第79話 勘違い伯爵令嬢 2…アンリ視点
★★★アンリ視点★★★
あたしの人生、生まれてすぐに孤児院に捨てられた……というわりには順風満帆のような気がする。
孤児院にいられるのは二十歳まで。でも、十六からは職業訓練って名目で働きに出なければならなかった。もちろんあたしも十六歳から、王都の衣裳店で働き出した。お針子の才能はなかったけれど、見た目は良かったし、ドレスを選ぶセンスはあったから、店員として店に立っていた。
正直、面白くもなんともない仕事だったけれど、男子の肉体労働や他の女子の地味な事務作業に比べれば、みんなに羨ましがられる仕事で、しかも高給(給料は全額孤児院に入るけどね)だからあたしは鼻が高かった。
そんなある日、衣裳店に来たお客様があたしを見て大泣きしたの。なんでも、赤ちゃんの時に誘拐された娘さんにあたしがそっくりなんだって。赤ちゃんにそっくりって言われてもなんだかなって思ったけど、確かにピンクゴールドの髪色って珍しいし、髪の色だけでもそっくりになるのかもしれないよね。
で、あたしが孤児院出身だって知った夫人は、絶対に自分の子供に違いないって、あたしを引き取りたいって孤児院にまで来てくれたの。
実際は、あたしはまだ臍の緒が取れないうちに捨てられてたらしいし、夫人の娘ちゃんは一歳になる少し手前で誘拐されたらしいから、絶対に別人なんだけどね。
でもさ、ただの孤児が伯爵令嬢だよ?そりゃ、演技もするよね。
「お母さん」って泣いて見せたら、夫人……カメルーラ伯爵夫人も大号泣で、とんとん拍子で養子縁組が決まった。あたしがいた孤児院にも沢山の寄附をしてくれたらしいから、孤児院にも恩は返せたから良かった。
それからは、夢みたいな生活が始まったの。
売るだけだった綺麗なドレスを何着も買って貰えて、貴族か頭の良い平民しか入れなかった学園に編入させてもらえた。ただ読み書きができるくらいのあたしからしたら、学園の授業はチンプンカンプンだったけれど、自分も上品な令嬢達と同類なんだって思ったらゾクゾクした。
それに貴族令息達はチヤホヤしてくれるし、それを見た令嬢達に嫌味を言われたり意地悪されたりするけど、令嬢達にやっかまれているんだと思うと、意地悪されても優越感に浸れた。
そして、あたしはあたしの王子様に出会ったの。
エドモンド・キングストーン。キングストーン国の第三王子様。彼を見た時に頭の中に電撃が走ったの。
彼は、あたしが前世で読んだ「平民ですがなにか?!」に出てきた登場人物だっの。あたしの最推し!推し過ぎて、自分で二次創作作品を書いちゃうくらい大好きだった。その中で、エドモンドの恋愛相手として作ったキャラがアンリ・カメルーラ伯爵令嬢。つまり、あたしよ。原作には登場しない、あたしが作り出した人物。
これって運命!?
もしかして、あたしの書いた小説に転生したの?
エドモンドとのイチャコラしか書いてないから、他の設定は曖昧で、エドモンドには婚約者(名前なし)がいたけど、平民出身で人との距離が近い(これは原作のアンネローズのパクリ)あたしに惹かれて、最終的にはあたしを虐めたその婚約者を断罪して、あたしと結ばれるって内容だった。
推しと結婚して、あたしも王族の仲間入り?
ヤバイ!これが順風満帆じゃなくてなんだっていうの!?
それからあたしのエドモンドへのアプローチ(付き纏い)が加速した。
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