917 その頭脳拝借します
脳梁の大きさの違いから生じ易い、男女の思考の違い。
それを聞いて、ある程度は納得したのだが……脳の話が出た序に、他の脳に関する疑問も崇秀にぶつけようとするのだが。
その質問と言うのが、あの眞子が昏睡した時に起こした『脳内会議』の話題……大丈夫なのか?
***
「……あのさぁ崇秀。今からそうやって一杯頑張るけど。その前に、ちょっと何点か、脳についての質問しても良い?」
「んあ?構わねぇけど。なんだよ?」
ヤタッ!!
「あのさぁ。以前話したXX眞子って多重人格の話なんだけど……憶えてるかな?」
「あぁ、オマエが初期の頃に作り出した人格の話な。明確に憶えてるけど、それがどうしたよ?」
「あぁうん。これは例え話になるんだけどね。その人格が、今の私の人格を形成するって事は有り得るの?」
前フリが少なかったから、質問が突拍子も無さ過ぎたかな?
これじゃあ、明瞭な意図を持たない、意味不明な質問に成っちゃってるかもしれないよね。
もぉちょっと質問の仕方を考えるべきだったかも……
「ふむ、それって、作り出された人格による『主人格の乗っ取り』って話で良いのか?」
うわっ!!質問に脈絡が無くても、ちゃんと対応してくれてる。
やっぱ、私の魔王様は違うね。
「うっ、うん」
「まぁ、それなら、精神医学的には有り得なくはねぇ話だが。その場合は、色々と条件があってな」
「うっ、うん」
「倉津真琴と言う主人格が、完全に生きる事を放棄して、自身の体が必要無いと判断した時のみに起こり易い現象だなぁ。この辺について、なんか身に覚え有るか?」
「えぇっと。そりゃあ、色々と落胆した事はあったけど。生きる事を本気で放棄しようと思った事だけは、未だに1度も無いよ。だってさぁ。こんな私でも必要としてくれる人が居るんだから、生きる事を放棄する意味なんて無いもん」
そりゃあね。
あまりにも自分の不甲斐無さに、何度も『死んでしまいたい』なんて思った事は何度もあったけど、それにしたって、何もかもを捨ててまで本気で死にたかった訳じゃない。
そんな状態にあっても、なんとか、その悪い部分を修正して、また『みんなと楽しく一緒に居たい』と思う気持ちの方が遥かに高かったからね。
この辺については、私って厚かましいしくも、生き意地が汚いから、死ぬのだけは嫌なのよ。
「そうか。なら、その件に関しては特に問題は無い。逆に言えばだな。そのXX眞子とやらを、オマエ自身が『女性として生きて行く上での必要な部分を上手く吸収した』って可能性の方が飛躍的に高いからな。だから、自身の精神面に内包したと考えるのが順当なんじゃねぇか」
「そっか。じゃあ、私の基本は、何所まで行っても真琴ちゃんって事で良いんだよね」
「まぁ、そうだろうな。大体にしてな。第二人格が主人格を飲み込むのには、かなり条件が厳しいからな。それに上手く吸収が進まなきゃ、今の様な落ち着いた状態にはならない。突然の様に人格が入れ替わるなんて事例もあるから、それだけ安定してりゃあ、間違いなく、主人格である倉津真琴の精神を引き継いだのが、今の主人格である眞子を構成したもので間違いないだろうな」
いつも通り的確ですね。
パーフェクトですよパーフェクト!!
……まぁ実際の話で言えば、さっきの男性と、女性の脳の違いで、この件については、自分の中ではケリは付いてたんだけどね。
どうしても、崇秀の口から聞きたかっただけですよ。
「そっか。じゃあ私は、何所まで行っても私なんだ」
「まぁ、そういうこったな」
「じゃあ次ね」
「なんだよ?まだ有るのかよ?」
「あぁうん、ごめん。実は、これ以外にも、結構、一杯疑問が有るんだよね」
「そっか。じゃあ序に全部言ってみろよ。俺が答えられる範囲なら答えてやるからよ」
優しいねぇ……
もぉ、大大大の大好きですよ……
そんな優しさを感じてしまったあまり、今、自然と『チュ~』しちゃいそうになりましたよ。
あぁでも、意地悪なのも大好きですね……私はM気が強いんで。
あれって、結構ゾクッとするんだよね。
うんうん、これも、きっと女性脳のせいだ。
「あぁ、じゃあ、遠慮なく」
「……っで、なんだよ?」
「あぁうん。あのね、崇秀って、私が女に成って嬉しい?」
「んあ?……なんか微妙な質問だな。それにオマエの意図が見えないから、安易には解答出来ねぇ状態だな。どういう事かハッキリ言ってみろよ」
流石に、これは言い難いなぁ。
間違っても『私を、わざと女にした?』なんて、口が裂けても聞けないしなぁ。
どう言えば、角が立たずに上手く聞けるんだろうね?
「えぇっとねぇ。うぅ~~んとねぇ」
「なんか、やけに言い難そうだな。……って、あぁ!!オマエまさか『俺が故意的に、オマエを女にしたんじゃないか?』って思ってるんじゃねぇのか?」
「あぁ……はい、すみません。ほんの少しだけ思っちゃってる節があります」
「なるほどなぁ。それでさっきの『オマエが女に成って嬉しいか?』って質問な訳な」
「あぁ……うん」
「じゃあ、解答する前に、これだけは先に言って置くがな。まずにして、あの時点での俺には、男を女に変えるなんて荒業は出来ねぇ。だから間違っても、故意的に、オマエを性転換させたんじゃないのだけは解ってくれな」
「あっ……」
「確かに俺は、世間から見たら、相当、性格が捻じ曲がってるが。人の幸せを崩してまで、自分が幸せになろうとは思っちゃ居ねぇ。そこだけは履き違えてくれるなよ」
あっ……
あぁ……
「ごっ、ごめん!!そう言う意味で言ったんじゃないんだよ!!……そう言う意味じゃ……」
ごめんね。
私、無意識の内に、なんて無神経な質問をしちゃったんだろ。
聞いて良い事と、悪い事の判別も出来無いなんて……これじゃあ、ただ単に崇秀を疑ってるのと同じじゃない。
こんな事を言われたら、誰だって嫌だよね。
それが、こんなにも信用してくれてる私の口から出たんじゃ、救いも何も有ったものじゃない。
私、軽々しく、なんて酷い質問をしちゃったの……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
眞子……これは、完全にやっちゃいましたね。
まぁ自身が最大に信頼を置いてる崇秀にだからこそ『つい』こんな話を聞いてしまったのでしょうが、幾ら信用してるからと言っても、流石に、この質問はしちゃいけない部類の話。
普通なら『相手に疑われてる』っと感じられても、何もおかしくはない様な質問ですからね。
……っとは言え、それは何処まで行っても一般論。
この眞子の不躾な質問に対して、変人の崇秀は、一体、どの様な捉え方をするのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます