895 全てが歓迎ムードとは限らない

 文化祭の準備に勤しむ学校にやって来た倉津君。

そこで大半のクラスメイトからは、歓迎ムードが溢れ返っていたのだが。

バンドの一件があるカジ&グチ君は……


***


「全くだ。冗談じゃないぞ、倉津。人を散々ヤル気にさせておいて『今更、帰って来ました』だけで済むとでも思ってるのか?些か、それは虫が良過ぎるんじゃないか?」

「すっ、すまん」

「なんだそりゃあ?クラっさん、本気で謝る気あんのかよ?」

「オイオイ、ちょっと待てやカジ!!マコのアホは意識不明のままで昏睡しとったんやぞ。そんなもん、どうやっても連絡の取り様なんかあれへんやんけな、どないやって連絡すんねん?」


いや、山中よ。

それは、実に有り難てぇフォローなんだがな。

今の俺に、そいつはイラネェわ。


これは、俺がテメェで撒いた種だ。

だから此処でのケジメは、自分自身で、キッチリ取らせて貰う。



「そうかぁ?例えそうであっても、先持って、誰かに行き先だけでも連絡してりゃ、此処まで大事にはならなかったんじゃないか?こんなもん、完全にクラッさんのミスなんじゃねぇの」

「だな。これは、明らかに倉津の人為的なミスだ。バンドの事なんかより、どれだけ心配をしたと思ってるんだ?……急に失踪なんかして、あんまり驚かせてくれるなよ」

「まったくグチの言う通りだぜ。何所をフラフラほっつき歩いてたんだかな」

「へっ?」

「……ったく、クラッさんだけはよぉ。どうしようもねぇな」

「オッ、オイ……まさか……」

「怒ってる訳ないだろ。よく帰って来たな、倉津」

「また前みたいに一緒に遊ぼうぜ、クラッさん」


がぁあぁ~~~。

滅茶苦茶怒ってるのかと思えば、俺に手を差し伸べて来てくれやがった!!


オマエらなぁ……なんちゅう嬉しいサプライズをしてくれんだよ!!


感動だな……オイ。

まさに感動だぞ、これは!!

余りの感動に、今泣きかけたぞ俺。


……ってかよぉ!!俺の周りに居る人間って、人間出来過ぎじゃね?



「こっ、こんな俺を、オマエ等も許してくれるのか?」

「当たり前だろ。許すもなにも、悪気が無かった以上、記憶喪失で、昏睡じゃどうにもならないからな。それに倉津には、以前に作った大きな借りが有る。ならこの程度の事、なにも気にする必要は無い」

「オマエ等……」

「まぁ、それになぁ、クラッさん。今の俺等のバンドには大きな目標があってな。その目標を果たす為には、クラッさんの力が、どうしても必要なんだよ」

「目標?なんだよそれ?」

「いやよぉ。どうしても、この学校内に『ギャフン』って言わしたい奴が居るんだよ」


うぇ……今までの話は、非常に良い感じの流れで進んでたんだがな。

此処に来て、非常にイヤな予感がする様な言葉しか聞こえなかったのは、何故なんだろうな?


なんだこの嫌な予感は?



「いや、あの、まさか……」

「いや、なにが『まさか』なのかは解らないが。実は、この学校にはな。向井眞子って言う女子が居るんだがな。どうしても彼女に、俺達の演奏を認めさせたい。その為にも、倉津の力が必要なんだ」


ぎゃあああぁ~~~、ヤッパリそう来やがったか!!

話の展開からして、そんなこったろうじゃないかとは思ったけど、マジでこの嫌な展開かよ!!


結局の所、これじゃあ、山中から聞いた超絶嫌味女の眞子とか言うに女に関わるしかねぇじゃねぇかよ!!


これが運命って奴ですかい?……俗に言うデェスティニーって奴ですかい!!


でも、現状が現状なだけに、絶対い断れねぇ!!


……マジで嫌過ぎる展開だな。



「眞子ちゃんかぁ……それは、かなり難易度が高い目標ですね」

「だろ。あの子は、ちょっと普通じゃないからな。ちょっとや、そっとじゃ、他人の演奏には満足しないもんな」

「まぁ、そやな。あの子を満足させれるのは、かなり限定された人間やからな。それこそ、崇秀や、奈緒ちゃんクラスの化け物やないと、話にもならんのちゃうか」


もぉ……ホントなんなんだよ、その頭の狂いきった様な女は?

誰か、なんとかしてくれねぇもんなのか?。

そんな崇秀クラスの化物なんぞを、マトモな精神で相手に出来るかよ!!


しかしまぁ、なんで、そんなややこしい奴ばっかりこの地域には集まって来るんだろうな?


馬鹿じゃねぇのか、神奈川県?

馬鹿じゃねぇのか、この学校?



「まっ、まぁ、微力ながら、お手伝いさせて頂きます。頑張らせて頂きます」

「期待してるぜ、クラッさん!!」


頑張りはするけど……期待はすなぁ~~~~~!!

昏睡明けの俺に対して、そんなおかしな期待を持つんじゃねぇつぅのな!!


そんなもん、どう考えても俺なんかじゃ無理じゃあ~~~~!!


***


 ……っとまぁ、そんな果てしなく聞きたくもない化物の嫌な話を淡々とされて、異常なまでにテンションダウンを喰らい。

そこで気が滅入りながらも、逆にみんなが、こうやって受け入れてくれた事には喜びつつ、明日から始まる文化祭の準備を、エッチラホッチラと必至に手伝って、夕方位まで私服のまま学校に居た。


とりま、まずはそんな化け物討伐の事より、文化祭の成功が先決だからな。


……まぁ、その合間を縫って。

学校にある公衆電話から、何気なしに実家に電話したら、奇跡的にも親父が出やがって、当然の事ながら、そこでこっぴどく親父には怒られたんだがな。

電話口で、あまりにゴチャゴチャとうるさいから、逆ギレして、そのまま電話を切ってやった。


大体にして俺が、家の事情なんか知るか!!知ったことか!!


うっせえわ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


結局の所は、カジ&グチ君も倉津君を心配していただけ。

だから今回の失踪については、実の親父さん以外は、誰も怒っていなかったようですね(笑)


だが、それだけで終わらないのが倉津君。

どうやらカジ&グチ君の目標である『眞子ギャフン計画』に参加する羽目になった模様です。


まぁ相手は特A級の化け物ですが、精々頑張って下さい。


さてさて、そんな中。

文化祭の手伝いを終えた倉津君は、そのまま実家に帰るのか?


次回は、その辺の倉津君の行動を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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