881 嘘も方便
どこからともなく復活を果たした倉津君(笑)
その存在は、今の眞子にとっては救世主であった事は間違いないのですが。
今現在の問題が残るとすれば『どこまで、この倉津君に記憶が残っているか?』が重要な部分。
***
「いや、それがな。先週ぐらいに、突然、目を覚ましたらよぉ。アメリカのな。マサチュ-セッツって所の、とある寂れた田舎の病院に居たんだよ。そんで、おかしな事に、目が覚めると1年近くの時間が過ぎてると言う浦島現象にあってビックリした訳だ。しかもその上だな。全くと言って良い程、その一年の記憶がねぇんだよな。……つぅかな。ハッキリ言っちまえば『なんだ、それ?』って感じなんだよな」
あぁ~~~、なるほどねぇ。
どうやらこの言い様からして、崇秀の差し金で、真琴ちゃんをアメリカの病院で目覚めさせて『1年間、完全に昏睡してた』って設定にしてるあるみたいだね。
これで大体の状態は解ったけど、後、もぅちょっとだけ詳しい情報が欲しいかな。
「そうなんだ。……っでさぁ。一年前って言ったけど。いつから記憶が無いの?」
「いや、それもなぁ。そこも、結構アヤフヤなもんなんだよな」
「……って言うと?」
「あぁ、まぁ、初対面の奈緒さんの妹に、こんな話をするのも変な話なんだけどな。去年のクリスマスに、此処に来てた事だけはハッキリ覚えてるんだけどな」
そこは明確なんだ。
なら、後は、それ以降の記憶が、どうなってるかだね。
此処が一番重要な部分だ。
って言うのも。
記憶のデータを取ったのが1月の初旬だから、それまでの眞子の記憶が変に残ってる可能性を孕んでいる。
まだまだ、そんな風に予断を許さない状態は継続中だからね。
「じゃあ、その、奈緒ネェと過ごしたクリスマス以降の記憶は?」
「いや、それがよぉ。それ以降を思い出そうとすると、酷いノイズがかった感じでしか思い出せねぇんだよな。だから、あれなんじゃね?クリスマスからは、もぉ深く考えない様にして、記憶が無いって方向で良いんじゃねぇかなって思う訳だ。……わかんねぇもんは、なにを聞かれても、わかんねぇしな」
ブッ!!
なんと言う楽天的な性格……お気楽過ぎる。
……って言うか!!
私って、こんなに適当な事を考えてたんだ。
……病的な楽天性だね。
じゃあ、折角だから、その空白の時間を使って、ちょっとだけ私の記憶を追加させて貰お。
遠藤さんの不確定な件が有るだけに、今から、ちょっと必要な嘘付くけど……ごめんね。
「そっか。それじゃあ確かに、私の事を憶えてないのも頷けるかぁ」
「うん?なんだよ?その言い分じゃあ、オマエ、クリスマス以降の俺の行動で、なんか知ってる事があるのか?」
「あぁ、うん。かなり限定的ではあるんだけどね。多少の事なら知ってるよ」
「はぁ?そりゃあ、一体どういうこった?」
「私が知ってる真琴ちゃんの記憶は、クリスマスの次の日の事だけ。それだけなら知ってるよ」
「おっ!!なんだよ?一体、その日に、俺の身になにがあったんだよ?」
『女に成った』なんて事実は、口が裂けても言える訳ないよね。
その辺を此処で上手く話を構成しておかなきゃ、本当に後々に響きそうだし。
「いや、そこまで直接的にね。真琴ちゃんに、その日なにがあったかは知らないんだけど。その日、奈緒ネェに、私を紹介してくれたのって、他ならぬ真琴ちゃんだよ」
「はい?そう……なのか?」
ごめんなさい。
新しい記憶を作る為の嘘です。
だから、この際、そのお気楽な性格で、都合の良い様に思い込んじゃって下さいな。
「うん、私さぁ。……ほら、真琴ちゃんは憶えてないかも知れないけど。真琴ちゃんのお父さんの妾の子なのよ」
「ブッ!!イキナリすげぇカミングアウトだな。……にしても、あのエロ糞親父だきゃあ。……なんか迷惑かけて、すまんな」
「あぁ、いや。そこは真琴ちゃんが謝る様な事じゃないし。今更そんな事は、もぉどうでも良いんだけどね」
「いやいや、普通、良かねぇだろ。……つぅか、その話が正しかったら、オマエと、俺って、腹違いの兄弟な訳?」
「あぁ、うん。真琴ちゃんのお父さんに認知されて。事実だけを追求すれば。そう言う事になるね」
「……やっぱ、そうなるよな。しかしまぁ、そうなると、兄弟のオッパイが柔らかいとか言ってたんだな俺。……最悪だな」
うん。
それに関しては、色々な意味で最悪だと思うよ。
私のオッパイを見て喜ぶのは、真菜ちゃんのオッパイを見て喜んでるのと同じだからね。
なので早急に、私の存在を、そう言う認識にして貰えたら有り難いです。
けどね。
本当の事を言えば、正確には、兄弟には成らないんだけどね。
寧ろ、全く同じ遺伝子で構成されてるから……兄弟処か、モロ同じ。
なんてったって、同じ父親と、同じ母親の遺伝子工房で製作されたものだからね。
バリバリの『MADE IN KURATU』ですよ。
兄弟と言うよりも、性別が違うだけの同じ生き物っと言う認識が正しいです。
勿論……そんな事は、口が裂けても言えないけどね。
それにもぉ、此処まで人格が違い過ぎて別物だという認識なら、真琴ちゃんの言う『姉弟』って言うのも、強ち、間違った認識でもないんだろうしね。
「まぁまぁ。胸の件も含めて、それも別に、どうでも良いんだけどね。寧ろ、認知されずに、一生隠蔽したい方向なんで」
「オイオイ、ブッ飛んでるな、オマエ」
「そうかなぁ?」
「……でもまぁ、そうは言っても。ワザワザ、世間体の悪いヤクザの親なんかを持ちたがる様な奇特な奴は、世の中にそうそうは居ねぇわな」
「まぁね」
本当にごめんね。
要するにですね。
私がその因縁から逃れたいが為に、今の真琴ちゃんに全投げになってる訳ですよ。
本当にごめんなさい。
最低な悪魔女です。
「……っで、結果的には、俺がオマエを、奈緒さんに紹介した経緯は、どうなってるんだ?」
「いや……経緯って言われても。真琴ちゃんが、今と全く同じ反応をして『俺の知り合いに優しい人が居るから、オマエ、そこで世話になれよ』って言ってくれたんだよ」
「あぁ、確かに、オマエになら、俺もそう言いそうだな。……うん?ちょっと待て。つぅか、オマエ、自分の家は?」
「あぁ、もぉ無いよ。私には家族なんて居ないもん」
「なんでぇ?」
「いや、実は、私、秋田出身なんだけどね。去年の11月に、私を育ててくれてた両親が交通事故で亡くなっちゃってね。……でもね。こんな出生だから、頼る所が何所も無くて、最後の手段でコッチに出て来たのよ」
「ほぉほぉ」
「それでね。真琴ちゃんの家の周りでウロウロしてたら、真琴ちゃんが帰って来て。私の事を不信に思ったのか、直ぐに私に声を掛けてくれてね。それでその後、親身になって話を聴いてくれて、奈緒ネェを紹介してくれたって話」
これが最後の作り話だから許してね。
もぉ二度と真琴ちゃんには、嘘は付かないから……
「うおっ!!なんだそりゃ?俺、超良い奴じゃね?」
「うんうん。あの行動には、ホントに感動したよ。まずして、話自体を信じて貰えると思ってなかったからね。本当にビックリしたよ」
「でも、その話自体は、本当なんだろ」
嘘です。
全部嘘です。
ごめんなさい。
「うっ、うん」
「なんだよ?なんか微妙な返事をしやがったな。……まぁ、今更、どうでも良いけどよぉ」
「良いんだ」
「いや、寧ろ、なにが問題なんだよ?オマエみたいな可愛い奴が兄弟だとか、超自慢じゃねぇかよ。バリバリ喜ばしい事じゃねぇか」
「いや、そんなに可愛くないし。……全然大した事ないよ。……寧ろ、ブスだよブス」
ハァ~~~~。
さっきの情けなさが残ってて、なにも、自信が持てませ~~~ん。
なので私なんて、ブスで良いです。
しかも、自分に都合の良い嘘ばっかりつくので、性格もブスで良いです。
もぉ至上最低最悪の全部ブスですよ。
私なんて、見る所が何所も無い様なオールラウンド・ブスですよ。
そう思って貰えた方が、寧ろスッキリします。
「オマエ、馬鹿じゃねぇの?ドンだけ贅沢にものを考えてやがんだよ。オマエ、滅茶苦茶可愛いって!!オッパイもデカイし、スタイルも抜群じゃん。自信持って良いぞ」
「あぁまぁ……そんなに大した事ないよ」
「オイオイ、オマエ、どこまで贅沢な女なんだよ。そんな調子だと仕舞にはブスに刺されるぞ」
まぁねぇ。
そりゃあ、単体の女の子として見たらさぁ。
この体の構成は、全てが間違いなく『最強クラス』だとは思うよ。
でもね、どれだけ見た目が良くてもさぁ……私は元男ですから、その価値も半減ってもんですよ。
しかも、その性根が腐って爛れ落ちてますから、そこを考慮したら、なんとも言えないんですよ。
所詮は、私の存在なんて、そんな微妙な存在なんですよ微妙存在。
「贅沢かなぁ?実際は、そうでもないと思うよ」
「アホかオマエは?俺がオマエみたいに生まれてたら、自信に塗れた嫌な女に成るぐらい、自信過剰に成ってたと思うぞ!!だから、そんな変な事考えなくてもよぉ。それほどオマエは良い女だよ」
すみません。
今言われた通りの『自信過剰』で『自意識過剰』で、しかも『ナルシスト』なだけの嫌な女です。
世間に害を成すだけの役立たずです。
しかも、自分の事バッカリ考えて、妹の事を忘れる様なクズ人間ですよ。
とほほ……もぉ、死にたいですよ。
……ってか、考えが直撃過ぎるって……
「じゃあ、交換しよっか?真琴ちゃん……良かったら、女の子に成ってみる?」
「おい、オマエ……頭……大丈夫か?なんなら黄色い救急車を至急呼ぼうか?」
「あっ、それ、良いかもね。多分、私、頭おかしいんだよ。生きてる価値も無いぐらいに、頭がおかしいんだよ」
「待て待て。なんでオマエが、そこまで自分を卑下してるのかは知らねぇけどよぉ。オマエ、全然大丈夫だって。……俺みたいなボンクラでも、こうやってノウノウと生きてるんだからよぉ。オマエだって生きてたって大丈夫だって」
「あぁ、うん。でも、それは違うよ。真琴ちゃんは、世界にとって大切な人間だよ。私なんかとは格が違うって」
「なんでぇ?なんでそうなんだよ?」
「だってさぁ。真琴ちゃんはさぁ。みんなに慕われてるしさぁ。誰もが真琴ちゃんの事を好きじゃない。嫌いなんて言う人、そんなに見た事ないよ。それに比べてさぁ、私なんて……」
あぁそうだ!!
違う違う!!
こんなどうでもいい私の事なんかを話してる場合じゃなかったや!!
今一番、真琴ちゃんを必要としている存在は、真菜だった!!
『慕われる』で思い出したよ!!
だったら、私の話なんか、もぉどうでも良いよ!!
真菜の事、真菜の事!!
私……ホントなにやってるんだろ?
また、自分の事を優先しようとしちゃってるし……
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
お気楽だ……倉津君は、相変わらずお気楽ッぷり。
普通、記憶喪失なんかに成ってしまった場合、恐ろしいほど不安になるものなのですが「解んねぇもんは、解んねぇ」の一言で済ませてしまいましたね(笑)
まぁまぁ、そうは言っても。
本人は眞子の前だからこそ、そう言ってるだけかもしれませんし。
実際は、理由も解らずに記憶喪失に成ってる訳ですから、不安がない訳じゃないかも知れませんがね。
意外と繊細な面があったりしますしね(笑)
さてさて、そんな中。
眞子が、倉津君に新しい記憶を植え付けようとしてたのですが。
それよりも、今現在大事な問題である『真菜ちゃんの件』を思い出したらしく。
その辺りの確認を眞子が取って行く訳なのですが。
果たして真菜ちゃんの件は、この倉津君の帰還によって、どう言う影響が出るのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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