937 生い立ちから来る心構えの違い
復活した倉津君の顔を見る為だけに、アメリカから急遽帰国した奈緒さん。
そんな奈緒さんに今までの経過を話そうとするが、何処まで話して良い物やら悩みながら話し始めてみる事に。
***
「あぁ……って事は、眞子の件も、全部ご存知なんッスかね?」
「知ってるも、なにも。クラが居ない間。眞子が色々と私を支えてくれてたからね。あの子には、ちゃんと感謝しないとダメだよ」
「そうなんッスか?……そっか、なんかアイツにも迷惑掛けちまったんッスね」
「まぁ、眞子は、君に対する負い目みたいなものが多々有ったと思うからね。その辺は、あの子の見せた心意気だと思うのが良いんじゃない」
「そうッスかね?……しかしまぁ、アイツやるッスね」
「そりゃあ、当然だよ。その心意気を買って、あの子を私の妹にしたんだもん。あんな子、滅多に居ないよ」
あぁそう言う事な。
そう言う経緯で眞子は、奈緒さんの妹に成ったって事か。
しかしまぁ、奈緒さんが同性を認めるなんて、ホント珍しいよな。
普段の奈緒さんは、上辺は別としても、女の人に対しては、何所か壁を造る所があるからなぁ。
……って事は、アイツ、評判通りのやり手だな。
「ほぉ~~。アイツって、そんなにスゲェ奴なんッスか?」
「うん。眞子は凄いよ。あの子はね。君の替わりに行った全米ライブの途中で、私のアメリカ行きの橋渡しになるバンドを形成してくれたり。私のアメリカでの初ライブツアーを、学校を休んでまでズッと同行してくれたり。私とクラの家を守ってくれたり。……兎に角、なんに対しても献身的な子なのよ。ホント凄い子なんだよ」
「えぇ~~~、なんッスか、その俺の知らなかった裏情報は?それに奈緒さんのバンドのメンバーを形成をするなんて、殆ど、崇秀と同系統の人間じゃないッスか」
なんなんじゃアイツは?
学校で評判が良い事や、アメリカの知名度が高い事は聞かされてたけど、奈緒さんのバンドメンバーまで集めてやがったなんて、全然知らんかったわ。
……っで、その奈緒グリって、今全米でも大人気な訳だから、相当な実力者を、あの過酷な45か所ライブをしながら集めてやがったのか?
マジで恐ろしい奴だな。
とてもとても、俺の体から分かれた奴だとは思えない様なハイ・スペックっぷりだ。
「そうだね。その辺については良く似てると思うよ。だってあの子は、仲居間さん同様、凄く勤勉だし、なんに対しても一生懸命でね。時間の無駄を極力避けて、出来るだけ効率良く物事を運ぼうとする。クラの言う通り、まるで仲居間さんの女の子版だね」
ぎゃああぁぁ~~~!!
ヤッパリ、奈緒さんや、世間から見てもそうなんッスね!!
だったらズルイぞ眞子!!
なんで同じ細胞で構成されてる筈なのに、オマエだけ、そんなにナンデモカンデモ優遇されんだよ?
なんかおかしくねぇか?
ってか、オマエ……実は、クローンじゃなくて、突然変異で生まれたミュータントとかなんじゃねぇの?
俺は、再び自分と、眞子との差が余りにも大き過ぎて、奈緒さんに耳打ちする感じで、ちょっと、その辺を聞いてみた。
一応、素直達が横の部屋で寝息を立ててるとは言え、居る事には違いないからな。
小声なのは保険だ保険。
「あの、奈緒さん。もぉご存知だとは思うんですが。眞子って、俺の細胞から出来てるんですよ」
「うん、それも知ってる。でも、そう言う偏見の眼で見ないであげてね。眞子は眞子だから」
「あぁ、勿論ッスよ。今のは、そう言う意味で言ったんじゃないんッスよ。アイツは良い奴だし。俺の兄弟ッスから、そんな眼では、絶対に見ないッスよ」
「そぉ、ならOK。眞子はクラの兄弟であると同時に、私の大切な妹でもあるからね。ちゃんと可愛がってあげるんだよ」
「勿論ッスよ。……けどッスね。なんで此処まで個体差が出るんッスかね?そこを是非、奈緒さんの意見が聞きたくて、さっき、あんな発言をしたんッスよ」
眞子の存在は、マジでバリバリOKッスよ。
アイツは、ホントに超良い奴ッスからね。
腹減ってた俺に、嫌がりもせずに、ちゃんと飯も喰わせてくれましたし。
けど……俺に比べて出来過ぎなのが、ちょっと辛いッスね。
「あぁ、そう言う事ね。でもそこは、そんなに小難しい話じゃないよ」
「えっ?あぁ、そうなんッスか?じゃあヤッパ、アイツは、全てに置いて『高性能に設定されてる』って事なんッスか?」
「それは違うよ、クラ。基本的なスペックなんて、クラも眞子も一緒。そこには、そんなには大差なんてものはないと思うよ」
「じゃあ、一体、俺とアイツじゃなにが違うんッスかね?」
「この話で重要なのは、そんな性能の話じゃなくて。……眞子の生い立ちだよ」
「生い立ち……ッスか?」
生い立ちかぁ。
まぁ確かにアイツは、言い様の無いぐらい不幸な生い立ちを背負ってはいるよなぁ。
けど、そこが、どうこの話に繋がるんッスかね?
「そぉ。あの子は15年間もの間、クラの中でのみ存在を許され。自分の体を持つ事すら許されなかった存在。それに伴って、当然、自分の意思を表に向けて発信する事も出来なかった訳だから、その辺を考慮したら、あの子は、私達にとっては当たり前の様に感じる事ですら、全ての物に感謝する気持ちがあるのね。それに、体を得て初めて知った、体を持つ有り難味を誰よりも深く理解している。だからこそ『自分を、もっと知って欲しい』と言う願望が人一倍強くなり。人一倍努力する気持ちを持つ事が出来ている。……そう言う見解の元で、眞子と君を比べると、体の基本性能は同じでも、精神面で大きな差が出たんじゃないかな」
そうかぁ、そう言う事かぁ。
俺は当たり前の様に空気を吸って、当たり前の様に生きているが、眞子にとっては、そんな当たり前の事ですら喜ばしく感じられる。
そんな感謝の気持ちを全てに対して持っているからこそ、アイツは何事に対しても必死に成れていると言う事か。
要するに、俺みたいな甘い気持ちが無いんだな。
スゲェな。
しかも、その考え方自体、真上さんの考えに似てる所があるしな。
「そうッスね。確かに、俺は当たり前の事を有り難いなんて感じないッスからね。根底の部分からして、アイツとは違うんッスね」
「そうだね。……でもねクラ。逆に言えば、眞子の出来る事は、君にも出来るって証拠だよ。あの子は、たった1年足らずで、自分と言う人間を此処まで世間に大きくアピールしたんだからね。だったら、同じ細胞で構成されてるオリジナルの君にも、それが簡単に出来るんじゃないの?眞子が自ら立証して、君の可能性を示唆してくれてるんだしね」
辛い意見ッスね。
生まれて間もない奴に、無駄に15年間も生きてる奴が示唆されたんじゃ……ヤッパリ、立つ瀬が無いッスね。
雑魚過ぎんな俺。
「あぁまぁ……理屈では、そうッスね。けど俺には、今更アイツみたいに、何に対しても有り難味を感じるなんて真似は難しいッスよ。だから、今の奈緒さんの話を聞いて。俺は俺なりに、アイツとは、別のアプローチで頑張ろうと思ったッスね」
「うん、それで良いんだよ。同じ体に15年間も同居して居たとは言え、眞子と、君は、もぉ別人なんだから、あの子を気にする必要性は無いね」
「……ッスね」
「……でも、君は私の彼氏なんだから、負けっぱなしなんて嫌だよ。なんてったって眞子は、あの仲居間さんを篭絡する程のやり手なんだから。彼氏、彼女で負け無い様に頑張らないとね。私も必至でがんばるから、クラも頑張ってよ」
「がぁ!!……そう言う比較も出ちゃいますか」
いやぁ~~~~~~!!
そりゃまぁ、彼女対決である奈緒さんVS眞子。
これはまぁ眞子の実力が噂通りなら、ある程度は実力が拮抗していると言っても決して過言じゃねぇんだろうけどよぉ。
問題なのは、彼氏対決である俺VS崇秀。
……もぉこれなんてよぉ。
実力差が有り過ぎて、話にすらならねぇレベルなんじゃねぇか?
大体にしてアイツの姿が霞んで見える処か、何所に居るのかすらも見当も付かねぇ程の状態だからよぉ。
それ程までに実力差が明らかだ。
最悪だよ。
くそぉ~~~!!
それにしても眞子の奴!!飛んでもねぇ奴を彼氏にしてくれたもんだな。
あんな訳のわからねぇ魔界の生き物と付き合ってんじゃねぇよ!!
お陰で、こんなトンデモナイ話が出てきたじゃねぇかよ!!
こんなもん、俺にどないせぇちゅうんじゃ!!
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
実際、この奈緒さんの話って言うのは【作り話】ではあるんですが。
現実的に見ても、眞子は生まれ変わったも同然ですし。
必死に自身をアピールしようとして生きて来たので、あながち間違いではないかも知れませんね。
さてさて、そんな中。
また奈緒さんの勝負根性に余計な火が灯ってしまい。
倉津君は、崇秀を倒さなきゃいけない事を再確認させられたのですが。
こんなものに勝機はあるんですかね?(笑)
次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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