第5話 星灯り

人間、いつまでもドアに張り付いているわけにはいかない。飲食をし、排泄し、睡眠を取る。

夜になれば、”拠点“に戻るか、最悪、野営するだろう。ドアの出入りへの注意が落ちるタイミングがあるはずだ。


吸排気ダクトに侵入工作されている可能性を考慮して内部点検をするが特に変わったところはない。


外の状況を見よう。


照明をつけず、ペンライトの最小の灯りで床の状態を確認しながら、階段を登っていく。


バイザーから外を覗く。風が吹き込んでいるし、桟橋までの小道も、星も見える。少なくとも奴らはドアには張り付いていない。野営もしていないようだ。


これなら夜の間に脱出できるか?


解錠し、ゆっくりとドアを開ける。

いつもより重い。

冬場に桟が凍りついてる時に似ているが、そういう時はロックシリンダーも動かない。

出るのを妨害するに何か物を置いたか。

急に軽くなる。


まずい。


全体重をかけてドアを引きつ施錠する。

バイザーの外の星灯りがなくなった。

もうペンライトを向ける気にもならない。


「帰れよ!」


在らん限り絶叫して階段を降りた。

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