男の姿はない。


「まだ来てないのか?」


いや、でもメルタンは来ているはずだ。


待っていると言っていたのだから。


蜜柑大好き星人(着いたぞ)


ダークマター(俺もそろそろ着く)


エンジェル(俺ももう着いてるんだけど)


メルタン(どこ?)


少し周りを見渡すが彼ららしき人影はない。


メルタン(じゃあエンジェルが着いたらまたメッセ送る)


エンジェル(俺着いたで)


メルタン(おk、じゃあ1回ポッケから財布出すから周り良く見てて)


そして周りを見渡すと、少し小柄で茶髪の女の子が財布を取り出すのが見えた。


服装もメルタンが言っていた通り、白のパーカーに黒いズボンだ。


声をかけてみるか?いやでも声が男だったしそれはないか。


蜜柑大好き星人(いたけど、女だわ)


既読が3ついて止まった。


少し待っても返信が来ない。


そして再度あの小柄茶髪の子を見た。


(え……)


バッチリ目が合った。


たまたま目が合ったとかでは無い。


完全にこちらを見ていた。


蜜柑大好き星人(1回スタボ真横の電柱に行くわ)


彼女がメルタンなのかを確かめるために俺は電柱の傍へと歩いていった。


「すいません、蜜柑大好き星人さんですか?」


少しすると激カワボイスでそう声をかけられた。


「そうですけど……」


振り向くとやはりあの小柄茶髪女子が俺を見ていた。


「良かった!!私がメルタンです!!」


「うっそぉ」


「君がメルタンさん?エンジェルだけど」


真後ろから声が聞こえてきた。


声がめちゃくちゃ高い。


まさかとは思いながら振り向くと銀髪の美少女が立っていた。


名前通り天使のようだ。


「エンジェル……女だったの……?」


「そうだけど、君は?」


「俺、蜜柑大好き星人」


「あれっ、皆さんもう集まってましたか!!どうも!ダークマターです!」


またもう1人合流した。


こいつもまた高い声だ。


振り向くと、黒髪ショートボブの少女がいた。


「ダークマターも女………」


これで4人、全員だ。


「よし!全員集まったのでスタボは入りましょうか!」


「そうだな、行こうか。じゃないんだよ!!!」


俺の叫びがスタボ前に響いた。



後書き


今回はオフ会をテーマにして書いてみました!!


こっちも連載してるのでもし良ければ読んでみて下さい!

「アイドル(危機管理能力皆無)と許嫁になるとどうなるのか?」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663779358091


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