910 病気の説明は眞子に……

 遠藤さんを完全に納得させた崇秀。

そして彼の帰宅後『倉津君失踪の真相は教えてやる』っと何の前触れもなく突然言い出し、動揺を隠せない倉津君だった。


***


「ブウゥッ~~~!!なっ!!なんだと!!……あの一連の失踪事件は、やっぱり、オッ!!オマエの仕業だったって言うのかよ!!」

「あぁ、間違いなく、全部、俺の仕業だ。そこには寸分の狂いもねぇ」


……ってな。

なんとも言い難い様な衝撃的な事実で話をスタートさせて来やがったんだよな。


ホント堪らねぇな、コイツだけは……



「ちょっと待ってくれよ。一体、そりゃあ、どう言う事なんだよ?……ってオイ!!まさか、その話って、眞子も絡んでるんじゃねぇだろうな?」


俺のセリフを聞いて、明らかに眞子が体を震わせながら『ビクッ!!』っとさせた。


あぁダメだ……この眞子の態度から言って、こりゃあ完全に正解だな。

どうやら俺の失踪には、眞子の問題が絡んで来ているらしい。



「ご名答だ」

「マジかよ。……っで、どう言う事なんだよ?」

「なぁに、これ自体は、そんな大層な話じゃねぇんだよ。この眞子って女はな?オマエ自身だ」

「はっ、はい?」

「だ・か・ら、眞子は、オマエ自身だって言ったの」

「なっ、なっ、なっ、なんですと!!……ってか、んな事が有り得るかぁ!!」


なに言ってんだコイツ?


俺が眞子な訳ねぇだろ!!

現に目の前に眞子が存在するんだから、そんな馬鹿げた話が現実的に有り得るかぁ!!


……いやまぁ、確かに、それっぽい記憶がない訳ではないんだが、仮にそうであっても、この世に俺と眞子が同時にこうやって存在している以上、そんな法則が成り立つ筈はないしなぁ。



「えっ?ちょ!!崇秀!!」

「なんだよ?なに焦ってんだよ?事実じゃんかよ」


えっ?


……嘘だろ?

なんで、こんな崇秀の戯言に、眞子の奴が驚いた様な反応するんだよ?


オイオイ、こりゃあ一体、どう言うこった?

意味がわからねぇぞ。



「ちょっと待ってくれ!!マジで、どう言う事だよ!!」

「んあ?なに2人して、こんな程度の事で焦ってんだよ、オマエ等は?こんなもん、別にそんな大層な話じゃねぇだろうに」

「いやいやいやいや、滅茶苦茶大層な話だから!!それに眞子が俺だとか、全く持って意味がわかんねぇし!!」

「どこがだよ?オマエの中から、男を取り除いた部分が眞子だ。俺はそう言ってるだけじゃねぇかよ」


はっ、はい?


なに?


どういうこと?



「頼むから、ちょっと待ってくれ。それじゃあ全く意味が解らんぞ。そんな話、俺の理解の範疇を超えてるぞ」

「だろうな。オマエの少ない脳味噌じゃあ、そんなもんだと思ったわ」

「やかましいわ!!そんな所だけ律儀に反応してんじゃねぇよ!!……つぅか!!マジで、なにが、どういう事なんだよ!!」

「まぁ、そうカリカリしなさんなっての。キッチリと、オマエの出来の悪い脳味噌でも理解出来る様に、順を追って説明してやるからよ」


だから、なにを~~~?

そんな摩訶不思議な話を、どう説明して、どう俺に理解しろっていうんだよ?


アホかオマエは!!


『世にも奇妙な物語』の見過ぎなんじゃねぇの?


……だが崇秀に、そんな俺の心の叫びなど届く筈もなく。

この馬鹿は、そう言いながら、大量の書面を、コタツの上に出してきた。


なんだこれ?


カルテ?



「なんだよ、これ?」

「見ての通り、オマエが抱えていた病気のカルテだが」

「病気?俺が?なんのぉ?」

「『クラインフェルター症候群』及び『半陰陽』って、性に関わる病気だ」

「……なんだよ、それ?性病の話か?」


なんか聞き覚えのある病名なんだが……なんだっけ、それ?



「鼻モゲて死ね。それとわかんねぇなら、余計な事を言うな。……あと、序に眞子。これは自分の事でもある訳だから、病気の説明だけで良いから、倉津に、自分の口から説明しろ」

「えっ?私が……説明するの?」


いや……明らかに嫌がってる雰囲気だから、いつもみたいに、オマエがチャチャっと説明したら良いんじゃんかよ。

なんで敢えて、嫌がってる眞子に、そう言う事をさせる必要性が有るんだよ?


辞めてやれよな。



「いや、別にオマエが、さっさと説明したら良いじゃん」

「ダメだな。これバッカリは、それじゃあダメなんだよ。コイツが自らの口で、オマエにこの病気の説明出来なきゃ、自分の存在を、オマエには認めて貰えないからな」

「俺に認めて貰う?なんだ、それ?どういう事だよ?」

「なぁに、コイツが上手く病気の説明をしたら、その辺もちゃんと説明してやんよ」


意地悪いなぁ。


まぁ……そうは言っても、コイツが、こう言う事を人に対して言う時は、なにかしろの必然性が有る時だからなぁ。

だったら、この一見嫌がらせにしか見えない行為にも、なにかしろの大きな理由が有るのかも知れねぇしな。


……にしてもなんだ?



「あっ……あのね、真琴ちゃん」


困り果てた顔をしながらも、意を決したのか、眞子が、ゆっくりと口を開き始めた。



「なっ、なんだよ?」

「あのね。崇秀が言った『クラインフェルター症候群』って言う病気はね。染色体の病気なのよ」

「はぁ?性病じゃなくて、染色体の病気だと?……けど、確か、染色体って、あれだよな。男とか、女とかを決める奴の事だよな」


あぁ、さっきからなんか聞き覚えがある様な病名だとは思っていたんだが、そんな話が過去にした様な気がするな。


しかも、あの奇妙な記憶の中での話でだ。



「そぉだね。XYが男性で。XXが女性って定義で成り立ってる奴の事」

「だよな。でもよぉ。俺が、それの病気って事は……どうにかなるのか?」


けど、なんだか気持ち悪い話だな。

性別の病気なら、根本的なラインで、俺ってオカマって事になるのか?


けどよぉ、そう言う傾向は、今の所なにもねぇ様な気がするんだけどな。



「うっ、うん。あっ、あのね。真琴ちゃんは、生まれた時から少し染色体に異常があってね。通常男性はXYの染色体しか持ってないんだけど、真琴ちゃんはXXYって少し特殊な染色体を持って生まれちゃったの。その染色体の異常こそが『クラインフェルター症候群』って言われるのよ」

「じゃあ、端的に言うと、それってオカマって事なのか?」

「あぁ、オカマさんではないんだよ。ただね。体の成長パターンに、異常をきたす可能性がある病気ではあるのよ」

「それ……具体的に、どういう事だよ?」

「うん、あのね。成長期に入ったら、男性的な成長と共に、女性的な成長をする可能性が有るって感じ」

「えっ?まさか、それって……」

「そぉ、前例的なものを挙げれば、男性なのに、女性みたいに胸が大きくなったり。声変わりを殆どしなかったり。体毛が濃くならなかったりするのね」


いや……仮にそうだとしてもだな。

今の所、やっぱり俺には、これと言った大きいな弊害出てねぇけど?



「そう……なのか?」

「うん。それに付け加えてね。真琴ちゃんって、さっき崇秀が言った『真性半陰陽』って病気に罹っててね。1つの体の中に、男性の性腺と、女性の性腺をっていう2つ性質を持ち合わせた体質でもあったのよ」


要するに両性具有って事か?


もしそうなら、漫画なんかでそう言う体質の人間を見た事はあるんだが……



「ちょっと待て眞子!!それって、漫画の中でとかでしか存在しない話なんじゃないのか?」

「漫画だけじゃないよ。これは現実にある病気だよ。世界中に前例も沢山有るから」


うぇ……まじかよ?

じゃあ俺って……なに?なんなの?


そうやって俺が頭を抱えていたら……



「よし。説明は、そこまででOKだ。眞子、よく頑張った。もう良いぞ」

「あぁ……うん」

「ちょっと待てアホンダラァ!!説明を聞いただけでも、全然良くねぇじゃねぇかよ!!なんなんだよ、俺の体は!!訳わかんねぇ事になってるじゃんかよ!!」

「ボケ。だからオマエは、1年もの間、失踪せざるを得なかったんだよ」

「はい?なにがぁ?それ、どう言うこったよ?それじゃあ、サッパリ意味がわかんねぇぞ?」


うん?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


今回、崇秀が、眞子に病気の説明をさせた理由って、皆さんは解りましたでしょうか?


確かに、この場面では、崇秀がサッサと説明した方が効率が良いので。

本来は、眞子に説明をさせる理由なんて物は存在しないのですが……実は、それだと問題がありましてね。

それをしてしまうと、此処での眞子の存在感が完全に消えてしまい。

ただただ、崇秀を頼るだけの存在にも成ってしまうので、此処では眞子が説明をする必要があるんですね。


そしてなにより。

眞子が必死に説明する事によって、倉津君に眞子が伝わり易しですし、彼女の抱えていた悩みが伝わる。


こう言った細かい部分での演出をする為に崇秀は、眞子に説明をさせた訳だったりするんですよ。


ご理解頂けましたでしょうか?


さてさて、そんな演出が施されて、病気の説明は終わり。

いよいよ、1年間の失踪の原因を、今度は崇秀がしていく訳なのですが。

一体、あの女性化現象を、崇秀は、どう説明し、どう倉津君を納得させていくのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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