第26話 復讐の旅

片道切符どころか、目論見が外れて彷徨う可能性が高い。灯台で燃料を満タンにするだけでははなく、予備のドラム缶も積む。


北上し、津軽海峡を経て日本海へ。

漂流船を見つければ燃料をあさり、沿岸に廃墟があれば燃料をあさる。

ネズミ色共のコミニュティを探すが見当たらない。


雨水をすすり、漁をしながら日本海を南下し続ける。移動が主なので魚群を追えず釣果が無い日が続く。しかし、飢えても渇いても南下をやめられない。燃料が無くなるまでの勝負なのだ。


こんな思いをして、白い飴が効かなかったらどうする。東雲を見つけられなかったらどうする。大人しく帰って死を待つか、人形の列に加わればいいのではないか。


そう思うたびに、春石や妻木、溝口の顔を思い出す。人形共のせいでみんな死んだ。人形になった。世界は滅茶苦茶にされ、私の守ってきた種は終末をもたらした連中を養うために奪われた。許してたまるか。諦めてたまるか。


しかし、いくら気を張っても所詮、私はただの人間だ。


寄り道をし過ぎたことにより、水も食糧も底を尽き、中国地方まで南下しきることもなく、水を求めて沖合から湾の中へ入った。


計算が正しければ若狭湾だと思うが、何もランドマークはないし、考える気力もなかった。ただ今は水が欲しい。


湾には船着場の遺跡がそこかしこにあった。直近の場所に停泊し、這いずり出す。


ただでさえ無益な復讐の旅において、最後の人類は道半ばで脱水で死ぬのか。私でなければ完遂できたのだろうか。


今は雪さえ愛おしい。だが空には一つの雲もない。青空が死を意味する時が来るとは。


ろくに這い回ることもなく気を失った。

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