第27話 あの世
甘い。
なんて甘いんだ。
伸びる。
ほどける。
砂。
甘い。
頭痛。
明かり。
脈。
痛み。
気がつくと身体に穴が空くんじゃないかというスコールに打たれていた。
日本海は突然天気が変わると何かで聞いたが、もっと穏やかにもっと前から降ってくれ。
脱水していた身体に急激に水分が吸われあちこちが痛い。舐める程度を超えて直接飲んでいたらショックで死んでいただろう。
私はしゃがみこみ、袖が吸った雨水を少しずつすすった。
船に戻ってバケツに貯めないとと思うが、命が繋がっただけで満足し、動く気力はなかった。
燃料は半分だ。寄り道せずまっすぐ帰るなら三陸沖に戻れる。このままいるのかどうかもわからない仇を追って南下すれば、恐らく仇が打てても打てなくても死ぬだろう。戻っても食糧があるわけではない。
死ぬ死ぬうるさいな。今のこれが生きてると言えるのか。私は本当に生きてるのか。
もしかして、ここはもうあの世じゃないのか。
何もせず1人であの島に引きこもっていた罰で、地獄に堕ちているのではないか。罰する獄卒もいない。ただただ苦痛だけがあるので天国じゃないのだけはわかる。他人からの観測がなくなれば自分が生きてるのか死んでるのかさえわからなくなるのか。
海に飛び込んで魚に食われよう。
陸は孤独すぎる。
飛び込むために立ち上がろうと顔を上げると、泥の川でベチャベチャの荒野。
檻の林の向こうに明かりが見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます