888 復帰後、やっと幸運が舞い降りた

 昏睡から目が覚めたまでは良かったが。

その間、約一年も昏睡していたらしく、世界情勢が変わり捲っていた。


その驚愕の事実に驚きを隠せない倉津君は帰国後、何処かで考えを纏めたいと考えていたら……


***


「おぉ、そこに居るのは山中じゃねぇか。久しぶりだな」

「はぁ?誰や?気安く話掛けやが……って!!ぶぅぅうぅ~~~、誰や思うたら、なんやマコやんけ!!どないしてんオマエ?今まで何所をホッツキ歩いとってん!!」

「いやよぉ。ちょっと思い当たる節があってな。長い長い自分探しの旅に出てたんだよ」


約1年も『異国の地で昏睡してた』じゃあ、余りにも格好が付かない理由だからなぁ。

まぁ言うなれば、まさに、これは無様の極みだ。

だから、ちょっとだけ格好良い事を言って誤魔化してみた訳だな。


自分探しの旅……これ、言い訳としては案外渋くね?



「うわっ!!キモッ!!出会い頭に、なに言うてんねんコイツ!!良かったら、拘束衣付けて黄色い救急車に乗るか?なんやったら直ぐでも呼んだんで」


・・・・・・



「誰がそんなもんに乗るかぁ、このボケ!!大体にしてオマエには、この成長した『NEW俺の姿』が目には写ってねぇのか?FIRST-GUNDAMがNEW-GAUNDAMに成るぐらいに匹敵する成長してるって言うのに、何所見てやがるんだ、この節穴野郎!!」

「ボケはオマエじゃ!!って言うか、なに訳わからん事ほざいとんねん!!オマエが成長したところ言うたら、その酷い天然ボケがバージョン・アップしたぐらいのもんじゃ!!旅の疲れで脳味噌まで熔けとんのか」

「やかましいわ!!この一目見ただけでも解る、凛々しい俺様の凄さが、オマエにはわからねぇのかよ!!どう見たって神々しいだろが!!」

「凛々しいやと?神々しいやと?……ほんだら、せめてゴルゴの眉毛でも描いてから出直して来んかい。それやったら、ちょっとぐらい凛々しさも認めたるわ」

「ククッ……だよな。今の俺には、ゴルゴの眉毛は必要不可欠だよな」

「そやろ。必須条件やで」

「「ププッ。あははっははっはっは……」」


1年経って、芸能界で爆発的な人気が出てるって言うのに、なにも変わんねぇ野郎だな。

普通なら、もうちょっと調子に乗って粋がった感じになるって言うのによ。


ホント、馬鹿は、いつまで経っても……馬鹿なんだな。


けど、久しぶりだってのに、こうやって接してくれんのは、ホント有り難いな。


実に悪くねぇ。



「……にしても。なんや、1年も消息不明やった割には相変わらずみたいやのぉ」

「まぁなぁ。人間、チョロチョロと1年位ホッツキ歩いた所で、なんも悟れやしねぇよ」

「まっ、そんなもんやな。ほんでからオマエ、結局の所、マジで何所行っててんな?」

「アメリカだよアメリカ」

「アメリカやと?つぅ事は、なんや?その期間、あの強烈極まりないアホの所にでも居候しとったんか?」

「いや、アイツとは、マジで1年近く逢ってねぇよ。なんせよぉ、俺、この1年の記憶が全くねぇんだからよ」

「はぁ?なんやそれ?それ、どう言うこっちゃ?」


俺が知りたいわ。



「さぁな。気が付きゃあ、一年間も病院のベットの上でグースカピースカ寝てたらしいから、俺が知る由もねぇつぅのな」

「なんや、よぉ解らん話やのぉ」

「いやよぉ。実は、本当の事を言うとな。アメリカのとある病院でよぉ。なんでか1年近くも昏睡してたらしいんだよな。ほんで、最近目を覚ましたから、そのまま日本に帰って来てみたって話だ」

「なんやオマエ、冗談やなしに、ホンマの記憶喪失なんか?」

「あぁ、そうだな。但し1年限定の記憶喪失だからよぉ。去年のクリスマスには、日本に居たのだけは明確に憶えてるんだけどな」


まぁ……本当の事を言えば、ちょっと違うんだがな。

なんかよぉ『女になった記憶』とか言う、なんとも言い難い奇妙な記憶がチラホラあんだけどよぉ。

現に俺が男で、こうやって、この馬鹿と喋ってんだから、そんな訳ねぇしよぉ。


第一そんな気持ちの悪い話をしたって、誰も信じねぇだろ。

だからよぉ、この話は俺の中で『きっと夢だったんだろう』って認識してんだよな。



「ほぉ~~~、なんや、ホンマよぉ解らん状態やのぉ」

「だろ。……まぁ、そんな訳だからよぉ。今晩、一晩だけでもオマエの家に泊めてくれよ」

「はぁ?ちょお待てや。なんで、急に、そんなド厚かましい話になるんや?」

「いやよぉ。流石に、このままじゃあ家に帰り辛いから、1日だけでも、どっかで落ち着きたい訳だ。まぁ予定としては、明日には家に帰る予定だから、今日1日だけ家に泊めてくれよ」


……って事だから。

オマエん家に泊めろ!!

飯を食わせろ!!

酒も飲ませろ!!

そして1年分のタバコもたらふく吸わせろ!!



「あぁ、そう言う事か。それやったら、断るわ」

「はぁ?」

「……さっさと家に帰って、滅茶苦茶怒られて来い」

「なんでやねん!!オマエ鬼か!!悪魔か!!俺のナイーブな気持ちが解らねぇ様な鬼畜生か!!」

「冗談やんけな。まぁ、ウチで良かったら、今日1日ぐらい泊めたるわ」

「マジかよ!!オマエ、神だな」

「おぉ、俺は神や。その代わり、どっかでビール買ってくれや。仕事後は、あれに限るからのぉ。頼むでスポンサー」

「ケッ……儲けてるくせに、セコイ鼻紙野郎だ」

「なんか言うたか?」

「いやいや、一泊の恩義として買わさせて頂きます」

「おっ、ほんだら、コンビニ寄ってサクッと帰ろか。今日はマコの帰還祝いやな」

「あっ……あぁ、そうだな」


帰還祝いをしてくれるのは良いんだがな。

なんで俺が、自分の帰還祝いに金を出さにゃあならんのだ?


これ、なんかおかしくねぇか?

ひょっとしてコイツ、そんな事も解らねぇ様なマジもんの馬鹿じゃねぇのか?


ホント、神は神でも、この鼻紙野郎だきゃあ!!

どっかの中学生にオナニーでもされて、精子塗れでゴミ箱に捨てられちまえ!!


このマスカス野郎がぁ!!


……って言いたい所だが、それでも、これはまだ幸運な事なのかも知れねぇな(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


山中君も、相変わらずの様ですね(笑)

そして此処で合再会する事により、劣等生兄弟が再び結成された訳なのですが。

この状況、倉津君にとっては有り難い状態。


なんと言っても山中君は、かなりの『情報通』ですからね。

この一年の間に、なにがあったか?を聞くには、これ以上最適な人間はいません。


さてさて、そんな中。

次回は、そんな山中君の家にお邪魔する訳なんですが。

そこでは一体、どの様な情報が倉津君に齎されるのか?

そして、それを聞いた倉津君は、どの様な反応をするのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る