886 これで取り敢えずは一安心

 倉津君の復活を自分の目で確かめて貰う為に、眞子が呼んだのは遠藤さん。

そして時を同じくして、飯綱ちゃんも帰って来て、少し間入り口で眞子についての話をした。


此処で眞子自身は、少し感じる所はあったのだが……


***


 ……とは、言ったものの。

まずは頂いた蟹の調理の仕込をするよりも、真琴ちゃんと遠藤さんの接見して貰う事が最優先事項。

故に、なにを置いても、一旦、遠藤さんを部屋に案内して、真琴ちゃんを目視して貰う事に。



「おぉ、誰が来たのかと思ったら、康弘じゃねぇか。久しぶりだな」

「あぁ、本当に倉津君だね。自分の目で確かめるまでは、少し疑って居たんだけど。この言い様、間違いなく倉津君だ」

「なにがだよ?」

「……って言うか。倉津君、1年間も何所に行ってたんだい?」


ヤッパリ、まずは、その話になるよね。

みんな、露骨には口に出さなかったけど、結構、真琴ちゃんの事を気には掛けてくれたんだね。



「いや、それがよぉ。サッパリわ~や~~なんだよな。何してたかなんて、全く憶えちゃ居ねぇ。唯一憶えてる事と言えば。去年、奈緒さんとクリスマスを一緒に過ごした位だ」

「そうなんだ……(矢張りか)」


なんか遠藤さんが微妙な顔してるなぁ。

その様子だと、矢張り、なにかに感付いてるのかなぁ?


けど、なにかに感付いたからと言っても、真琴ちゃん本人が、今、遠藤さんの眼の前に居る以上、どんな理屈も、ただの空論に成り下がってしまう。


多分、今の時点では問題は無いだろう。


でも、遠藤さんに対する警戒は、まだまだ継続する必要性がありそうだけどね。



「まぁまぁ。募る話も有ると思いますんで。私、先に食事を追加してきますね。……遠藤さんも、お鍋食べて行かれますよね」

「およばれに預かっても良いのかい?」

「あぁ、寧ろ、折角、持って来て頂いたんで、一緒に召し上がっていって下さい。みんなで食べた方が美味しいですから」

「そうかい。じゃあ、ご相伴に預からせて貰おうかな」

「はい。じゃあ私、早速、蟹を捌いて来ますんで、ごゆっくりどうぞ。飯綱ちゃんも手伝って貰って良いかな?」

「勿論えぇよ」


流石、気遣いが出来る女、飯綱ちゃん。

即座に、この場の空気を読んだみたいだ。


……こうして、飯綱ちゃんを引き連れて、再び台所に行き。

お土産に頂いた『タラバ蟹』を捌きに掛かった。


まだ生きてるから、お刺身でもイケそうな感じだなぁ。


***


 ……っで、鍋準備を終えて、部屋に戻ってみたら、少しだけ場の雰囲気が緊迫した雰囲気になっていた。

どうやら私と飯綱ちゃんが、生きた蟹と格闘しながら鍋の準備をしている間に、真琴ちゃんと遠藤さんの間にも、なんらかの進展があった様だ。


……っとは言っても。

別に殺伐とした雰囲気になってる訳じゃないから、基本的な面では問題は無い。


ただ表情からして、なにかしろ組系統の話で問題があった事だけは、間違いない。


どうしたもんだろうか?

ヤクザ関係の話だけに、変に首を突っ込む訳にも行かないけど、気にはなるなぁ。



「あの、お鍋が出来ましたよ。……あれ?なにかあったんですか?」

「あぁ、いや、なんもねぇよ。大した話じゃねぇ。心配には及ばねぇよ」


真琴ちゃんは嘘を言ってるね。


元自分の事だから、その辺の事だけはハッキリと解る。

あぁ言う物言いをしてる時は、必ずと言って良いほど、軽く動揺をしている証拠だからね。



「そう……なんだ」

「そうそう。一般人の子が関わる様な話じゃないからね。例え親戚であっても、首は突っ込めない方が良いよ」

「オイ、康弘。余計な事を言ってんじゃねぇぞ」

「あぁごめん、ごめん」


今、ワザと言った?

なにか私に、釘を刺して来た様な気がするんだけど。


なんだろ?

真琴ちゃんが、遠藤さんの目の前に存在しているって言うのに、なんでわざわざ、そんな言い方をする必要が有ったんだろう?


この人……なにか企んでる?


……でも、そんな私の心境を表情には出さない。

あくまで平静を装い、笑顔で対応する。



「あぁ、すみません。なんか、また無関係なのに、急に突っ込んだ話を聞いちゃって。ホントごめんなさい」


さて……この反応に、どう出る?

私は、遠藤さんにお寿司屋さんで言われた通り『話には関わらない』っと明言しましたよ。


だから、事と次第では『なにかを考えてる』と言う、答えを出す事になりますよ。


言葉には気をつけて下さいね。


私は、真琴ちゃんの様に純粋な人間じゃないから、知り合いや、仲間と言えども、誰彼、疑わない性格じゃないですよ。



「いやいや、親戚の事が気になるのは当たり前だよ。でも一般人が、首を突っ込まないのは正解だと思うよ」

「オイ、康弘。だから余計な事は言うなつぅの」


二回目の釘を刺して来た。


お陰で、これで少し確信が得れた。

何故かまでは解らないけど、遠藤さんは、この件に関して、私に関わって欲しくないって言ってる。


でも……なんだろう?

私が関わった所で、なにも変わらないと思うんだけどなぁ。


まぁ……気にはなるけど、此処は、一旦引く方のが良さそうだね。


引き際は感じだからね。


そこを見誤ってはいけない。



「真琴ちゃん、待って待って!!元を正せば。無関係で、なにも出来無いクセに、話に入ろうとした私が悪いの。だから此処は、一旦話を切ろ。……それに、ウチはカセットコンロが無いから、作って来たお鍋が冷めちゃうしね。暖かい間の方が、頂いた蟹も美味しいと思うよ」

「そやで。折角の貢物の蟹が美味しなくなんで」


そう言う事。


此処の話は、完全に断ち切って、一旦、食事を取って、場を和ませるのが先決。

食後、遠藤さんが帰った後に、それとなく真琴ちゃんから、聞き出す様にした方が賢明だしね。


……そんな訳なんで、持っていた鍋を、コタツの上に置いて、食事を開始する事にした。


みんな『私が』鍋をよそってあげるから一杯食べるんだよ♪



……こうして、私が、全員分の鍋をよそってる間に、飯綱ちゃんも同時に、ご飯をよそっていく。


そして、食事が始まった。


***


「ちょっと待ってぇやぁ!!なんでウチの蟹だけ、蟹カマが入ってのよ!!」


人の事をお地蔵さんみたいに言うから、そう言う悲惨な目に遭うんです。


自業自得です。



そこは悔い改めなさい。


***


【次回予告】


よぉ!!久しぶりだな、倉津真琴だ。


次回は、特別企画『この1年、俺の身になにがあったかスペシャルだ!!』


まぁ、そうやって、仰々しく言っては見たものの……大した事は、なんもねぇんだけどな。


……次回。


『Kuratu`s heart(1)』

「倉津の心境(1)」


……俺様復活へのプロローグ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>

これにて第一章・第四十九話【The man who came back(帰って来た男)】はお仕舞になるのですが、如何でしたでしょうか?


まぁ、物凄く中途半端な状態で終わってしまったのですが。

このまま眞子の視点だけで話を進めても、倉津君の今の心境が謎のまま。

それ故に、遠藤さんの来訪で一段落付いた所ので、此処で倉津君の視点に変えてみたいと思います。


当然、目覚めてからの経緯や心情も同時にお伝えしていきたいと思いますので。

良かったら、次回から始まる第五十話【Kuratu`s heart(1)】是非、ご堪能下さいです♪

(*'ω'*)b

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