882 先の未来を悩んで凹む位なら

 まるで全く違和感がない様な雰囲気のまま、元自分である倉津君と喋り続ける眞子。

されど、そうやって話している内に、一番最初に解決すべき重要な事を想い出して……


***


「いやいや、オマエさぁ……」

「ごめん!!もぉ、そんなのどうでも良いよ!!もっと、もっと、大切な事があるの!!」

「はっ、はい??なっ、なっ、なっ、なんだよ急に?どうしたんだよ?」

「あっ、あのね、あのね。真琴ちゃん、聞いて、聞いて」

「だから、なんなんだよ?って近い近い!!」

「あのね。真琴ちゃんの妹の真菜ちゃんが大変なの!!真琴ちゃんが居なくなったから、倉津組の跡目が不在になっちゃって。このままじゃイケナイと思った真琴ちゃんのご両親が、真菜ちゃんと、遠藤さんの婚姻話を進めてるの!!早く何とかしなきゃ!!大変な事になっちゃうよ!!」

「なんですとぉ~~~!!」


だから、自分勝手な言い分だけど、私との話なんかより、先に自宅に電話を入れて下さいな。


お願いします!!

いち早く、真菜ちゃんを完全に助けてあげて!!



「……って、言いたい所だがな。それなら大丈夫だ。安心しろ」

「なっ、なんで?ヤバイって!!」

「だってよぉ。さっき、此処に来る前に親父に電話して、こっぴどく怒られた処だからな。そこは安心しろ。俺の生存は、既に実家じゃ確認されてる」


あぁそうなんだ。


はぁ~~~、良かったぁ……


でもなぁ、その分、この真琴ちゃんがイラナイ看板を背負って、これから一生苦労するんだよねぇ。


なんかなぁ……



「あぁ、そう……なんだ」

「オイオイ、急に慌しくなったり、凹んだり、ホント忙しい女だな」

「あぁ、うん。ごめんね、変な女で」

「ハハッ、いやいや、オマエって面白い女だな。良くも悪くも、実に女の子らしい。オマエみたいなタイプの女。初めて見たわ」

「だろうね。こんな情緒不安定な女、早々居ないもんね」


あぁ~~あっ。

なんかよく解らない変な女設定で、私への真琴ちゃんの認識は決定しちゃったよ。


まぁでも、私なんかには、それがお似合いですよ。


変な女で良いです。



「けどよぉ。オマエ、悪くねぇよ」

「なにが?なにが悪くないの?最悪じゃない?」

「どこがだよ?見た目は最高だし。一緒に居て楽しいしよ。だからよぉ、きっとオマエって、多少の破天荒な行動をしても、みんなに許されるんじゃね?」


ぐぇ!!キツイなぁ……

それも、この間、飯綱ちゃんに散々なまでに気付かされて、滅茶苦茶凹んだ所なんだよね。

こうやって天然で罪悪感を植えつけてくるなんて、地獄天使の『真上さん』みたいな言い分だね。


でもですね。

それに関しても、悪いのは全部私なので全て受け入れます。


その通りですよ。



「でもさぁ。そう言うの良くないよ。見た目が多少良くても、中身がこうも腐ってちゃ、人として意味なんてなにもないんだもん。特に私なんか腐りきって爛れてるだけだもん」

「なぁ、オマエさぁ。そんな事を言うなよ。確かに俺にはよぉ、オマエの記憶はねぇけど。オマエが、そんな悪い奴だとは到底思えなかったからこそ、奈緒さんに紹介したんだろうし。それに奈緒さん自身も、そんなオマエを気に入ったからこそ、両親に相談してまで養子に迎えてくれた筈だぞ。それをよぉ、あんま否定する様な意見は言うなよな」

「あぁ、うん。その辺は重々に承知してるんだけどね。私って、結構、卑怯な人間だからさぁ。知らないに内に、人を傷付けてたりするのよね。……それがね、もぉ凄く、自分でも嫌なのよ」

「それは、しょうがねぇんじゃねぇの。それって、オマエの持って生まれた『個性』みたいなもんなんだろ。だったら、それを全部ひっくるめて自分だと認識しろよ。俺は、オマエみたいな奴、嫌いじゃないぞ」


ふむ。

自業自得で凹んでるだけの私に対してさえ、そうやって次から次へと優しい言葉を掛けてくれるんだね。


これは、今の私にはもぉ到底無理な話だ。


やっぱり、もぉ100%別人格なんだね。


私は、こんなに卑怯なだけのに……



「じゃあさぁ。こんな私だけど……真琴ちゃんは、全部許してくれる?」

「許すも、なにも。別にオマエ、なにも悪い事してねぇじゃん。第一オマエは、オマエなんだろ。だったらオマエは、オマエとして生きりゃ良いんだよ。それに、なんの遠慮が要るんだよ。何かに恵まれてるなら、それを最大限に生かして生きる様にするべきなんじゃねぇのか」

「はぁ~~~、なんか、崇秀みたいな言い回しだね」

「うわぁ~~~っ、究極に嫌な野郎の名前を出してきやがったな。……うん?ってかよぉ。なんでオマエが、あの馬鹿王子の崇秀を知ってるんだ?」


あぁそうかぁ。

そこも疑問に思っちゃうか。


けど、そこは大丈夫。

嘘付かないって言った尻から、また嘘付くけど、ごめんね。



「うん?あぁ、それはね。実は、崇秀の事は、昔からよく知ってるんだよね。崇秀は、昔から、何所や彼処に、無作為に出没してたからね。ちょっと意味は違うかも知れないけど、ある意味、幼馴染って奴なのかなぁ」

「ふ~~ん。そりゃあまた地上最低の生き物と関わったもんだな。……なぁなぁ、オマエ。アイツ、直ぐに、自分勝手な無茶苦茶言うだろ」


うん。

いつも無茶苦茶言うし、誰もやりたくなくなる様な、無茶苦茶なスケジュールを組むね。


偶にだけど、本気で殺意を憶える事があるよ。



「まぁねぇ」

「おっ!!なんだよ、その言い方!!その言い分だと、オマエも、アイツの犠牲者なのか?なにされたんだよ?」

「えっ?あぁ、此処最近じゃあ。真琴ちゃんの代わりに行ってた全米45箇所ツアーが酷かったかなぁ。50日も行ってて、休みが5日しかなかったからね」

「ププッ!!……って、笑ってる場合じゃねぇな。俺の代わりに、そんな酷い目に有ってたのかよ。そりゃあまた、なんか悪い事したな」

「あぁ、全然全然。どっちかと言えば、寧ろ、面白かったから、全然OKだよ」


結果的には、色々苦労はしたけど、全部が全部楽しかったからね。


ある意味、夢の様な時間だったし。

今と成っては、寧ろあのツアーに行って良かったすら思ってる。



「そっか。……なぁなぁ、オマエ」

「あぁっと、真琴ちゃん。私の事は眞子で良いよ。オマエって呼び難そうだし」

「あぁ、そうか。じゃあ眞子よぉ。オマエ、やっぱ最高だわ」

「えっ?なにが?」

「いや、だってよぉ。あの馬鹿の組んだ極悪非道なライブをクリアーして、楽しかったって言えるなんて、大したタマだぞ」

「そぉかなぁ?本当に楽しかっただけなんだけどね」

「なら、尚更じゃねぇか。だから、俺が、眞子を良い女に認定してやるから、もぉ自分を卑下する真似なんかやめろよな。……多分だがな、俺とオマエは似てる。束縛されたら伸びないタイプだ。だから、もぉツマンネェ事なんか考えずに、自分をもっと好きになってやれよ。過去にあった事なんか全部忘れちまってよ」


そっか……


そうだよね……


今の私自身が『今の真琴ちゃんに全部投げて卑怯にも逃げた』って自分で思えるなら、せめて、そう言う思考に変換すべきだよね。

それで、これからズッと迷惑を掛けるであろう、この真琴ちゃんには、人生を、より沢山謳歌して貰える様に出来る限りフォローをするのが役目ってもの。


凹んで、足踏みを続けてるより、前を向いて歩き出す方が、私らしいか……


真琴ちゃんが、こうして、この世の中に存在してくれてる以上、もぉ私が、倉津真琴に成る必要性は無いからね。


なら、精一杯、この姿で、真琴ちゃんを楽しませながらも、向井眞子としての一生を、全うするのが筋ってもんだよね。


うん!!その方が頑張れそうだ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


今の倉津君に対する罪悪感から、色々悩んでいた様ですが。

結果的な話、そんな風に凹んだり悩んだりする時間があるなら、もっと今の倉津君に対して前向きに行動すべきですし、なにより、その方がお互いの為にも建設的なんですよね。


まぁ、自身が凹んでる時には、中々そう言う回答には行き付けないものなのですが。

それでも、割り切りと言うものは必要だと思います。


さてさて、そんな風にやっと前向きに行動を起こそうとし始めた眞子なのですが。

次回は、そんなこれからの眞子の行動を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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