908 崇秀が吐く完璧な嘘八百

 眞子の正体について言及する遠藤さん。

されど、どうしても話せない内容もあり、キッチリと説明出来ずに居たら。


そこに……


***


「んあ?……俺が何処から入って来たかだと?んなもん玄関から入って来た決まってるだろ、このボケ」

「いや、そう言う事じゃなくてよ」

「つぅか、んな些細な事は、どうだって良いんだよ。それより遠藤さんに、倉津、豪く眞子を可愛がってくれてるみたいだけど、それって眞子になにをやってくれてる訳?」

「「えっ?」」

「……次期ヤクザの親分さんが2人も雁首揃えて、中学生の女子1人相手に虐めをしてるなんざ、あまりにも格好悪いんじゃねぇの?見れたもんじゃねぇぞ」


がぁ……チャラケタ言葉とは裏腹に、なんて目をしてやがるんだコイツ!!

次期広域ヤクザの組長候補の2人に向って、平然と『殺す気』の目を向けて来やがる……


なんなんだ、この桁違いな迫力は?


康弘の奴も、ちょっとビビッてやがるぞ。



「なっ、仲居間さん。……これはね。一般人の仲居間さんが干渉する様な話じゃないんだ。悪いけど席を外して貰えないかな」

「ほぉ。じゃあ、なにか遠藤さん?遠藤さんは、自分の彼女が、いたぶられてるのを見て、見ぬフリをしろって言うのか?それは聞けた話じゃないね」

「崇秀……」

「なっ!!向井さんが、仲居間さんの彼女だって……」

「あぁ、そうだが。なんか問題でも?」


なんですと!!

眞子が崇秀の彼女ですと!?


オイオイ眞子、なんでオマエさん程の女が、こんな世界一ロクでもない男と付き合ってるんだよ?


ダメだぞ、オイ!!

コイツなんかと付き合ったら『人生に終着点』『人としての終焉』を迎える事に成っちまうぞ!!



「ちょっと待て崇秀!!なんで敢えて、オマエが眞子と付き合うんだよ!!辞めてやれよ!!」

「ヤダね。気に入ったから眞子は俺のモノ、俺だけのモノなの。以上。……他に質問は?」

「だから、ちょっと待てって!!マジで辞めてやれよ!!そんな世界一嫌な拷問をするのはよぉ」

「ヤダね。……おい、眞子」


そう言って崇秀は、眞子の前で片膝をついて座るんだが……って、オイ!!



「えっ?……あっ……んんっんん……」

「うわっ!!モロやんか」


ぎゃああぁ~~~!!なに考えとんじゃコイツは!!

こんな大勢の前で、俺の姉弟に平然とチュ~~かましてんじゃねぇよ!!


眞子は、年頃の女の子なんだぞ!!

そんな事を人前でしたら恥ずかしいだろうし、なにより可哀想だろがぁ!!


そう言う事はマジで辞めろよな!!


つぅか、人の大切な兄弟に、堂々と手ぇ出してんじゃねぇぞ!!



「オマエなぁ……」

「なんだよ?見ての通り、誰がどう言おうと眞子は俺だけのモノだ。これに関しては誰にも文句は言わせねぇ。それに、コイツの戸籍偽造をしたのは俺だ。それについての質問が有るなら、全部受け付けるが?」

「ちょ!!なんの為に?なんの為に、仲居間さんがそんな事をする必要があったんだい?」

「なぁ~~に、簡単な話ですよ。コイツの存在は、最終的には、倉津組の保険なんッスから」

「どっ、どういう事だい?」

「わかんねぇかな?遠藤さんなら、直ぐにでもわかりそうなもんなんだがな」


眞子が、ウチの組の保険だと?


なんのこっちゃ?

俺にもサッパリ意味が解らんぞ?


なんでそうなるんだよ?



「オイ、崇秀。マジでそれ、どういう事だよ?」

「あのなぁ馬鹿津。ちぃとは、その小さな脳味噌で、物を考えろよな」

「だから、なにがだよ?」

「オマエみたいな放蕩息子が次期倉津組の組長じゃ、倉津組の先行きは不安でしょうがねぇだろ」

「げっ!!」

「オマエは馬鹿だから、なにも考えず、いつもフラフラフラフラしてやがるから、いつ、どこで死んでも、おかしくはねぇ。だからまずは、そんな倉津家危機的な状況を脱する為の保険として、眞子には正式な戸籍を与えたんだよ」

「がぁ……」


今回の失踪の1件があるだけに、一気になんも言い返せない状態に『ポトン』って落とされてやんの。


俺、馬鹿じゃねぇの?


それともこれって、俺の普段の行動に問題があるから自業自得なのか?



「それによぉ。テメェは、妹の真菜ちゃんを普通の家庭に嫁がせたいと思ってんだろ?だから俺は、オマエの親父さんの隠し種を探し出して、こうやって保険の為に、倉津眞子と言う人間を密かに育てていた。……だがな。そんな俺にも誤算があった。この馬鹿眞子は、俺に無断で、倉津の籍を向井さんの籍を替えやがったんだよ。ホンで話は、全てオジャン……偽造戸籍に関しては、ただそれだけの話だ」

「ちょっと待ってくれ、仲居間さん!!本当に、何故アナタがそんな事を?」

「いや、これも最も単純な話なんッスけどね。本来は俺自身が、戸籍を作った眞子と結婚をして、倉津組を頂こうって寸法だっただけなんッスよ」

「なっ、なんだと!!」


ホントなにを考えてるんだコイツ?

世間の嫌われ者で、足枷にしかならないヤクザの組なんか抱えて、一体、何をする気なんだよ?

大体にして、そんな事をしたら、オマエがコツコツ積み上げてきた実績さえも破壊してしまいかねない案件なのによぉ。


こんなもん、百害あって一利なしじゃねぇか。



「はぁ……その様子じゃ、まだなにも解ってねぇ様だな」

「解るか!!この意味不明な生物め!!」

「オマエだけはマジかよ。……あのなぁ、馬鹿津。GUILDが、あれだけ大きくなっちまったら、自分の身を守る為にも、マフィアに対抗しうるだけの大きな組織が俺には必要なんじゃねぇのか?」

「あっ……」

「だから俺は、倉津組に目を付けた上で眞子を囲った。ただそれだけの事じゃねぇかよ」


そこか!!

眞子を使ってまで倉津組を手中に収めようとしていた理由は、そこだったのか!!


確かに、ボブの在籍してるESレーベルの様な東海岸を仕切ってるマフィアがバックにある不穏なレーベルが存在する以上、これ等の障害から自身の身は自分で守るしかない。


その為に、眞子を出汁に使って、倉津の家を乗っ取る。


けど、それだけの為に、眞子を探し出したって言うのか?



「なら、何故、僕の方には仕掛けて来なかったんだい?」

「ふぅ~~~、遠藤さん。遠藤さんは、そこに居る馬鹿津と違って、基本的にヤクザになる事を拒んでないッしょ。それに、この馬鹿の様に隙が無い。……なら俺は、倉津組を得た後で、遠藤さんと提携を結べば良いだけの話。そこも大した問題じゃないッスよ」

「だとしても仲居間さん。組の跡目を継ぐのは、そんな単純な話じゃないよ。大元も通さなきゃならないから、そう上手くは行かないよ」

「なに言ってんッスか、遠藤さん?俺の金を稼ぐ才能は、世界が欲しがる様な才能ッスよ。なら、ヤクザの業界を変える事なんざ造作もねぇ。……利潤の追求は、俺の最も得意な分野なんでね。そこも問題無しッスよ」

「なんだって……」


コイツ……マジか!!

マジで、もうそんな先の事まで考えて行動してやがったのか?



「まぁつってもな。さっき言った通り、眞子の馬鹿が勝手に倉津の姓から向井さんの姓に戸籍を変えちまった以上、この計画は、綺麗サッパリ、オジャンになっちまったけどな」


ブッ!!

ホント、オマエって奴は……そんな大それた事を、気楽な感じで話してんじゃねぇよ!!


頭の中がぶっ飛び過ぎてるんじゃねぇか!!


あぁいや、そんな事よりもだ。

今の崇秀の言動で、かなり気になる発言があったんだが。


その計画がオジャンに成ったって事は……まさかとは思うが!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


崇秀の登場により、一気に眞子の戸籍問題が解決しましたね。

まぁこの辺に関しては、崇秀が常に用意周到な人間だからこそ出来る荒業なのですが、よくもまぁ、こんな適当な嘘八百がポンポンと出てきたもんですね(笑)


まぁそうは言っても、眞子の後ろ盾が崇秀とあっちゃあ、遠藤さんも信用せざるを得ない。

ナンダカンダ言ってても、遠藤組の芸能界進出を手伝ってくれてるのは、崇秀に他ならないんですからね。


相手に有無を言わさない……これが実績と言うものなのです♪


……っとは言え。

この話で、今度は倉津君がある事に疑念を持ってしまったのですが。

果たして、倉津君が持ったその疑念とは如何なるものなのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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