906 疑惑の眼

 少々眞子に対して疑惑の目を向け過ぎている遠藤さんに対して、倉津君が腹を立ててると勘違いした眞子。

それ故に、上手く話しを中断して、食事する事を促すのだが……


***


 ……っで、この後。

1時間半ほど使って、ゆっくりと蟹を突きながら、食事をさせて貰ったんだが……未だに康弘の奴は、全く持って眞子に対する疑念が晴れていない様だ。

それに対して眞子も、康弘の態度に、なにかを感じたのか、コチラも口をあまり開かない。


なんか妙な雰囲気の中、食事をする羽目になっちまったんだよな。


……けど、そんな状況下にあっても、眞子の家に居た小さい子は良く喋ってくれていた。

この年齢にしては、凄い気遣いの出来る子だ。


けどよぉ、なんかこの子、スゲェ大人びた発言をする小学生なんだよな。


こんな風によぉ(↓)



「……そやねんなぁ。眞子は、いつもモテモテやから、大概の事やったら許して貰えんのよねぇ。ホンマ羨ましい性格やわ」

「ふ~~ん。じゃあ向井さんは、捉え方によっちゃあ八方美人って事だね」

「そやで。そやけどなぁ。眞子に悪気なんかは、なにも無いねんで。基本的に眞子は、えぇ子でもあるからね」

「けど、飯綱さん。その調子じゃあ、向井さんが、誰かに迷惑を掛ける事だってあるんじゃないですか?」


探りを入れてるなぁ。


けどよぉ康弘。

小学生相手に、流石に、そりゃああまりにも大人気なくないか?

探りを入れたい気持ちはわからなくもないが、露骨にやり過ぎだぞオマエ。



「それが不思議な事に、そう言ったクレーム染みた話は一回もないねんなぁ。この子は、元が素直な子やからなぁ。誰も、そう言う目では見ぃひんのよ」


……にしてもだな。

この小さい子が話す事が本当なら、眞子は不思議な魔力を持ってる系なんだな。


確かに眞子は、誰も彼もが、勝手に幻想を抱いてしまう様な理想系の女。

異性に好かれる要素を沢山持ってる。

だから此処までは俺も納得は出来る。

だがその上で、この小さい子が慕ってくれてる様に、同性からも嫌われては居ない様なんだよな。


故に、此処に於ける俺の疑問は『何故そんな真似が出来るか』だ。


前例として、眞子と、よく似た感じの真上さんを例えに上げると解り易いんだがな。

真上さんは、どちらかと言えば、同性からは明らかに嫌わる傾向に有った。

あれだけ他人の事ばかり気にしてる良い人ですら、同性とは潤滑な人間関係を構成出来ないでいると言うのに、何故、眞子には、それが簡単に出来るのか?


康弘じゃないが、確かに少し疑問ではあるな。


それと序に言うが、この小さい子……多分、小学生じゃなくて、俺等と同級生っぽいな。



「けどよぉ。幾ら素直だからって言ってもよぉ。それだけ男にモテりゃ、誰かから反感の1つも買うもんじゃねぇのか?」

「うぅん。全然やね。全く、そんな噂は聞けへんわ」

「また、なんでだよ?」

「うん?だってやねぇ。この子は『崇秀の事だけが好きや』って言うのが、みんなに知れ渡ってる周知の事実やからやん。そやから、他の男が言い寄って来ても、基本的には無駄。眞子が振り向く筈がないやん。……あんな化物みたいな男を越えられる奴なんか、早々居れへんからね。男子も、女子も、その辺を熟知してるんやと思うよ」


なるほど、そう言う理由かぁ。

男子は諦めムードで友達感覚に落ち着いていて、女子は特有の打算が働いてるって事か。


まぁ理屈的な話では合っているが、それだけの事で、みんな、そう簡単に、そこまで割り切れるもんなんだろうか?


矢張り此処も謎だな。



「ふ~~ん。けどよぉ。それでも女子って嫉妬するんじゃねぇのか?」

「そりゃあ、嫉妬はするわ」

「だよなぁ」

「そやけどアンタ、眞子を見てみいな。何所からどう見ても可愛い顔してるし、勉強だって学年で1番を取れる程の実力やし、ウチとバスケをやっても遜色ないぐらいスポーツも出来る。その上、性格も、男みたいにアッサリしてる子やで。そんな子、敢えて、敵に廻そうと思うか?そんなチャレンジャーな女子は居れへんわ」

「うん?ちょっと待て、眞子が男っぽい性格だと?……そうかぁ?俺には、スゲェ女の子女の子してる様に思うんだけどなぁ」

「それが眞子の天然トラップやん。女の子女の子してるのに何所かサッパリしてるから、みんな、眞子の事を慕うんちゃうかなぁ。それに眞子は無駄に熱いしな。そう言う子は、今時珍しいからね。誰もがみんな、眞子を自分の手元に置きたいと思うんちゃうか」


なるほど、なるほどなぁ。

確かに、単純にそう思えば、最低限度、そうだとは認識しやすいな。


これは、眞子に逢って初めて解った事なんだがな。

コイツに逢うまでは、なんでも出来るって言う非常に嫌な奴のイメージしかなかったんだが、逢ってみたら、コイツは嫌な奴処か、打算すらロクに出来無い様な奴なんだよな。


だったら、そんな素直な奴が、なにかするとは思えないよな。


故に、もぅこれ以上、俺が眞子を疑う余地は無いな。


……ただ、最後に1つだけ気掛かりな話が残ったがな。



「ふ~~~ん。向井さんは男っぽいんだ。なるほどねぇ」


そうなんだよな。

俺も、康弘と同じ所に疑念を持ったんだが、あれだけ女の子女の子した性格なのに、何故そんな急にサッパリと割り切れるかだけが謎なんだよな。


此処の疑問だけは、どうにも晴れない。


……その疑問に呼応する様に、眞子は、この康弘の言葉に、眉を顰めて妙に困った様な顔をしている。


なんだ?



「あの……遠藤さん。こんな事を言うのは、大変失礼なのかも知れませんが。私に、なにか言いたい事があるんですか?言いたい事があるならハッキリ言って頂いて結構ですよ」


とうとう業を煮やしたのか。

ズッと沈黙を守っていた眞子が、少しイラッとした様な表情を浮かべて、その言ってはイケナイ言葉を口にしてしまった。


ヤバいな。

これは少々厄介な事に成りそうな雰囲気だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


必死に飯綱ちゃんが、場の雰囲気を変え様として喋ってくれたのですが。

それを逆手にとって、遠藤さんは探りを入れてきましたね。


まぁ自身が納得出来ていない事には、徹底するのが遠藤さんなので、此処は仕方がない事なのかもしれませんが。

最後の最後で『そこまで自分を信用して貰えない事に腹が立ったのか』眞子が言ってはイケナイ言葉を吐いてしまいました。


そうなると、当然、次回は、再び遠藤さんの疑惑の目が、露骨な形で眞子に向いてしまうのですが。

果たして眞子は、遠藤さんが納得出来る様な回答をする事が出来るのか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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