903 倉津家&遠藤家の対立問題

 遠藤さんの話によると、どうやらまた組の同盟関係が崩れたらしい。

しかもその理由は、またしても女性関連での揉め事らしいんだが……その相手と言うのが、意外にも最近離婚が成立した理子さんのお母さんと言う悪夢。


***


「まぁ、簡単に、その経緯を話すとね。倉津君のお父さんと、ウチの馬鹿親が一緒に飲んでた時に知り合った、その店のオーナーが理子さんのお母さんだったって話らしいんだけどね。その理子さんのお母さんの離婚話を聞いてる内に、同時に情が湧いたんだってさ。……ホント救いが無い」

「確かに、そりゃあ、あまりにも救いがねぇ話だな。単純なのも良い所だ。……けどよぉ、前回、ウチのアホカスが、オマエの所の親父さんに女を譲ったんだろ。だったら、今度は逆で良いんじゃねぇのか?……まぁ、基本的には、なにも良くねぇけどな」

「いや、それがねぇ。そうしたいのは山々なんだけど。そう簡単に上手く行かない理由があるんだよね」

「あぁ……なんか話が見えてきたぞ。まさかとは思うけど、理子さんのお母さんが上手く両天秤かましてるんじゃねぇのか?」

「……正解。中々強かなやり方で、上手く両天秤に掛けてるね」


あぁ……もぉ……なんなんだよ?

どこもかしこも、右を見ても、左を見ても、ロクでもねぇ親ばっかだな。


まぁけど、お水の仕事をしてりゃ、こんな上客を無碍に逃す手は無いよなぁ。

そこら辺の金のないチンピラが店に入り浸ってるなら迷惑なだけかもしれないが、それが組長クラス……しかも、その両者が、日本でも屈指の大きさを誇る組なら、これは無碍には出来ない。


いや寧ろ、離婚が成立した後のお金のいる状況なら尚更だ。


まぁだから理子さんのお母さんの気持ち的には解らなくもないんだが……逆に、理子さんの気持ちを考えるとなぁ。


やっぱ、あんま良くねぇよな。



「OKだ。だったら、あんま気は乗らねぇけど、此処は1つ、俺が直接1脅しかけてみるわ」

「助かるよ。脱税の書類が上がってるけど使うかい?」

「いや、イラネェ。下手に、そんなもん使ったら、また馬鹿親父共が余計な同情をして、組の金を使い兼ねないからな。もっと有効な手を使うんだよ」

「うん?……なにをするんだい?」

「ふん。年配の女性が求めるものは、基本的に若い男だ。理子さんのお母さんには悪いが、ちょっとした火遊びで、大火傷を負って貰うだけだ」

「一番最悪な手を使うんだ」

「まぁな。不本意ではあるんだがな。若い男に、自分達の使った金が流れてると知りゃあ。流石に、あの色ボケた馬鹿共でも呆れるだろ」


理子さん申し訳ない。

神奈川が誇る最強のホストを送り込んじゃいます。

勿論、詳細に関しては、前以てお知らせ致しますので……出来れば勘弁して下さいね。


それになによりですね。

理子さんも、ヤクザの妾の子供になんか成りたくないでしょ。

序に言えば、今の状況を放ったらかしにしたら【Fish-Queen】の皆さんや、理子さんの人気にも傷が付いちゃいますんで、どうか、平にご了承下さい。



「……それにしても倉津君。意外と、えげつない手を考えるんだね」

「いや、まぁ、本来、理子さんは、俺の大切な知り合いだから、スゲェ不本意ではあるんけどよぉ。実の母親が、娘の足を引っ張るのは、流石にマズイだろ。俺自身が嫌われるのは一向構わねぇけどな。奈緒さんの件があるから、そう言うの見てられないんだよな」

「そりゃあまた、お人好しだねぇ」

「まぁなぁ。頑張ってる理子さんが、これじゃあ、あまりにも報われないからな」

「ふぅ……なら、その実行は僕が移すよ。倉津君は、こんな事に関わるべきじゃない」


なんでぇ?

オマエが、そんな事を実行に移したら、オマエが理子さんに恨まれちまうじゃんかよ。


それ、ダメじゃん。

この場合、そう言うのも良くないんじゃね?



「アホか?」

「なっ、なんでだい?代役を引き受け様って言うのに」

「あのなぁ、康弘。理子さん同様に、オマエも、俺にとっちゃあ大切な仲間なの。それなのによぉ、仲間に、そんな汚い仕事の実行犯になんかさせられるかよ。馬鹿言ってんじゃねぇぞ」

「はっ、はぁ~~~?……じゃ、じゃあ倉津君はどうなるんだい?倉津君が、藤代さんに嫌われたら、元も子もないんじゃないのかい?」


そりゃあ嫌だけどよぉ。

こう言う場合の泥被り役は、俺の役割なの。


だってよぉ。

オマエは芸能界に出入りしてるんだから。

そんな真似して、TV局とかで理子さんとブッキングしたら、非常に気まずいだろうに。


その点、俺はだな。

何の知名度もない、ただのアホ・ミュージシャンだから、そう言う可能性は0。


だからよぉ。

効率的に考えても、俺が泥を被った方がリスクが少ないって話だな。


……解りるか?



「なぁ~に。そんなもんは、俺が理子さんとの付き合いを諦めなきゃ。その内、時間が解決してくれるってもんだ。大丈夫だよ大丈夫」

「いやいやいやいや、倉津君。それは余りにも、君1人だけがリスクを伴うんじゃないのかい?それは良くないよ」

「しゃあねぇだろ。オマエは、もぉ成人してるんだし、なにより芸能人。ややこしい事になったら、オマエ自身の地位も名誉も無くなっちまう。流石に、それだけは戴けねぇからな」


だから此処は、貸し1って事で勘弁して置いてやるよ。


まぁ、お互いのアホ親父の問題だから、別に、なにも返さなくても良いけどな。


見返りは無用だ。


但し、何かの拍子に俺が捕まったら、おはぎの中に、紙やすりを入れて少年院に持って来い。

その紙やすりで、鉄格子をゴシゴシ磨いてやれば……アッと言う間に、鉄格子が綺麗になるだけで……意味ねぇからな。


だが、それで模範囚にでも成れば、早く少年院から出れるかも知れんからな(笑)



「いやいや、倉津君。だったら、他の方向を考えよう。君だけがリスクを背負うのは、少し間違ってるからね」

「いや、悪ぃんだけどよぉ。俺、オマエと違って頭が悪いから、他の方法なんぞ、なんも思い付かねぇぞ」


俺はな。

常に、そういうロクでもねぇ事しか思い付けねぇ生き物なの。


早い話だな。

オマエと違って馬鹿なのですよ。


馬鹿なのです。



「あぁ……だったら、この際、それを『合成写真』でやったらどうだい?これだったら、一番被害が少ないと思うけど」


うわっ!!


……スゲェな康弘、その発想は無かったわ!!



「そうか、その手があったか!!……スゲェ。天才なんじゃねぇのオマエ?」

「いや……ただ単に、誰も傷付かない方向を考えただけなんだけどね」

「そっ、そうか。……だったらよぉ、それ関連で良い知り合いが居るから、その合成写真は任せておけ。本物真っ青な仕上がりになるからよぉ」

「それって……ひょっとして、モジャモジャの子かい?」

「あぁ、そのモジャモジャだな」


いやはや、まさか、自分達の手を汚さない、そんな素晴らしい手口があったとはな。


驚きだ。


康弘の親父は知らねぇけど、ウチの馬鹿親父は、パソコンなんてカラッキシだし。

もし万が一疑ったとしても『アホかオマエ?女が、そんな話を、馬鹿正直に言う訳ねぇだろ……馬鹿じゃねぇの?』って言えば、納得しそうだしな。


ウチの親父って、ヤクザの関連の話ならガンガンにイケル野郎だけど、残ってる部分は、ただの単純エロ馬鹿だから、ウチに関しては、かなり有効な手だな。


まぁ……多分、康弘の親父も、そんな感じがしてならねぇけどな。



「まぁ、取り敢えずは、それで当面の問題は解決しそうだな。大体にしてウチの馬鹿親父は、女に関しては、基本的に飽き性だからな」

「残念ながら、ウチもそうだよ。じゃなきゃ、こんな問題ばっかり起きないよね」

「ご愁傷様なこったな」

「お互いにね」


……だな。


……っで、此処で話が終わると思ったんだが。


康弘の奴な。

この後も、まだ続けて話をしてくるんだよな。


それにしても、これ以上なんの話があるんだ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


取り敢えず、倉津家と遠藤家の対立問題は『合成写真で両組長をだまくらかす』って方法で決定した様なのですが。

どうやら遠藤さんは、これ以外にも気になる話があるらしく、次回はその話題に移って行く様ですね。


果たして、どんな話が飛び出して来るのか?


そこを少しでも気にして頂けましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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