932 噛み合う部分、噛み合わない部分

 浮世絵離れした崇秀がした眞子の説明に、ぶつぶつと愚痴を零しながら帰宅した倉津君。

だが帰宅後、なにやら組の中が騒がしいので、組全体がカチコミの準備でもしてるのかと思ったら……


なんと騒がしい理由は、現役アイドルである素直ちゃん達の来訪が原因だった!!


***


「ばっ、馬鹿じゃねぇのアイツ等?いっ、一体、なっ、なっ、なに考えとんじゃ!!」

「いや、全く同意見ですな。坊ちゃんの言う通り、最近の若い組員はなっちゃいねぇ。ヤクザのクセに極道をなめてやがりますからな。1度、本気で性根を叩き直さなきゃならねぇですな」

「いや、玄さん。そっちの馬鹿の話じゃねぇからな」

「はぁ?なにか違うんですかい?」


ジェネレーション・ギャ~~~~ップ!!


俺と玄さんじゃ見る所が違~~~う!!


あのなぁ玄さん。

そんななぁ、ウチの組に在籍している様なアホな組員の事なんては、どうでも良いんだよ!!

そんなもんはな。

それこそ『馬鹿と鋏は使い様』って言葉通り、馬鹿のまま放っといても『鉄砲玉』ぐらいには使えるから、何かにつけて使い様は有る。

だから、あのアホ共の心配なんてしなくてもOKだ。


けど、それが俺の大事なツレである素直達の話と成れば、これは大問題だろ。

アイツ等には世間体とか芸能界での立場ってもんが有る訳だから、まずはアイツ等の心配を最優先に考えないでどうするよ?


……ってか!!

それ以前に問題として、俺の同級生だからって、易々と、こんな危険な場所に入れちゃあダメだろ。


アイツ等全員、ガチの現役人気アイドルなんだぞ玄さん!!


……って、玄さんが、アイドルの事なんか知ってる訳ねぇか。

玄さんが、うちの幹部とは言え、担当が不動産関係の方で、芸能界関係の幹部は別にいる訳だしな。


だとしたら、言うだけ無駄だな、こりゃあ。



「まっ、まっ、まっ、まぁ良いや。兎に角、先にソッチを解決しなきゃならねぇから、馬鹿親父の所へは後で行くって伝えて置いてくれねぇか?後で、必ず行くからよぉ」

「あぁ坊ちゃん。……残念ながら、おやっさんなら少々野暮用で出掛けていやすんで、こちらには居やせんぜ」


オイオイ、あの糞ジジィ……大切な息子が、こんな忌まわしい場所にワザワザ戻って来てやったって言うのに、一体、どこホッツキ歩いてやがんだよ?


いやいや、まさかとは思うが……



「なっ……なんだと?あの糞親父、俺が帰って来たって言うのに、どこをほっつき歩いてやがんだ?」

「えぇ、まぁ、少々言い難いんでやすがね。……いつもの『あれ』ですわ。まぁただ、坊ちゃんが、お帰りなられた事は、ご学友のお嬢さん方から、あっしも聞いて居りやしたんで。一応、おやっさんには確認の為に連絡の方だけは入れたんですがね……」

「……っで、あの糞親父、なんて言ってやがったんだ?」

「へぇ、それがですなぁ。本人から直接電話が有ったから知ってるとの事と、坊ちゃんの教育係は、あっしなんで、あっしに説教しとけとの事です」


あの糞親父……マジで道端で刺されて死んだら良いのにな。

若しくは、村田組か、城田組の鉄砲玉にでも全身に銃弾を浴びせられて、蜂の巣に成って死ねば良いのにな。


なんでアイツは、いつもいつも、そうなんだよ?

普通はよぉ『組を引き継ぐ予定がある大切な大切な息子が帰って来た』って連絡が入ったら、愛人なんて言う糞ショウモネェ淫乱ババァは放っぽらかして、速攻で家に帰って来るのが常識ってもんじゃねぇのか?


……ってか!!

その前に、俺が学校から家に電話を入れたんだから、出て行くなつぅの!!


なんなんだよ、あの性欲に塗れた糞親父だけは?


訳がわかんねぇわ。



「あっそ。……っで、玄さんさぁ。そんな親父に頼まれたからって、今から俺に、なんか説教かます気なのか?」

「まさか。そんなもんは、さっきの話で終わってやす。それにあっしは、いつだって坊ちゃんの味方ですぜ。坊ちゃんの旅の成功は喜んでも、説教なんて飛んでもねぇ。それ処か、あっしは、坊ちゃんの立派に成長された無事な姿が拝めただけで満足でさぁ。……さぁもぉ、もうあっしの事は良いですから、早くご学友のお嬢さん方の所へ行ってあげなせぇ」


玄さん最高!!

ホント、どっかのエロ馬鹿親父と違って、俺の置かれている現状を、よく解ってくれてるよな。


惚れ惚れする様な男気だな。



「悪ぃな、玄さん。この借りは、いずれ必ず返すからな」

「んなもんは、気にしなくて結構でさぁ。……さっさっ、ご学友がお待ちかねぇですぜ。早く行きなせぇ」

「恩に切るぜ」


そう言ってから、その場を走り去るんだが……


あの無自覚アイドルの馬鹿共、どうしてやったもんかな?


***


 俺は急ぎ足でドカドカと言うウルサイ足音を立てながら、自分の部屋に向う廊下を渡り、出来る限り慌てて自室に向った。


これは言うまでも無く、あの無自覚な馬鹿共を、早急に、この家から出て行く様に言わなきゃ成らないからだ。


……そりゃあよぉ。

本音を言えば、此処がヤクザに本宅だと解ってて、わざわざそんな家にまで来てくれて、俺の生還祝いしてくれる事自体は、本当は凄く嬉しいんだぞ。

けどよぉ、そのお祝いして貰ったお礼が、新聞や、週刊誌に載る様な最悪なゴシップにある様な内容じゃあ話にもならねぇだろ。


故にだ、此処は嬉しい気持ちを抑えてもだな。

あの自覚の足りない阿呆共には、キツ~~~ク注意して置いてやらねば成らない。


そんな訳で俺は、自室の障子を荒々しく開けた。



『ピシャ!!』



「なにしとんじゃ、オマッ……」


『パン!!パパン!!パン!!』


へっ?はぁ?ちょ……なに、なに?

突然、この俺に向けられて発射された銃声みたいな音は??


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


玄さんとの話が噛み合ったり、噛み合わなかったり(笑)

そんな事がありながらも、漸く、素直ちゃん達の説教に乗り出した倉津君なのですが……部屋に入った途端、突然、倉津君に向けられて放たれた銃声の様な音!!


果たして倉津君の運命や如何に!!


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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