918 愚者にも賢者は誠実に

 脳梁についての説明をして貰った眞子。

その序で、例の脳内会議での疑問を崇秀にぶつけるが。

ついつい調子に乗ってしまい『自分を故意的に女性にしたと聞いてしまい』……


***


「オイオイ、そんなに凹むなよ。事実だけを追求すれば、俺のせいで、そうなっちまったんだから、オマエが、そう言う気持ちになるのは、なにもおかしくはないからな。別に、オマエだけが悪いって訳じゃねぇぞ」

「違うよ。そんな事を思う事自体が間違ってるんだよ。思っちゃいけなかったんだよ。私だけは、崇秀を、そんな風に疑っちゃいけないかったんだよ。崇秀……ごめんね。本当に嫌な気分にさせちゃったよね」

「別に、そこまで気にしちゃ居ねぇよ。……けど、それじゃあ、納得出来無いだろうから、さっきの質問にもキッチリ解答をしてやるよ」

「イラナイ、イラナイ。もぉ聞きたくもないから」

「まぁそう言うなって。あの時の俺の心境を、包み隠さず、真実だけを、オマエには語ってやるからよ」


本音で、あんな馬鹿な質問に答えてくれるって言うの?

怒りもせずに、ちゃんと正直に答えてくれるって言うの?

こんな愚かな質問をしてしまった私に対しても、この誠実な対応。


だったら、ちゃんと聞かなきゃ!!

こんな愚問にすら、ちゃんとした回答を用意してくれてるんだったら、聞かないなんて選択肢は無いからね。



「……うん、解ったよ。じゃあ教えて」

「良いか、眞子?俺はなぁ。ワザとやってねぇのは確かだがな。その反面、オマエが女に成った事には喜んでたよ」

「えっ?……あの時、喜んでたの?私が苦しんでたのに?」

「あぁそうだな。俺はなぁ。オマエの女体化を密かに喜んでいた。だってよぉ。オマエ程、俺を理解してくれてる奴なんて、この世に存在しないからな。だから、オマエが女に成ったって話を聞いた時は、正直、胸が躍ったよ」


そんなの無理が有りすぎる。

上手くこの話を、別の方向に流してくれ様としてるだけじゃない。


流石に誤魔化されないよ。



「嘘だ。また、そうやって私の事を必死にフォローし様として、そんな事を言ってるんでしょ」

「いや、これがまた、困った事に真実でな」

「嘘だよ……」

「嘘じゃねぇんだよな。まぁ、こう言うの気持ち悪いだろうけどよぉ。俺はな。自分を理解して貰える人間が異常なまでに少ないだろ。……特に女性に成るとな。アリーナの外で、オマエに話した通り、好き合っていても、どうしても思考の溝が埋まらない事が多い。だからよぉ。オマエが女に成った時にはマジで心が躍った。こんな俺にも理解して貰える女が出来るかも知れないってな」

「それ……本気なの?……でも、崇秀は、そんな素振り一度も見せなかったよ」


これって、絶対にフォローだよね。



「俺が、そんな素振りを見せられるか?特に向井さんの件がある以上、大手を振って喜べる訳ねぇだろ。……だからこれは、前面には押し出せない、密かに思っていた事だ。気持ち悪い事を言って悪いな」

「うぅ~~~っ、微妙だよ。もぉ今なら、なんとも思わないけど。多分、当初にカミングアウトされてたらドン引いたと思うよ」

「そりゃあそうだろ。あの直後に、そんな事を思っちまったんだから、ドン引かねぇ方が一般的にはどうかしてるだろうな。こんなもん、どう考えても、頭のおかしい奴の思考以外の何者でもないからな」


いやいや、口では、そうは言ってるんだけどね。

今は、なんとも思わない処か、非常に喜ばしく思っちゃってたりするんだよね。


別の見解で見るとね。

あの時点から、女性である眞子の存在を、崇秀は認めてくれててたって話じゃない。

それって、男に戻れない可能性が高い以上、最初から全てを想定してくれてたって事にも繋がるんじゃないかな?


まぁこれも所謂、自分の都合の良い様に解釈する女性脳だと言えば女性脳なんだろうけどね。


……ってかさぁ。

これって、所謂、初期段階から相思相愛って事なんじゃないの♪



「じゃあさぁ。故意的に女の子に仕立てて行ったのは?」

「まぁこう言っちまった後だから、今更、何を言っても気持ち悪いで終わりだろうけどな。そこだけは、マジでオマエの将来を考えていたのは否めねぇな。折角、綺麗な女に成ったんだから、どう生きて行くにしても、もっと効率良く生きる術を学ばせたかっただけの話だ」

「でもさぁ。その言い分だったら。この顔ありきじゃない。誰からも相手にされないぐらいの物凄いブスだったら、どうしてたの?ヤッパリ私の事は見捨ててた?」

「アホかオマエは?そう言う冗談は、思っても言うもんじゃねぇぞ」

「えっ?」

「そりゃあな、見た目が綺麗に越した事はねぇよ。けどよぉ、ブサイクだったら興味が無いとか、見捨てたって言うのは無しだろ。なにがあっても俺は、オマエを見捨てる様な真似はしねぇよ」

「アッ……」

「大体にしてな。俺ぐらいモテると、姿形なんて、そんなもん、どうでも良いんだよ。一番大切なのはな。オマエって存在なんだからよ」


そっか。


崇秀は、基本的にモテる男だから、容姿を気にするんじゃなくて、心の通じ合う相手こそが欲しかったんだね。


にしても、これ以上ないぐらい嬉しい言葉ですねぇ♪

もぉ言葉に愛情が満ち溢れ捲くってるじゃないですかぁ。


ホント、崇秀に出逢えた事が、私にとっては人生最大の幸せだったんだね。


うぅ~~~!!もぉ『ぎゅう~~~』って抱き締めてあげたいですよ。



「あの、じゃあさぁ。ちょっと恥ずかしい事を聞くけど……私って最高?」

「あぁ、最高だな。俺の中でで申し訳ないが、世界一最高に良い女だと思うぞ」


マジで?


即答して貰っちゃったよ。


もぉ、照れちゃうよぉ~~~♪



「えっ?いやいやいやいや……崇秀、良く見て。私だよ?頭大丈夫?」

「あぁ、良く見ないでも、オマエだな。つぅか、俺の中で、オマエ以上の女なんか存在すんのか?それこそ、何所に居るのか教えて欲しいもんだ」

「いや、だってさぁ。さっきも言ったけど、私、相当な馬鹿だよ」

「構わねぇよ。必至に馬鹿を克服しようとしてるんだから、問題ねぇじゃねぇかよ。俺も、さっきそう言った筈だぞ」

「えっ?でもでも、モブだよ。モブ子だよ」

「それも問題ねぇ。モブじゃなくなる様に懸命に努力してるんだから。それで良いじゃんかよ」

「あぁいや。そこは、せめて『モブじゃない』って言って欲しかったなぁ」

「アホか?オマエなんぞ、まだまだ十分モブ域だろうが。何所がモブじゃないって言うんだよ」


ぶぅ!!折角、良い雰囲気でヤル気になってるんだから、そこはモブじゃないって、はっきり断言してよね!!


こんなに可愛いのにさぁ。

贅沢だよ、贅沢。


・・・・・・


……あぁ、すみません。

つい調子に乗ってしまいましたが、崇秀は贅沢言っても良い立場でしたね。


そうでしたね。



「モブじゃないもん。だって眞子は、崇秀の彼女って時点で、物語で言えば名前付きのキャラだもん。崇秀の七光りで、いつも、みんなに羨望の眼差しで見られるぐらいピカピカ輝いてるキャラクターだもん」

「オイオイ、んなクダラネェもんに縋るなよな。オマエは、オマエの力だけで十分に輝けるだけのポテンシャルを持ってるんだぞ。俺の彼女とか関係無しに、自分で光り輝けつぅの」


だが断る!!

それじゃあ、なんの意味も無いから断る!!


私はね、アンタの為にだけ生きたいの!!

本当の意味で、2人でなら『なんでも出来る』ッて事を、世間に知らしめたいの!!


だから……崇秀の手伝いをさせてよ。

120%……いや、150%以上の力で、頑張って見せるからさぁ。


嫌じゃなければだけど、最後までズッと一緒に行こうよ!!



「ヤダ。だったら崇秀と一緒に輝く。此処まで来たら一心同体で一緒に死んでよ。どうせなら、死なば諸共で行こうよ」

「ほぉ、死ぬ程の覚悟が有るって言うのか?」

「当たり前だよ!!その程度の覚悟がなくて、どうすんのよ?私、向井眞子を、なめんなよぉ。私はねぇ、自分が想った相手には一直線にしか進めない女なの。嫌がっても、死ぬまで一緒に暴走してやるんだからね。崇秀こそ覚悟しなよ」

「そうか。……だったら、話は別だ。オマエを最高な状態まで磨き上げて、誰もがひれ伏す様な女にしてやるよ。話はそれからだ」


へへへ~~~♪


……ホント?


なら、頑張る♪

ホント頑張るよ♪

もぉなんなら150%なんて中途半端な事は言わず、200%で頑張っちゃうだからね♪

あんな誰にも言いたくも無い様なカミングアウトを私の為にしてくれた人の為ならば、どこまでも頑張ってみせますよ♪

その言葉に報いる様な位の頑張りを、血反吐を吐いてでも証明して見せるから、何所までも私と一緒に突っ走ってね。


そんで、偶には、私の事を大切に扱ってね♪


偶にで良いんで。


まぁそんな事を思わなくても、いつも大切にしてくれてるんだけどね♪


あぁもぉ、嬉しくて、言葉の歓喜が止まってくれない。


だって、これってね、ただ崇秀がカミングアウトしてくれただけじゃなく。

私が密かに望んでいた『なんでも本音で語り合える、崇秀と真琴ちゃんとの関係』まで私に与えてくれてるんだから……もぉ、崇秀の事が好きでしか居られないだもん♪


崇秀だけに首っ丈ですよ(*´▽`*)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

 最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


実は崇秀、アリーナの時点で、眞子の事を意識してたみたいですね(笑)


勿論、そうは言っても。

崇秀の言葉通り『人の幸せを壊してまで、自分が幸せに成りたい訳じゃない』ので。

その気持ちを完全に封じ込めた上で、必死に奈緒さんと眞子の関係を構築し様としていたんですが……そんな風にいろいろとお世話をし続けた崇秀を見て『逆に眞子が惚れちゃった』ってオチなんですよ。


まぁこれに関しても、徐々に女性の自覚が出て来てしまったが故に行為なので、ある意味、仕方がない部分だったのかもしれませんね。


実際、奈緒さんも、こう成る事は、結構早い段階から想定していたみたいでしたし。


さてさて、そんな中。

なんでも語り合える関係まで崇秀に与えて貰った眞子の恋愛感情は爆上がり状態。

また調子に乗って、崇秀に余計な事を言わなきゃ良いんですが……


なんて不安を抱えながら、次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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