907 遠藤さんを納得させる為の理由付け

 飯綱ちゃんと会話をしながらも、眞子に疑いの眼を向け続ける遠藤さん。

そんな彼の態度に業を煮やした眞子が『言いたい事があるならハッキリ言って下さい!!』っと言ってしまい……


***


「言って良いのかい?僕は、こう言う事に関しては、結構、歯に衣を着せられない人間だよ。それでも良ければハッキリ言うけど」

「……どうぞ、お好きな様に言って下さい。私は、なにも後ろめたい事なんてないですから」

「ふ~~~ん、本当に、後ろめたい事はないかい?」

「言いたい事は解りますよ。……確かに、遠藤さんが、お寿司屋さんで言われた通り、私は偽造戸籍の人間ですから、遠藤さんがお疑いになられるのも当然でしょう。……ですが、真琴ちゃんと血縁なのだけは嘘じゃありません。勿論、信用するも、信用しないも、遠藤さんのご自由ですが。こう全てを疑って掛かられたのでは、非常に気分が悪いです。……っで、なにが言いたいんですか?」


さっきの調理の時間に、康弘から偽造戸籍の話が俺に伝わってると見越して、その辺を包み隠さず、自らの口で、全てを自白したか。


だったら、もぉ良いんじゃねぇの?

この件について、全く関係ない飯綱って呼ばれてる子も此処には居る訳だしよぉ。

そんな事で、2人の友達関係にヒビを入れるのは、なにか違うだろうに。



「ちょっと待って、眞子。偽造戸籍って、どういう事なん?」

「飯綱ちゃん……隠してて、ごめんね。実は私ね。生まれた時に出生届が出されないまま赤の他人に預けられて私生活を送っていたから、基本的な部分で戸籍は無いの。真琴ちゃんのお父さんの妾の子だから、色々な理由があって、存在しちゃイケナイ存在だった。けど、その育ての親が亡くなって、頼る場所が無くなったから神奈川に出て来るしか選択肢がなかったのよ。それで真琴ちゃんの家の廻りをウロウロしていたら、偶然、真琴ちゃんに出逢って、この事を相談したら、真琴ちゃんから奈緒ネェを紹介して貰って助けられた。……これって、遠藤さんに責められなきゃいけない程、悪い事なんですか?私は、一生存在しちゃイケナイ人間なんですか?」

「ごっ、ごめんやで、眞子。ウチ、そんな事情があったとは知らんかったから……」


ふぅ、本当に、もぅ良いんじゃねぇか康弘?

コイツは、オマエが思う程の危険な人間じゃねぇよ。


これ以上は、此処に居る全員の気分が悪くなるだけだから、もぉヤメテやれよ。



「フフッ、お涙頂戴ですか?そんな程度の話じゃ、僕は納得しませんよ。……そりゃあ存在してはイケナイとは言いませんが。身元をハッキリさせるのは大事な事なんじゃないですか?」

「だから私は……」

「オイオイ、康弘。もぉ良いじゃねぇかよぉ。そこまで自分の口で言ってんだから、そんな風にしてまで、本人が嫌がる様な事をしてやるなよ。オマエ、ちょっと大人げないぞ」

「・・・・・・」

「それは違うよ、倉津君。此処では大人げなんて関係ないんだよ。そう言うのは問題じゃない。問題なのは、君が、組を持つと言う事を甘く考え過ぎている事。ハッキリ言えば、彼女が何者であれ、身元がハッキリしない以上、疑って掛かるのは当たり前の事なんだよ。身元が割れない人間に、隙を見せる訳には行かないからね」


……いや、幾らなんでも、それぐらいは解ってるけどよぉ。

これじゃあ眞子を、ただ単に晒し者にしてるだけじゃねぇかよ。


高々女子1人に、そこまで徹底しなくても良いんじゃねぇか?



「だったらよぉ。この件は、俺が全部責任を持つからよぉ。もぉヤメテやれよ。可哀想じゃねぇかよ」

「真琴ちゃん……」

「あのねぇ、倉津君。そうやって簡単に『責任を持つ』って言うけど。どう責任を取るって言うんだい?この話は、倉津組だけに留まらず、下手をすればウチの遠藤組にも関わるかも知れない問題なんだよ。だから、易々と、そう言う事を言うもんじゃないよ」

「いや、解ってるけどよぉ。じゃあ、一旦、保留にしてくれよ。じゃねぇと、眞子が壊れちまうって」

「ダメだね。一旦、保留にしたんじゃ、倉津君の性格上、向井さんに入れ込む可能性がある。今ハッキリとしないとダメだね」


なにを、そこまで疑ってるんだ?


なにか有るのか?



「オイ、康弘。オマエさぁ……なにをそんなに疑ってるんだ?」

「言って良いのかい?さっきも言ったけど。僕は、こう言う件に関しては歯に衣を着せられない人間だよ。それでも良いならハッキリ言うけど」

「あぁ、言えよ。全部吐き出してみろよ。……但し、もし、キッチリと眞子に対しての疑念が晴れた時は、オマエには正式な謝罪をして貰うぞ。遠藤組の代表としてな。……俺の身内を疑うとは、そう言う意味だからな。それと、そこの小さいの。オマエは関係ないから、取り敢えず、風呂にでも入って来い。こんな話に、オマエは関わっちゃイケネェ」

「そやかて、眞子はウチの友達やで。それに家族同然……」

「黙れな。……眞子にだって、オマエに聞かれたく無い事だって有るだろうに。それを聞いても、コイツの事をキッチリ守ってやれんのかよ?それが出来ねぇなら、この場に居る立場じゃねぇんだよ」

「そやかて……」

「飯綱ちゃん、ごめん。……いずれ、キッチリ話すから、今は許して」

「あぁ……そぉかぁ。眞子が、そう言うんやったら……」


眞子の言葉の静止が功を奏したのか、飯綱と呼ばれる小さい子は、その場を立ち上がり、何度も振り返りながらも、部屋を後にして行った。


悪いな。


それにしても、事が大きくなっっちまったもんだな。

こんな事ぐらいで、此処まで話が大きくなるとは思ってもみなかった。


……けどよぉ。

眞子が、これ以上、康弘に責められるのは見てられねぇ。


コイツは、間違いなく俺の兄弟だ。

コイツは、絶対に嘘は言っちゃあ居ねぇ。


俺は、そう信じている。



「うん。彼女が居ないのは好都合だ。なら、早速、遠藤組の代表として、向井さんに聞くよ。……向井眞子さん。貴女は、一体、誰なんですか?なんの目的があって、この神奈川に現れたのですか?」

「ちょっと待て、康弘。目的は、さっき言ったんじゃねぇのか?」

「悪いけど、倉津君。僕は、向井さんに聞いてるんだ。もしもの場合は、謝罪をキッチリさせて貰うから、少し黙ってて貰おうか」

「あぁ、そうかよ。だったら、なにも言わねぇ。眞子、ハッキリ答えてやれ」


なんかあったら、俺が全部フォローしてやる。

なにがあっても守ってやるから、正直に言っちまえ。



「えぇっと……あの……」


なんか隠してるのか?

それとも、そんなに、人には言い難い事情なのか?


『ガラッ!!』



「よぉ。なんだよ、なんだよ?ドイツも、コイツも辛気臭ぇ面並べて、なにやってんだ、オマエ等?葬式か?」

「崇秀!!」

「仲居間さん!!」

「崇秀!!つぅかオマエ、どうやって此処に入って来たんだ?」


崇秀だと!!


……コイツ、今このある揉め事を嗅ぎ付けての帰国か?

それに、崇秀の後ろには、さっき出て行った筈の小さい子も居る。


……って事はなにか?

本当に、タイミングよく現れたって事か!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


眞子が、何の為に倉津家の親戚を名乗り、この街に現れたのかを知りたい遠藤さん。

だが実際、TSをしたのが原因の眞子にしたら、そんな目的や理由なんて物がある筈もないので、取り繕った様な順当な嘘を並べるしかなかった。


これが現状だったのですが……此処で病院で逢って以来の長い沈黙を破って崇秀の登場!!


果たして崇秀は、遠藤さんが納得させる様なフォローが出来るのか?

そして、それはどの様な内容のフォローを入れる事に成るのか?


次回はその辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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