931 実家に帰って来たのは良いが、なんか組内が騒がしいな

 崇秀の話を聞いた後の帰宅途中。

なんだか納得出来ない部分があったのか、いつも通り、愚痴を零しながら帰ってただけでした(笑)


そして、とうとう実家に着いてしまうのだが、倉津君の運命や如何に!!


***


 ……なんて、これだけ文句を言っても、まだ微妙に納得いかないので、この後もまだ1人でブツクサ文句を垂れながらも家に帰宅したんだが。

まぁ当然、1年間も昏睡してた上に、その間もまったく連絡無しに家を空けた訳だから、此処からは長時間に渡る無駄な説教地獄が待っているものだと思いながら、少し重い足取りで実家の門を潜った。


だがな、そんな俺の意思に反して、家の中が、なんだかやけに慌しい。


まぁこの辺については、康弘から聞いた近況報告が有るから少々理解出来てはいるんだが、どうせ村田組の糞か、城田組の阿呆共が、神奈川の、どこかから侵入して来て、またややこしい問題でも引き起してやがんだろうと、此処までは暗に想像は付く訳だ。

ホンでウチの組を上げて『馬鹿共の吊るし上げの準備をしてる』ってのが、良い所、この現状の説明に値する解答なんだろう。


所詮、ヤクザの組が慌しくなる時なんて、悲しいかな、そんなバイオレンス系の理由でしかないからな。


……んな訳で。

大凡の理由は解りつつも、門の近くに居た玄さんを捕まえて、現状を確認する為に事情を聞く事にした。



「うぃ~~~っす、玄さん。今日は、なんだかやけに組の中が騒がしいな。なんかあったのか?」

「あぁ、坊ちゃん、お帰りなさいやし。いや、それがですなぁ……って!!坊ちゃん?はっ、はい?本当に坊ちゃんなんですかい?」

「なんだよ?どうしたんだよ、玄さん?まさか俺の顔を忘れちまったのか?」

「……って!!ってか、坊ちゃん!!『忘れた』とか『なんか有ったのか?』の問題じゃないですぜ!!今まで、どちらに行かれてたんでやすかい!!」


チッ……連絡しなかったのを上手く誤魔化せたと思ったのに、玄さんの奴、気付かなくても良い事に気付いちまったか。


でも、そこはだな玄さん。

俺の事情を考えて、サラッと流してスルーしてくれた方が良い所なんだぞ。


このまま何気に流してだな。

全てに関して事無きを得るのが、お互いにとって有用な事だと思うんだがな。


妙に、勘が鋭いな玄さん。


……って、普通、誰でも気付くわな。



「あぁ、いやよぉ。時折、男って言う生き物には、誰にも言わず『ソッと1人で旅に出たくなる』なんて衝動に駆られる時期があんだろ。だから今回の失踪は、俗に言う『自分探しの旅に出たくなった』って……あれだな」


この大嘘な例え話は、前回、山中にしてやった時には大失敗をかましちまったんだが、玄さんぐらいの年代なら、こう言う訳の解らん理屈が、なんとなくだが通ってくれそうな気がしたので、この話を持って行った。


古い考えの玄さんなら、こんな嘘くさい言い訳でも十分にイケる筈だろ!!



「なるほどねぇ。今回の失踪の理由は、そう言う事情でやしたか。……しかしまぁ坊ちゃんも、もぉそんな事を考えられる、お歳になられたんでやすねぇ。あっしは嬉しいですぜ」


オイオイ、冗談で言ったつもりだったんだが、マジで、こんな与太話が通用するのかよ!!


ヤッパ、年代に合わせた解答ってのはピタッと嵌るもんだな。

こりゃあ、出足だけは良い感じだな。


ただ俺だけに、どこでしくじって、躓くかはわかんねぇけどな。



「まぁなぁ。世の中が、こうも不安定に成っちまったら、自分を、再度、見詰直したくも成るってもんだわな」

「そうですかい、そうですかい。そりゃあ、立派に成られたもんだ。……ですがね、坊ちゃん」

「うん?」

「将来、組の未来を背負って立つ人間が、誰にも言わねぇで旅に出るってのだけは良くねぇですぜ。せめて、あっしにだけは一言だけでも声を掛けてから旅立ってくだせぇよ。……組員一同、皆、心配してたんですぜ」

「悪ぃな。どうしても、急に1人になりたくなっちまってよ。それに、中々旅の答えが見付からなくてな。答えが見付かるまでは、なにがなんでも、家に連絡を入れる気になれなかったんだよ。マジで迷惑を掛けたな、玄さん」

「いやいや、良いんでやすよ。こうやって立派に成られて帰って来られたんなら、誰も咎めやしやせん。……お帰りなさいやし、坊ちゃん」

「あぁ、ただいま、玄さん」


なんか知らんが上手く行っちまったな。


なぁなぁ、それはそうとよ。

これってさぁ、Vシネとかのヤクザドラマみてぇな感じじゃねぇか?

結構よぉ、ヤクザの出所シーンとかが盛り込まれてる感動作品っぽくね?


まぁつっても、実際はバッチリと1年間、アメリカの病院で眠りこけて昏睡してただけだから、俺自身はなんの成長してねぇ処か、そのまんまなんだけどな。


イカン、イカン。

折角此処まで上手く行ってるのに、この成長の無さががバレたらまずいから、話を方向転換しよう。



「……所で玄さんよぉ。なんかさっきから、組の中が騒がしいが。ホントに、なんかあったのか?」

「いや、それがですなぁ。坊ちゃんのご学友であらせられる『3Bなんちゃら』って言うお嬢ちゃん方が、坊ちゃん帰還祝いがしたいとかで、坊ちゃんの部屋に押し掛けてやがるんですがね。そんで、ウチの若い連中が、なにが良いんだか、その娘さん達を見て、妙に騒いでやがるんですよ」

「はっ、はい?」

「全くアイツ等には、極道としての自覚がなにもありゃしねぇ。ヤクザの組としては、お恥ずかしい限りでやすよ」

「はっ、はい!?……なっ、なんだと、げっ、玄さん、今なんつったよ?」


これはまさに衝撃の事実!!

組の連中が騒がしかったのは、村田組の馬鹿や、城田組のアホンダラァ共のカチコミじゃなくて、素直達のせいだったのかよ!!


なんだそりゃあ?


しかしまぁ、ウチの組員もそうだが、素直達も、相当、馬鹿なんじゃねぇのか?

だって此処ってよぉ、この周辺じゃあ誰もが認める【由緒正しくない正真正銘のヤクザの本家】だぞ。

そんなロクデモナイ所に、日本の半数の人間が知ってる様な現役人気アイドルのオマエ等がノコノコと遊びに来て、どうすんだよ?


オマエ等は、ヤクザの組なんかに関わっちゃ不味いだろうに!!


余計なゴシップになるちゅ~の!!


辞めんか、この馬鹿者共がぁ!!


ってか、こんなハプニングはイランわ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


( ´,_ゝ`)プッ……こう言うハプニングは如何でしたでしょうか?(笑)


珍しくも、玄さんとの会話は、なんとか上手く誤魔化せたものの。

何気に聞いた、組が騒がしかった理由の方が、今現在、敵対組織の村田組の侵略でもなければ、城田組のちょっかいでもなく……『現役アイドルの素直ちゃん達のせいだった』っと言う大掛かりなフェイントをかましてみました(笑)


いやまぁ、こう言う事で組内が騒がしくなるのも、倉津組が大きな組だけに、どうかとも思ったんですがね。

そう言った風に芸能人を見慣れてるのって、幹部の人達だけで。

住み込みをしてる若い新人ヤクザとかは、どちらかと言えば、普段はこう言う場面に出くわす事が無いですし。

なにより、基本的には男所帯だから、女性と接する機会が少なくなりがちなので、無駄に彼等をエキサイトさせてみましたぁ(笑)


しかもまぁ、なんと言いましょうか。

素直ちゃん達って、倉津君が普段、あまりにも普通に接してるから、その価値があやふやに成ってますが、彼女達は、芸能界でも十分な程に通用する美少女なので、余計に若い組員達が盛り上がってしまったのかもしれませんね。


中学生相手に色んな部分が……(笑)


さてさて、そんな混沌とした状態の中。

衝撃の事実を知った倉津君は、当然の如く、今回の無謀な行動についてを素直ちゃん達に注意しに行く訳なのですが。


果たして、彼女達は、どんな状態で倉津君の帰りを待っているのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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