第2話 私、変わりたい...。

私はいそいそと茶室に向かった。


すでにそこには、先生がいてまっていた。


「遅れてすみません。」


「大丈夫だよ、僕も今準備し終えたところだ。」


さっきはよく見ていなかったが、この先生、すごく若い...。


しかも、どこかで見たことあるような気がする。


和服に着替えた先生はすごくおとなしそうに見えた。


「僕の紹介がまだだったよね、僕は“平井 俊介ひらい しゅんすけ”。普段は大学に行ってる。僕はいつも綾愛ちゃんに教えに来る“平井 達巳ひらい たつみ”の息子だよ。」


だから見たことあるような気がしたのか。


「達巳先生はどうしたんですか?」


この先生が達巳先生の息子なのはわかったけど、なんで代わりに来たんだろう。


「親父はおととい階段で転んじゃって骨折しちゃって、入院しているんだ。しばらくは自由に外出できないから、代わりに僕が先生として来ることになったんだ。僕も昔から茶道はやっているから、安心してくれて大丈夫だよ!」


「そうなんですか。達巳先生は大丈夫なんですか?


「親父は大丈夫だってケロっとしてるけどねー。いい歳なんだから、安静にしてくれてたらいいんだけど。親父のことはさておき、綾愛ちゃんについて教えてもらってもいい?少しの間とはいえ、関わる訳なんだしね!少し話してから始めよっか!」


え、なんか話すことなんてないよ...。


「望月綾愛です。〇〇第二中学校の2年生です。」


...ほかになんもないよー。


「部活は入っていないの?」


「入ってないです。私運動もできませんし、なんかの才能もないし。」


そんなこと言うたびに惨めになる私。


「そっかー、でもなんの才能もないのは違うんじゃない?現に茶道の作法はすごい訳なんだし、それも才能の1つなんじゃない?しかも、まだ才能が見えてないだけで隠れているんだよ!」


そんな訳ないよ。


だって、生まれてきて13年も経っているのにこんなになんもない人間っていないよ。


「そうだといいんですけどね...。」


「実は僕も昔は自分に自信が持てない時期があったんだよね。でも、今は自信を持っていられる。なんでか、わかる?」


「...わかんないです。」


「僕はね僕が僕らしくいることが僕にとって1番大切なことって気づけたからだよ。」


私もそう思えたらどんなにいいんだろうって考えたことはあるよ。


でも、実際そんな風に思えないんだよね。


「私には、私らしさもないのでそうなることができないんです...。」


「僕も以前はそう考えてたよ。僕と同じようになるってことが1番な訳じゃない。自分にあった方法で自分を見つけて行くのが大切なんだよ。」


「私、...変わりたいんですっ。」


(ぽた、ぽたぽた)


思いが込み上げた私は涙を溢してしまった。


「...もし綾愛ちゃんさえ良かったら僕に手伝わせてもらえないかな。」


「え...、私にそんなことできますか?」


可能性ポテンシャルは無限大だよ!やってみて損はないさ!僕と一緒に色々試していこうよ。いつでも君の味方でいることを約束するよ。」


「...私やってみますっ。お手伝いお願いします。」


そうして私は俊介先生と『』になる一歩を踏み出す約束をした。


私に何が出るのかはわからない。


でも、ずっとこのままの私も嫌。


ただただ時間が過ぎるよりいいと思い一歩を踏み出すことにした。


そんなことを考えていたら今日のお稽古は終わった。

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