897 倉津君の持つ眞子の印象
クラスメイトの話を聞いて、眞子に興味を持った倉津君は奈緒さんの家に。
だが、そこで待ち構えていたのは、意外にも洗面所からすすり泣く女の子の声。
そして、その正体こそが眞子だった訳だが……その見覚えのある姿に『これって、俺じゃないの?』って疑問を持ち始める倉津君であった。
***
……っで、待つ事一時間。
その眞子らしき人物は、風呂に入って綺麗に身支度を整えてから部屋に入って来る。
その格好がまた……全身が上手くコーディネートされてて、コイツの潜在的な可愛さをアッサリと倍増させてやがる。
ホント、なんなんだコイツ?
俺が知ってる眞子以上の、恐ろしい様なハイ・スペックの発揮してやがるな。
じゃあ、ヤッパリ俺の勘違いか?
他人の空似って奴か?
「あっ……あの、真琴ちゃん。さっきは急に抱きついたりして、ごめんね。ビックリしたよね」
あぁ……色んな意味でビックリしては居るんだが、本当にコイツってば、俺じゃないよな。
「うん?……あぁ、俺は、別に良いけどよぉ。オマエの方こそ大丈夫なのか?なんかブツブツ言いながら、豪く泣いてたみたいだけどよぉ。ホント大丈夫か?」
けどなぁ。
まぁ相手は、なにかしろの理由があって、泣いていた女の子だ。
イキナリ、そんなおかしな話を聞く訳にもいくまいて……
「あぁ、うん。私は大丈夫なんだけど。真琴ちゃんの方こそ気分を害したんじゃない?」
「あぁ、いや。オマエが誰かは知らねぇけどよぉ。此処に居るって事は、奈緒さんの知り合いなんだろ。だったら別に、そこまでは気にしてねぇけどよぉ。……それによぉ。オマエって、オッパイでかくて、柔らかかったし」
……等と、余りフォローにもなっていない、率直で、素直な意見を口にしてみた。
考えた所で、どうせ俺なんかにゃマトモな事なんぞ言えねぇんだから、この程度の軽口でも大丈夫だろう。
それにだ。
もし仮にコイツが俺だった場合、こう言った意見にもなにも感じない筈だからな。
「あぁ、それってさぁ。なんて言って良いの?此処は『ありがとう』って言うべきなのかなぁ?」
「あぁ、悪ぃ。また余計な事を言っちまったな」
どっちとも取れる様な、微妙な態度と答えだな。
つぅか、これじゃあ、どっちつかず過ぎて、なにかと判断しづらいな。
「全然全然。堅い胸だなぁって言われるよりは、全然OKだよ」
「ははっ……なんだそりゃあ?オッパイ見られたって言うのに、変な女だなオマエ」
「ははっ……よく言われる」
ほぉ~~~~、けど、中々心の広い女だし、それに、やけに面白い発想をする奴だなぁ。
なんか聞いてたイメージの悪さが、なにも感じないぞ。
ひょっとしてよぉ。
クラスの奴等や、山中が言ってたみたいに、この眞子って女は本当に良い奴なのかも知れないな。
ふ~~~ん、世の中には、こんな奴も居るもんなんだな。
……けど、此処まで来たら、やっぱ、別人だよな。
俺は、人に良い奴だと思われる様なマトモな人間じゃねぇし、ヤッパリ空似だな。
だったら、もぉ疑うのは辞めにしよう。
このまま疑ってたら、いつか変な目で見ちまいそうだしな。
「ところでよぉ。オマエが奈緒さんの知り合いだって言うのは解ってるにしても。今更、こんな事を聞くのもなんなんだけどな。……オマエって、誰?」
「あぁっと、私は向井眞子。奈緒ネェの妹だね」
まぁ予備知識で山中から聞いていたとは言え、奈緒さんの妹って言うのは事実だったんだな。
だったらもぉ少し、このまま知らないフリを続けて探りを入れてみるか。
俺じゃない事は確実でも、この向井眞子って女に興味が湧いて来た事だしな。
「ブッ!!……って事はなにか?俺は、奈緒さんの妹のオッパイを見ちまったって訳か?」
「あぁ、まぁそう言う事になるかな?」
「いやいやいやいや、ちょっと待て!!ちょっと待て!!今、冷静に思ったんだが。奈緒さんに、妹は居なかった筈なんだが。……違ったか?」
「あぁっとね。本当の血縁じゃないよ。諸事情があって、私、向井家の養子にして貰ったんだけど。……って言うか。真琴ちゃん、ひょっとして私の事、本気で憶えてないの?」
「へっ?いや……マジで、誰?記憶にございませんが」
事実はどうあれ、山中の話し通りではあるな。
……って事は、なにか?
俺の親戚筋だったって話も事実なのか?
きっと、そんなオチだな。
「そうなんだ」
「いや、ホントに悪ィんだけどな。全然記憶に無いわ」
「そっか。いやまぁ、事情があるとは言え。奈緒ネェの妹って言うのは、本当なんだけどね。……ってか、真琴ちゃん」
「うん?なんだよ?」
「あのさぁ。それ以前に、真琴ちゃんの方こそ、今までどこに居たの?」
なんだ?質問をしようと思ってたのに、逆に質問が帰って来たな。
なら、別に隠し立てする必要もないし、素直に話してやるか。
「いや、それがな。先週ぐらいに、突然、目を覚ましたら。アメリカのな。マサチュ-セッツって所の、とある寂れた田舎の病院に居たんだよ。そんで、おかしな事に、目が覚めると1年近くの時間が過ぎてると言う浦島現象にあって、俺自身もビックリした訳だ。そんでその上、全くと言って良い程、その一年の記憶がねぇんだよな。……つぅかな。ハッキリ言っちまえば『なんだそれ』って感じなんだよな」
「そうなんだ。……っでもさぁ。一年前って言ったけど。いつから記憶が無いの?」
「いや、それがなぁ。そこも結構アヤフヤなもんなんだよな」
「……って言うと?」
「あぁ、まぁ、初対面の奈緒さんの妹に、こんな話をするのも変な話なんだけどな。去年のクリスマスに、此処に来てた事だけはハッキリ覚えてるんだけどな」
あぁ……なんか話し易い奴だな。
初対面なのに、昔から知ってる様な感覚になってくる。
なんだなんだ?
親戚なだけに……実は、相性が良かったりするのか?
……まぁ、それはそれで良いんだけどな。
寧ろ、好ましい事だ。
「じゃあ、その、奈緒ネェと過ごしたクリスマス以降の記憶は?」
「いや、それがよぉ。それ以降を思い出そうとすると、酷いノイズがかった事しか思い出せねぇんだよな。だから、あれなんじゃね。クリスマス以降は、もぉ深く考えない様にして、記憶が無いって方向で良いんじゃねぇかなって思う訳だ。……わかんねぇもんは、なにを聞かれても、わかんねぇしな」
「そっか。それじゃあ確かに、私の事を憶えてないのも頷けるかぁ」
おぉ!!
この言い方は、空白になってる記憶を、取り戻すチャンスなんじゃねぇのか!!
実はコイツ、俺がこうなった訳の1部でも、情報を持ってるんじゃねぇのか?
なら、膳は急げだ!!
早速、聞いたれ!!
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
眞子の視点では、普通にやり取りをしていた様に見えたのですが。
意外にも倉津君は、倉津君なりに色々眞子についての事を探っていたようですね。
まぁ、その出した答えが超適当なのも、倉津君らしいと言えば倉津君らしいんですがね(笑)
さてさて、そんな中。
此処からは眞子視点であった『倉津君の記憶の改竄』が成されて行く訳なのですが。
果たしてその改竄を、倉津君視点で見た場合、どう言った心境で聞いているのか?を、次回は書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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