第7話 ゴミ屋敷

相手は2人。こちらに武器らしい武器はない。一方通行の倉庫であるから、敵を奥に引き込んで、入口が空いた隙に脱出することになる。


入口はオートロックがかかるので、解錠しておくという手が使えない。


障害物を入口に山ほど置いて、迂闊に入ってこれない状態にした上で障害物の隙間から解錠、障害物を廊下に倒して時間を稼ぎながら身を隠す場所まで撤退。私がさも奥に逃げたかのような証拠で欺き、連中が奥に行ったところで脱出する。


奴らが乗ってきた船で逃げるしかない。もしも操船が上手くいかないようなら船倉に隠れるなどの判断が必要になるだろう。


2人以上で来ていて船に仲間がいた時は....降伏する他ないだろう。今の私にできることを全部やるんだ。


何をしようとしているか知られないために、ドアのバイザーに目張りしていく。相変わらず妻木と大内が凝視してきているが、怯んでいる場合じゃない。


脚立、ロッカー、掃除用具、工具箱、コンロ、物干し台、洗濯機、麻雀台、ゴルフバック、ウォーターサーバー...前任者の所有物も全て動員して、入口にゴミ屋敷を作り上げる。


入口に物を積み上げると常識的には隠れる場所はなくなる。壁に埋め込まれた配電盤は開けても人が入れるようなスペースはないが、事務室に通じる廊下には種子を保存する区画を削減した関係で余って中身の入っていない電気盤がある。

幸い、盤の扉には放熱用の小さなスリットがあるので、中から外が見える。

カプセルホテルの要領で、身体を奥の電気ダクトに入れて頭が盤の扉にくるようにすれば入れる。閉所恐怖症だったら入った瞬間即死するんじゃないかという狭さだ。


さらに事務室も障害物だらけにして、実際に物の隙間に自分の身体を這い入れて、誰かが出入りした後を作る。


連中が、事務室の中へ私を捕まえに入ったら電気盤から飛び出して、再び廊下を散らかしながら脱出する。

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