878 他人に不幸に陥れる悪魔の様な体

 眞子が知らぬ間に、倉津家の跡目問題が浮上してしまい。

妹の真菜ちゃんが遠藤さんと結婚をして組を統合する様な話が持ち上がっていた。

だが、それに関しては、遠藤さんが責任をもって対応してくれる約束をしてくれ。

取り敢えずは事なきを得れそうな雰囲気なのだが、その遠藤さん自身も、なにやら眞子に奇妙な疑惑を持っている様な様子が見受けられ……


***


 言い様の無い精神的な疲労を抱えたまま、今の私の自宅である奈緒ネェの家に戻り。

そこで飯綱ちゃんが、まだ帰っていないのを確認すると、部屋の真ん中で大の字になって寝転がった。


どうやら、さっきの遠藤さんとの会合で、なにも考えたくなくなる程の精神的なダメージを受けてしまった様だ。


……しかも、そんな中にあって。

真菜の件を遠藤さんが交渉に当たってくれる事を約束してくれたので、一応は保留には出来たものの。

現実的に見れば、これにしたって、いつまた、その話が再発するか解ったもんじゃない一時凌ぎな状態。


だから呑気に、こうもしてられないのも現実だ。


……でも、そうと解っていても、今現在の私の置かれている現状では、なにも出来無い。

まずにしてクローン話を持ち掛けてくれた崇秀が、現時点では、どうなってるのかさえ解らない状態なので、誰かから真琴ちゃんの情報を聞き出す事は難しい。


いや寧ろ、この件自体、崇秀が秘密裏に行っている事だろうから、どうやっても崇秀以外から聞き様がない。


そんな状態なので、今は、どこをどうとっても、どうにも動きが取り辛い状態だ。


どうしたものだろうか?

どうすれば、この真菜の件を一刻でも早く解決出来るのだろうか?


その部分だけの悩みは尽きる事が無く、温泉の間欠泉の様に湧き上がってくる。


***


 ……少しの時間が経過して、私は徐々にではあるが寝転がっていた体を起こした。


だからと言って、絶対に見付からない『真琴ちゃんの捜索』に出掛ける訳ではない。


まぁ、捉え方を変えれば。

遠藤さんの目をカモフラージュする為にも、必至になって街中を探すフリをするのも1つの方法ではあるんだけど、そこに余り意味を感じない。

そんな自分の保身よりも、今は真菜の案件の方が重要だからだ。


それに第一、偽装で探した所で、私が真琴ちゃんであった事実がある以上、誰が、どうやっても、彼を探し出すのは不可能だしね。


そんな私が、わざわざ体を起こした理由は、たった1つ。

少し心を落ち着かせる為に、風呂に入る事を考えていた。


体を温めてリラックスすれば、少しぐらい良いアイディアが出て来るかも知れない。


何故か、そう思えたからだ。


かなり強引な考え方ではあるんだけど。

いや、寧ろ……これは単なる現実逃避なだけなのかも知れない。

けど今は、そう言った無意味な行動をとるよりも、早期に自身の思考を固める為に、メンタル部分の回復に勤しむのが重要な事の様な気がしてならなかった。


何所にも逃げてる時間なんてないんだから。


……そんな訳で。

今朝、学校に行く前に入浴して行って温くなったお湯を、もう1度、お湯に沸かしかえす為に、風呂のスィッチを押してから、脱衣所で俯いて座り込んでいる。


これは、風呂の温度が上がるまで、出来る限りの思考を巡らそうとしての行動。


でも、その結果は……さっき部屋に居た状態と同じく、今現在、全く不必要で無駄な思考の渦に嵌ってしまい。

完全に解答が無い迷宮に彷徨い、迷い込んで、まるっきりそこから抜け出せないでいた。


出て来る疑問は……『大体にして私は、一体なんなんだろうか?』

そんな無意味な疑問ばかりだ。


この問題に対し、冷静に対処した場合。

この体や性別は、私にとっては幸福な物でしかないけど、私が幸福になった分、沢山の人が不幸になってる。

私以外の人間にしたら、ほとほと迷惑しか掛けない、とんでもない邪悪な体だ。


これを証明するに……

さっきの真菜の件も然りで、これ自体が、私の自分勝手な行動が招いた結果。

奈緒ネェの件に関しても然りで、彼女には散々嫌な想いをさせた上に、これも自分勝手に別れた。

素直ちゃんや、ステラさんも、私じゃなくて真琴ちゃんを必要としていたのに、私は自分の幸せの為にのみ、それからも逃げた。

カジ君や、グチ君だって、折角、バンドを始めてくれたって言うのに、これも自分の為だけに破棄した。


本当に私は最低な女だ。


それになにより、一番可哀想なのは崇秀だ。

普通で考えても『元男』の私なんかとは絶対に付き合いたくもない筈なのに、アイツは嫌な顔1つせず……それを受諾してくれた。

しかも、その元男が幼馴染だったら、尚更、お互いをよく知り尽くしてるだけに余計に嫌な筈なのにだ。


なのに……私は。

そんな崇秀の気持ちも考えずに『この体は、崇秀の物だ』等と一人で浮かれながら馬鹿げた事を考え、彼に必要に迫った。

誰が、どこをどう考えても、こんな元男の体なんか、誰もイラナイのにね。

自分が崇秀の立場だったら、どう考えるかぐらい、少し考えれば解る事なのにね。


一体、私は……なにを考えて、こんな馬鹿げた事を言って浮かれてたんだろ?


正気の沙汰じゃないよね。


これ等の私の行動の全てが、人の事なんか、なにも考えて無いだけの身勝手な振る舞いに過ぎず、独り善がりに自分の好き勝手に振舞っているだけ。


『本当に、私ってなんなんだろう?』

知り合いをドンドン不幸にしていく悪魔みたいな女だ。


これならまだ、ヤクザの息子なりに人の輪を必死に構築しようとしていた真琴ちゃんの方が、人としてセーフな領域。


どう考えても私の方が、真琴ちゃんより人間のクズだ。


私は、本当に真琴ちゃんだったんだろうか?


そんな疑問すら湧いてくる。



もぉ、自分が何者なのかさえ……解らなくなってきた。


私は、一体、こんな体に成ってしまった後、どう対応すれば良かったのだろうか?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


眞子が今までに与えてきた影響。

それは勿論、今、眞子が言った様な悪いものもあったのですが。

当然、彼女自身が、それに見合う程の良い影響を与えて来たのも事実。


ですが、人は落ち込んでしまった時、どうしても自分を卑下してしまう傾向があるので、此処が完全に見えなくなってしまっていますね。


まぁなので、此処で眞子がメンタル的に立ち直れないのは仕方がない事なのですが。

どうにもこの一件では、必要以上に負の感情に支配されてしまっている状態なので、あらぬ方向にまで行かなきゃ良いんですけどね。


さてさて、そんな中。

例えそう言う状態であっても、何処かで立ち直らなければならないのも事実。

今後、こんな状態のまま過ごしていた所で『何の意味もありません』からね。


ならば、どう言う行動をとるべきなのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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