891 世間から見た眞子の評価①

 とうとう眞子の情報を、山中君から聞く時が来た倉津君。

果たして、眞子本人じゃない視点から見た場合、世間での彼女の評判はどの様にものに成っているのか?


***


「……っで、オマエが、そこまで言う程、どんだけスゲェ奴なんだよ?」

「まず、あの子の特筆すべきは、その恐ろしいまでの『度胸』や」

「はぁ?度胸だと?……なんだよそれ?それって俺みたいに、ステージに上がる事をなにも感じないって事か?」

「いいや。そんな生易しいもんやないで。あの子はなぁ。たった一回しかライブした事が無いクセに、イキナリ、横浜アリーナのステージに上がって、平然と演奏をする様な子なんや。……流石のオマエも、そこまでは出来へんやろ」

「ブッ!!なんだそりゃあ!!その女、頭のネジが吹き飛んでるんじゃねぇのか?」


なんて奴だ。


確かに俺もライブ大好き人間だから、やれと言われれば、幾らでもライブはする。

だが、それ等の大半は街にある普通のライブハウスでの事であって、ある程度、規模は限定される。

だから、流石に横浜アリーナのステージ上でパフォーマンスを繰り出す程の勇気も、根性も持ち合わせていない。


それを平然とやってのけるなんざ、それだけでも、狂ってるとしか言い様がねぇ女だな。


……って訳で、真面目に聞いてたんでは頭がおかしくなりそうなので、此処で一気に缶ビールを空にして、新しい缶を開ける。


やってらんねぇ。



「しかも、それだけやないんやで」

「なんだよ?まだ有るのかよ?」

「まだまだや。こんなもんは序の口。あの子の怖さは、こんなもんやないで」

「……っで、その女、なにをやらかしたんだよ?」

「えぇかマコ?あの子はなぁ。オマエが行方不明になってキャンセルした秀の企画、全米45箇所ツアーを、これまた平然と代行しよったんや。しかもなぁ。全米を震撼させる程の『伝説のライブを各州で作り上げる様な女』なんや。あの子の度胸や、センスは並大抵の物やないで」

「おいおい、マジでなんだよ、それ?その崇秀の女版みたいな頭のイカレタ女は?頭大丈夫かソイツ?」


有り得ねぇ……

たった二回しかライブをした事が無いって言うのに、全米45箇所ツアーに平然と参加だと?


そいつ、どんな壊れた精神してんだよ。

明らかに重度の病気だぞ……それ。



「まぁ、因みにやけどな。眞子ちゃんが、今年やったライブの数は、日米合わせたら優に150を超えとる。正に『狂った音楽の使徒』みたいな子やな」

「ひゃ……150だと!!ホントなんなんだよ、その馬鹿げた数値は?どうやりゃあ、そんな数値を叩きだせんだよ!!」


こんなもん、常識外れも良い所だ。

それに、そいつが在籍してるバンドの財力って、どんなだよ?


1つのライブをするだけでも、普通のバンドならヒィヒィ言う位スゲェ金掛かるの筈なのによぉ。

それを150って……

(↑HELPが多いので、詳しい金額までは良く知らない)


ソイツ、何から何まで狂ってやがるな。



「まぁ、これはオマケ話やけどな。全米ライブで、ライブ中に何回もぶっ倒れてたんやけどな。翌日にはケロッとした顔してライブハウスに現れて、そのまま、何事もなかった様にライブしとったらしいで」

「うわ~~~っ、なにその化物?……マジで、頭おかしいんじゃねぇの?」

「いや、この程度で化物や思われたら困るねん。あの子はホンマに想像を絶する化物やからな。こんなもんじゃあ、簡単には済めへんで」

「オイオイオイオイ、なんだよ?なんだよ?まだあんのかよぉ~~。……っで、今度はなにが化物なんだよ?」


どうなってんだよ、ソイツ?

頭のネジが吹き飛んでるんじゃなくて、最初から一本もねぇんじゃねぇのか?


ぶっ壊れ過ぎだろ!!



「いやなぁ。これはな、楽器を弾く奴の本質的な話やねんけどなぁ。眞子ちゃんの演奏はなぁ。ヒデの演奏同様、どこもかしこも普通やないねん」

「おいおい、勘弁してくれよ。まさか、あの馬鹿の演奏みたいに、脳髄に直接映像でも送りつけて来やがるとでも言うのか?」

「いや、そうやない。あの子の演奏は、どっちかと言うたらステラの演奏に似てるわ。人の音に『ブースト』を掛けて、相手の音楽レベルを強制的に上げて来よる。そやからやな。相手が、どんな下手糞でもあってもな。問答無用で、そいつの、その時点で持つ臨界点まで引き上げられてまうねん。それがライブを150以上こなしてる理由。何所のバンドからもHELPで引っ張りダコな訳や。……それとなぁ。あれなぁ。ヒデの映像を送り込まれる演奏より何倍もキツイぞ」

「うぇ……なんだそりゃあ?」


ステラの使ってる『ブースト系』かぁ。

けど、ステラの使ってる『ブースト』って技は、比較的、相手の演奏を気持ち良くさせるもんだから悪くないが、その眞子って女がやってる『ブースト』は、なんか『拷問臭』が嫌なぐらいにプンプン臭って来やがるな。


まさにドブの臭いみたいなもんだな。


しかしまぁ、その女、何から何まで、相当ヤナ感じだな……オイ。



「まぁ、今更言わんでもわかっとる思うけど。そのやり方を教えたんは、秀のアホやけどな」

「……だと思ったよ。そこだけは、なにも驚かないな」


大丈夫だ山中。

そこだけは、俺も確信を持っていた。

しかも100%の確信でな。


どうせ、そんなこったろうと思ったよ。



「そやかて問題なんはやな。あんなもん教えられたからって、早々に出来るもんやない言う事や。あの子の怖い所は、教えられた事を、ナンデモカンデモ、スポンジみたいに吸収する所や。それを証拠にな……」

「それを証拠に?……なんだよ?もぉいい加減聞くのが怖ぇな」

「あの子は、横浜アリーナで演奏した時は、まだオマエとドッコイドッコイの腕前やってんけどな。全米ツアーから帰って来たあの子は、俺以上に完璧なリズムを取れる様になってたし。秀と同じ様な、頭のおかしい演奏は出来る様になってたし。野獣の様なワイルドな音も出す。それにな、なんか癒しの音まで出しよんねん。もぉあの秀のアホンダラァ以外には手が付けられへん様な化物やで、ホンマ」

「なにソイツ?気持ち悪ぃ」


いやな、最初はだな。

その眞子とか言う女に対して、多少の僻み根性とかも有ったんだけどよぉ。

山中に詳しい話を聞いた今じゃあ、そんなもんも微塵も無いわ。


二の句が出ねぇ程の見事なまでの化物ップリだな。



「まぁ、音楽の話は、大体そんなもんやな」

「ちょっと待て。……なんだよ?その不穏な言葉は?」


おい、もぉマジで辞めてくれよ……まだなんか、この他にも続きがあるんかよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


まぁ……傍から見たら、眞子の活躍はそう見えちゃいますよね。

そこに崇秀の思惑があったにせよ、ぶっちゃけ、かなり無茶苦茶な事をしてますしね。


だから、こう言う評価に成ってもおかしくはないと思います。


っでまぁ、それを聞かされた倉津君は、かなりウンザリした様子を醸し出しているのですが。

この程度では終わる事もなく、まだ眞子の伝説には続きがありますからね。


そんな訳で次回は、この眞子伝説の続きを書いて行きたいと思いますので。

良かったら、それを聞いた倉津君が、どんな反応を示すか見にに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る