第16話 パズル

妻木の伝え方に問題があったのか、意図的なのかは今となってはわからない。

ゾンビ禍と聞いていたのは実際には人形病という、一層悪い伝染病の蔓延だった。

動物のみならず、木も土も草も、プラスチックまで食い尽くし、人間だけ自分達と同じ“人形”に変える。

人形は一見受け答えは正常だが記憶の大部分を失っていて、症状が進行すると重度の認知症のような状態になる。

身体は全身に腐食性があり、わかっている限り表面の肉に火器は通用しないし、身体の中心部も極端に頑丈で、タンカーとタンカーに挟まれても変形したくらいで損傷せず歩き回ってたという目撃談がある。

ゾンビと違って人間を意図的に襲うことはないが、人形は自分を人間と思い込んでいるし、症状が進んでいなければ人間にしか見えない。双方の気づかない間に、接触によって感染が広がっていく。


エボラ出血熱だとかCOVID19のように閉鎖環境から流出した従来の伝染病の中で強毒性のものとは明らかに違う。似たものはなく、誰も免疫を持たない。侵食手段が感染症という範疇にはないので免疫を持つことは不可能だろう。


新興国以上の資金を持つ国の開発した兵器か、宇宙人の持ち込んだ兵器以外あり得ない。


「人形を人間に戻す方法の実験台だった」という中国人、その近くにいたネズミ色の謎の人物。そして、諸尾を襲撃し、海賊船を襲撃したネズミ色の集団。集団の構成員は明らかに改造された人形だ。パズルのピースが次々とはまっていく。


敵は、この生物兵器で全人類を奴隷にする気だ。既に下地が出来上がった。ネズミ色たちはその最終段階なのだ。

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