904 浮上する疑惑

 倉津君不在の間に起こった問題は、取り敢えずは打開策を提案し合って解決。

されど、その割には遠藤さんの表情が……


これは、まだ、なにか他にも問題があるのか?


***


「……ところで倉津君」

「うん?なんだよ?」

「倉津君さぁ。あの向井眞子って子の事、どう思う?どれぐらい信用の置ける人物だと思っているんだい?」

「あぁ、眞子だと?……いや、信用も、なにも、アイツの事は何も疑わずに全面的に信用してるけど。アイツ、マジでスゲェ良い奴だし」

「あぁ……そうかぁ」


うん?なんだよ、その妙に煮え切らない様な感じはよ?

ひょっとして眞子の奴が、オマエに、なんかやらかしたのか?


一般人である眞子が……な訳ねぇか。

特に康弘は、広域ヤクザである遠藤組跡取り。

ブッチャケて言えば、一般人の眞子に、どうこう出来る様な相手じゃねぇしな。


だとしたら、この康弘の煮え切らない態度は一体、なんなんだろうな?



「なんだよ?俺が、眞子を信用しちゃイケねぇのか?」

「まぁ、全般的に言えば、そう言う事だね」

「なんでだよ?なんか俺が信用しちゃいけない理由でもあるのか?」

「信用しちゃいけないとまでは言わないけど、彼女には、まだ謎の部分が多過ぎるんだよ。だから、あんまり簡単には深入りしない方が良いと思うよ」

「なんだよ?その言い草だったら、眞子の奴になんかあんのか?」

「あぁ、まぁ、これは非常に言い難い話なんだけどね。彼女の戸籍は偽造されたもので、出生が明らかじゃないんだよ。それになにより、君が消えたタイミングと同時期に、彼女が、この街に現れている。此処に僕は、大きな不信感を抱いてるんだよ」


戸籍偽造だと?

それに、俺が行方不明になったタイミングと同じ……だと?


なんだ?確かに妙な違和感を感じる話ではあるな。


何故なら、もし……康弘の言った偽造の話が本当とするならば、何故わざわざ『ヤクザである厄介な倉津の名』を自ら名乗る必要が有る?

一般人が、敢えて理解もしていないヤクザの危険な世界に身を置く必要性なんてある訳がないからな。


本当に、なんだ?



「ちょっと待て。それ、本当の話なのか?」

「時期の件は、今の所、まだハッキリとはしてないけど。戸籍偽造の件は、ほぼ間違いないね」

「なんで、そんなに断言出来るんだ?」

「実はね。行方不明になった倉津君を探してる内に、ある日、住基ネットで、彼女の存在にブチ当たってね。藁にも縋る気持ちで、彼女の身辺を調べてみたら。確かに、その戸籍の住所には、倉津と言う苗字の家は存在した。……けど、そこの近隣の住人を問い質してみたら、そんな人間は、矢張り、どこにも存在しなかったんだよ」

「なに?」

「その件からしても彼女は、なにかしろの理由で『確実に嘘を付いている』っと言う確信を持てたんだよ」


……架空人物か。


けどアイツは、そう言うのに無縁な人間だと思えないんだけどなぁ。

それになにより、そんな違法行為を平然とする様な悪い奴とも思えないしなぁ。



「いや、けどよぉ。アイツ、そんなに悪い奴じゃねぇぞ。現に学校での評判も良いし。全米ツアーをやったアメリカでも高評価だったみたいだし。アイツを悪く言う奴なんて、殆ど居ねぇぞ」

「けど、事がどうあれ、事実は何処まで行っても事実だよ。現に今日の昼間に、倉津君の話を聞こうと思って、食事がてら、向井さんに、君の所在を聞いてみたんだよ」

「ふんふん」

「そしたら『知らない』っと、比較的冷静な態度で、そう言ったんだけどね」

「冷てぇな、おい!!」

「……その後に『倉津君の妹の真菜ちゃんの話』をした途端、おかしなぐらいに態度が急変して」

「急変しただと?」

「そう、急変して、その後も動揺も隠せずに、最後には土下座までして、僕に『真菜ちゃんとの結婚を延期する様に』懇願してきたんだよ」

「はぁ?」

「……これは少し異常な行動だと言えるんじゃないかい?」


土下座だと……

確かに眞子は、さっきも妹の真菜の事を心配をしていた様子だったから……懇願する位ならまだ解らなくもねぇが、流石に土下座まで行くと、それはちょっと異常だよな。

それに康弘の話通り、眞子が戸籍偽造をしてる人間なのであれば、尚更、血縁でもない人間の為に、そこまでするのも何か変だ?


本当になんだ?

この康弘の話の於ける眞子の奴の真相が、まったく見えない感じだな?


この辺に関しては、あまり疑って無かった部分だったんだが、確かにこの一連の眞子の行動は何か変だ。



「確かに、少し異常だな」

「そうだね。まぁ彼女が、なにを考えての事かまでは、僕も推測の域を越えないんだけど。少々彼女からは危険な臭いがするのも否めない話だね。だから今は、ハッキリした事が解るまで、倉津君も彼女との距離を置いた方が良いんじゃないかな」

「まぁ……なぁ。一応、心には留めておくわ」

「じゃあ、この話は終わり。後は彼女達が戻って来ても、出来るだけ表情に出さない様にね」

「あっ……あぁ」


う~~~~ん。

まぁ確かに康弘の言う事にも一理あるんだがなぁ。


けど、結果から言えば、眞子が、なにかを企んでるにしても、アイツには『崇秀の幼馴染』だって決定的な証拠がある訳だし『奈緒さんが完全に眞子を信用して可愛がってる』って言う実績がありからなぁ。

ある意味、その時点で、なにもかもが完全に保証されてるんだよな。


実際、奈緒さんにしても、崇秀のアホンダラァにしても、俺に有害になりそうな奴を野放しにする訳がないからなぁ。

此処があるだけで、安心と言えば安心なんだよなぁ。


まぁ流石に、この思考を続けるのは、現状ではあまり良くねぇから。

康弘が帰った後にでも、直接、眞子本人にその辺りの話を聞いてみるとするか。


あの、眞子に付いて行った小学生の子も、子供だから、そんなに遅くまでは起きてないと思うしな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


遠藤さんが眞子に持つ疑惑とは、矢張り『出生がハッキリしない事』

まぁ本来、これは倉津家の問題なだけに、此処まで遠藤さんが、倉津君に肩入れする必要はないのですが。

遠藤さんは、倉津君の性格を知った上で、彼の事を良く思ってますし。

なにより、遠藤さん的には、倉津君に大きな借りが幾つもあると思えるからこそ、敢えて、この件に関しては厳しく行っているのかもしれませんね。


早い話、些細な事で、倉津君には傷付いて欲しくないんでしょう。


まぁ、そんな遠藤さんの心配を他所に、倉津君はと言えば。

『奈緒さんや崇秀の存在』が、全ての保証と成っていると考え、矢張り、眞子を疑う余地はないと考えている様子です。


まぁただ、全く疑惑が残っている訳ではないので、今現在は不思議な感覚に囚われてるでしょうけどね(笑)


さてさて、そんな中。

此処で漸く、眞子と飯綱ちゃんが台所から戻って来る訳なのですが。

果たして、こんな状態で、何も問題が起きないのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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