885 来訪者と帰宅者

 倉津君との話をしながらも、突然の来訪者を迎えに行く眞子。

果たして、誰が訪れて来たのか?


***


「あっ、はい、どなたですか?」

「あぁ、突然の来訪で申し訳ない。さっき電話を頂いた遠藤なんだけど」

「あっ、遠藤さん。お待ちしていました。汚い所ですが、中にどうぞ」


『カチャ、カチャ……ガチャ』


扉越しに声を掛けた後、鍵と、チェ-ンを外して、遠藤さんを迎える為に扉を開いた。


そぉ、奈緒ネェ以外に、さっき私が電話した相手は遠藤康弘さん。

真琴ちゃんの存在を自分の目で確認して貰って、真菜の件を、より確実にする為に、さっき電話したのね。


まぁ、この行為自体……私自身は『自分が逃げる』っと言う卑怯な行為をしてる訳だから、少し『後ろめたい気持ちに成ってる』部分は有るんだけど、これは大事な事だと思うので、その辺の反省は後でしようと思う。



「いやいや、情緒の有る家の作りだから。この家は、決して汚くなんか無いよ」


あぁ……褒めて下さるのは良いんだけど、あまり、そこのフォローはして頂かなくても良いかな。

家屋自体は古くても、家自体は、いつも飯綱ちゃんと2人でピカピカに綺麗にしてますからね。


なので、ウチが綺麗なのは当たり前ですので。



「あぁ……ありがとうございます。それより、外は寒かったでしょうから、中の方にどうぞ」

「それは助かるね。お邪魔させて貰うよ。……あぁ、それとこれ、お土産ね」

「えっ?」


そう言って、遠藤さんが手渡してきたのは、発泡スチロールの箱に入った。


そして、その発泡スチロールの箱の横に書かれている文字は……『タラバガニ』


蟹だぁ……貧乏だから、久しぶりに、こう言う高級素材を見たよ。


蟹なんだぁ……なんて思ってた瞬間。



「ただいまぁ~~~、眞子。なぁなぁ、お腹ペコペコに空いたから、なんか作って……って、この人、誰なん?眞子の新しい男か?」


遠藤さんが靴を脱いで上がった瞬間、ほぼ同時に、飯綱ちゃんが何所からともなく帰ってきた。


その気配は0だった様に思える。

……のは、良いんだけど『新しい男』って、その言い草は、なに?

その言い草だと『何人も男を抱えてる女』みたいで、凄く世間体が悪くて嫌な感じなんだけど。



「あのねぇ。こちらはGUILD所属の遠藤さん。用事で来て貰ったの」

「あぁ、そうなんや。……うん?なに、その箱?蟹?」


話の途中だって言うのに、そこには直ぐ眼が行くんだ……でも、遠藤さんに挨拶もせず、そう言う欲に塗れた反応ばかりしてると、終いには『二代目欲豚』って呼ぶよ。


そして私は……言わずと知れた『二代目鬼ババァ』


嫌過ぎる、二代目コンビの結成だね。


……けどさぁ。

飯綱ちゃん、絶対、遠藤さんの事を知ってる筈だよね。

この子の情報網から考えても、知らないなんて、寧ろ、おかしいもんね。


だからきっと、私をからかってるだけなんだろうね。


だったらヤメなさいっての!!



「あぁっとね。今、遠藤さんに頂いたのよ」

「うわぁ~~~っ、また貢がせとる、この女。相変わらずの悪女やねぇ」

「……あのさぁ、飯綱ちゃん。そう言う人聞き悪い事を言わないでくれる。それとも、今日は、なんか機嫌悪いの?」

「全然、機嫌悪ないで。そやけどなぁ。眞子は『神戸牛』や『旅行チケット』とか『蟹』とかを、よぉ、みんなに貢いで貰ってるなぁって思っただけ。アンタの前世はお地蔵さんかなんかか?」


これは絶対になにか有ったな。

平静を装って話はしているけど、明らかに機嫌が悪そうだ。

ってか、神戸牛や蟹の話はまだしも『旅行チケット』については、飯綱ちゃんがエディさんに出させただけだから、特に私は関係なくない?



「あのねぇ……」

「まぁ、えぇわ。アンタ、遠藤さんやったっけ。汚い所やけど、ドンドン中に上がってや。寒いの嫌いやろ」

「えぇっと、お言葉に甘えさせて貰って、お邪魔はさせては貰うけど……向井さんって、そんなに、人に貢がせてるのかい?」

「そうなんよね。眞子は、誰彼構わず、天然で貢がせますからねぇ。この女、目茶目茶性悪ですよ」

「そうなんだ……」

「いや!!違いますよ!!あっ、あの、そりゃあ、貧乏ですから、御好意で何かを頂いたりする事は有りますけど。要求した事なんて一度たりとも無いですよ!!ホント、一回も無いですから!!」


なんだか、今日の飯綱ちゃんは意地が悪いなぁ。


そこまで意地が悪いって事は……生理でも来ちゃったのかな?



「ほらね。こうやって天然で貢がせてるでしょ。ホンマ怖い子ですよ、この子は」

「確かにね」

「あの……」

「まぁまぁ、こんな所で立ち話もなんなんで。この後の事は、ホンマ、中に入って、コタツで暖まりながら、ゆっくり話しましょ」

「じゃあ、今度こそ、本当にお邪魔するね」


やっと玄関口から進んだ。


そして飯綱ちゃんは……



「あぁ、そやそや眞子。折角、蟹貢いでもうてんから、今日は蟹鍋にしよ蟹鍋。蟹貢いでもうてんから」

「……まだ言うか、この女」


そんな事ばっかり言う子は『蟹の足の身を取り出して』『空になった蟹の足に蟹カマ入れて』そればっかりを、狙った様に、集中的に食べさせてあげるからね。


飯綱ちゃんだけ……本物の蟹なしね。


いつも蟹の替わりに食べてるだけに、美味しいよね……蟹カマ♪


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


今回のお話は、ほぼほぼ遠藤さんが来ただけの話になってしまったのですが。

その途中で飯綱ちゃんが帰って来て。

なにやらその飯綱ちゃんの言葉に、妙に納得している様な素振りを見せる遠藤さん。


果たして彼は、何を納得して、こんな反応をしているのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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