898 どれだけ眞子の言葉を信じられているのか?

 眞子視点では、驚きながらも話を納得して聞いてる様に見えた倉津君。

果たして、それは倉津君視点でも同じなのか?


***


「うん?なんだよ?その言い分じゃあ。オマエ、クリスマス以降の俺の行動で、なんか知ってる事があるのか?」

「あぁ、うん。かなり限定的ではあるけどね。多少なら知ってるよ」

「はぁ?そりゃあ、一体どういうこった?」

「私の知ってる真琴ちゃんの記憶は、クリスマスの次の日の事だけ。それだけなら知ってるよ」


クリスマスの次の日だけなぁ。

なんかその日って、非常に嫌な記憶しかねぇんだけどなぁ。


けどまぁ取り急ぎ、その概要だけでも聞いてみるか。



「おっ!!なんだよ?一体、その日に、俺の身になにがあったんだよ?」

「いや、そこまで直接的には、真琴ちゃんに、その日なにがあったかは知らないんだけど。その日、奈緒ネェに、私を紹介してくれたのって、他ならぬ真琴ちゃんだよ」

「はい?そう……なのか?」


ほぉ~~~、なにからなにまで山中の言った通りの話だな。


本当に、そんな真似をしたんだな……俺。


……して、その経緯に至るまでの、過程はどうなってるんだ?



「うん、私さぁ。……ほら、真琴ちゃんは憶えてないかも知れないけど、真琴ちゃんのお父さんの妾の子なのよ」


なんですとぉ!!

それは知らなかったぞ、オイ!!

まだ、そんなとんでもない設定がオマエには隠されてたんだな。


けどよぉ、それが事実だとしたら、あの糞親父の性欲は、どうなってやがんだよ!!

ロボトミー手術でも受けて、ちょっとは、その無駄なまでにある性欲を抑えて来い!!


あの糞親父だけは……マジで最悪だな。



「ブッ!!イキナリ、すげぇカミングアウトだな。……にしても、あのエロ糞親父だきゃあ。……すまんな、なんか」

「あぁいや。真琴ちゃんが謝る様な事じゃないし。今更そんな事は、もぉどうでも良いんだけどね」


更に、なんですとぉ!!

こう言う系統の話を『どうでも良い』ってオマエ……それ、スゲェ発想だな。

普通は、自分の不幸な出生を、もっと嘆いたりするもんで、簡単に、そうは割り切れねぇもんなんだけどな。


なんて精神の壊れた奴だ!!


それによぉ……



「いやいや、普通、良かねぇだろ。……つぅか、その話が正しかったら。オマエと、俺って、腹違いの兄弟な訳?」

「あぁうん。真琴ちゃんのお父さんに認知されて。事実だけを追求すれば、そう言う事になるね」

「……やっぱ、そうなるよな。しかしまぁ、そうなると、兄弟のオッパイが柔らかいとか言ってたんだな俺。……最悪だな」

「まぁまぁ。胸の件も含めて、それも別に、どうでも良いんだけどね。寧ろ、認知されずに、一生隠蔽したい方向なんで」

「オイオイ、ブッ飛んでるな、オマエ」

「そうかなぁ?」


コイツ、ポンコツだな!!


完全にイカレテやがる!!


……けど、まぁ考えようによっちゃあ、ウチの実家を考慮すりゃあ、解らなくもない意見だな。


そう思って然りだな。


後、気にしないんだったら……オッパイはゴチで。


……って、兄弟か。


……最低だな俺。



「……でもまぁ。そうは言っても。ワザワザ世間体の悪いヤクザの親なんかを持ちたがる様な奇特な奴は、この世の中にそうそうは居ねぇわな」

「まぁね」


ヤッパリ、そこか……


しかしよぉ、こうやって、この眞子とか言う女の話を聞いてると、俺も本家じゃなく、妾さんの子供だったら、こんなヤクザな人生を送らなくても済んだかも知れないんだよな。


決して、あまり良い事では無いが、ちょっとだけコイツの立場が羨ましかったりするな。



「……っで、結果的には、俺がオマエを、奈緒さんに紹介した経緯は、どうなってるんだ?」

「いや……経緯って言われても。真琴ちゃんが、今と全く同じ反応をして『俺に知り合いに、優しい人が居るから、そこにお世話になれよ』って言ってくれたんだよね」

「あぁ、確かに、オマエになら、俺も言いそうだな。……うん?ちょっと待て。つぅか、オマエ自分の家は?」

「あぁ、もぉ無いよ。私には、家族なんて居ないもん」


ブッ!!やっぱ居ねぇんだ。


けど、此処に来て、また記憶が重なったなぁ。


どういう事だ?



「なんでぇ?」

「いや、実は私、秋田出身なんだけどね。去年の11月に、私を育ててくれてた両親が、交通事故で死んじゃったのね。……でもね。こんな出生だから、頼る所が何所も無くて。最後の手段で、コッチに出て来たの。それでね。真琴ちゃんの家の周りでウロウロしてたら、真琴ちゃんが帰って来て、私に事を不信に思ったのか、直ぐに、私に声を掛けてくれてね。それでその後、親身になって話を聴いてくれて、奈緒ネェを紹介してくれたって話」


そうか、そうか!!

確かに、今の俺と記憶が重なってるにしても、当時に逢った時、こんな悲惨な話を聞かされたんじゃ、俺が奈緒さんを紹介するに値する案件ではあるな。


特に眞子は血縁って話な訳だしな。


なるほどなぁ。

26日に面識が有る以上、なんとなく合点が行った感じだな。


それにだ。

その話を聞いてたからこそ、頭の中に、その記憶が残って、おかしな記憶が俺の中に残留した。


そう考えれば、コチラも合点の行く話だな。


まぁ……成否はどうあれ、兎に角、話を続けよう。



「うおっ!!なんだそりゃあ?俺、超良い奴じゃね?」

「うんうん。あの行動には、ホントに感動したよ。まずして、話自体を信じて貰えるとは思ってなかったからね。本当にビックリしたよ」

「でも、その話自体は、本当なんだろ」

「うっ、うん」


オイ……人が折角、納得してるのに、なんで此処まで来て、そんな歯切れの悪い反応をするんだよ?


まぁけど……なにかしろ本人の口からは、言い難い事でもあんだろな。

だったら此処は、疑いが消えた以上、その言う部分での無理強いは良くねぇから、此処はもぉ、変に聞かないで置くとするか。



「なんだよ?なんか微妙な返事をしやがったな。……まぁ、今更、どうでも良いけどよぉ」

「良いんだ」

「いや、寧ろ、なにが問題なんだよ?オマエみたいな可愛い奴が兄弟だとか、超自慢じゃねぇかよ。バリバリ喜ばしい事じゃねぇか」

「いや、そんなに可愛くないし。……全然大した事ないよ。……寧ろブスだよブス」


はぁ?


またまた、このパターンの女が出現しやがったか。

真上さんや、椿さんと同類系だな、こりゃあ。


俗に言う、かなり面倒臭い系の奴なんだな。


つぅか、オマエぐらい面が良いなら、ステラぐらいの勢いで自信持てば良いのによぉ。


俺がオマエだったら、そんなセリフは絶対に吐かねぇけどな。



「オマエ、馬鹿じゃねぇの?ドンだけ贅沢にものを考えてやがんだよ。オマエ、滅茶苦茶可愛いって!!オッパイもデカイし。スタイルも抜群じゃん。自信持って良いぞ」

「あぁまぁ……そんなに大した事ないよ」

「オイオイ、オマエ、どこまで贅沢な女なんだよ。ブスに刺されるぞ」


えぇ~~っとなぁ。

今度、良い眼鏡か、コンタクトを買ってやるから、その後、自分の姿を、じっくり鏡で確認してくれ。


なんなら、俺もその時は付き合ってやるから(笑)

(↑その確認する眞子の姿を見たいだけな俺)



「贅沢かなぁ?実際は、そうでもないと思うよ」

「アホかオマエは?俺がオマエみたいに生まれてたら、自信に塗れた嫌な女に成るぐらい、自信過剰に成るぞ!!変な事を考えなくてもよぉ。それほどオマエは良い女だよ」


ちょっとキモイ話なんだけどな。

ほれ、今日に至るまでの妙な記憶があるって言っただろ。

だからもしよぉ、俺がコイツみたいな良い女に生まれてたら『人生薔薇色だっただろうな』って話なんだよな。


……にしても、なんとも言えねぇ様なキモイ話を、つい、してしまったもんだな。



「じゃあ、交換しよっか?真琴ちゃん……良かったら、女の子に成ってみる?」


悪乗りはせんで宜しい。


それにだな。

ガンダムをアムロが一番上手く扱えた様に、その体は、オマエが一番上手く扱えるの。


だから女の体なんて要らね!!

大体にして女の体じゃ、奈緒さんとH出来ねぇしな。


故に、断固として断る!!



「おい、オマエ……頭……大丈夫か?なんなら黄色い救急車を至急呼ぼうか?」

「あっ、それ、良いかもね。多分、私、頭おかしいんだよ。生きてる価値も無いぐらい、頭がおかしいんだよ」


オイオイ、真顔で、そんな事を言うなよな。

ちょっと変な奴ではあるけど『生きてる価値がねぇ』って事はねぇだろ。


そう言うマイナスの言葉を口に出して言うのは、あまり感心しねぇなぁ。



「待て待て。なんでオマエが、そこまで自分を卑下してるのかは知らねぇけどよぉ。オマエ、全然大丈夫だって。……俺みたいなボンクラでも、こうやってノウノウと生きてるんだからよぉ。オマエだって、生きてたって大丈夫だって」

「あぁ、うん。でも、それは違うよ。真琴ちゃんは、世界にとって大切な人間だよ。私なんかとは格が違うって」


はい?なに言ってんだオマエ?

量産型ヤクザの組長候補の、あっしが、世界にとって大切な人間とは、なんですかい?


なんのネタそれ?


んな訳ねぇだろう!!



「なんでぇ?なんでそうなんだよ?」

「だってさぁ。真琴ちゃんはさぁ。みんなに慕われてるしさぁ。誰もが真琴ちゃんの事を好きじゃない。嫌いなんて言う人、そんなに見た事ないよ。それに比べてさぁ、私なんて……」


慕われてる?


また聞きなれない、難しくも、珍奇な言葉を吐きやがったな。


つぅか?誰が?誰に?

それこそ生まれて15年間、丸っきり身に覚えがなく、記憶にもねぇ話だな。


大体にして、誰の話やねん、それ?



「いやいや、オマエさぁ……」

「ごめん!!もぉそんなのどうでも良いよ!!もっと、もっと、大切な事があるの!!」


オイオイオイオイ!!なんだよ、今度は?

イキナリなにかを思い出した様に、コタツに乗り出して話をしてきたぞ!!


顔が近ぇつぅの!!

そんな可愛い顔で、急に吐息が掛かりそうな間合いまで迫ってくんな!!


照れるわ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


お人好しと言うか、相手を信じたら疑わないと言うか。

眞子の事を気に入った倉津君は、矢張り、眞子の言動に疑いを持っていないようですね。


言うて、それが100%ではないにしろ90%ぐらいなら飲み込んでる感じです。


まぁまぁ、倉津君はそんな感じですので。

次回もこの調子で、倉津君と眞子の相違部分を見ていって頂けたら嬉しいです。


取り敢えず此処は、特に新展開がある訳じゃありませんのでね(笑)

(*'ω'*)b

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る