875 遠藤さんが眞子に提示してきた問題

 校内は明日の文化祭に向かって盛り上がっているのだが。

クラス一致で、今年は出し物をしないと決めた3-Cの眞子は、そんな騒ぎを尻目に下校する。


ただ、下校すると言っても、少し遠藤さんが眞子に用事があるらしく……


***


『キィイィイィ~~~』

っと、此処でも以前と同様の嫌な音を立てて、扉が開く。


中に入って部屋の中を見回してみると、遠藤さんと見知らぬ男性が椅子に座って、既に私の到着を待っていた。

この見ず知らず男性については、顔の厳つさからして、見るからにアッチ系の人。


しかも、かなりの年配だ。



「こんにちわ。お待たせしました」

「あぁ、向井さん。ワザワザご足労頂いて、ありがとうございます」


私が部屋に入って来たのを確認したら、遠藤さんは直ぐに椅子から立ち上がり、挨拶をしてくれる。


いつもながら丁寧な対応をしてくれる人だなぁ。


そう思うと、遠藤さんってさぁ。

なんでヤクザの組長の息子なんかに生まれちゃったんだろうね?


普通にしてたら、超好青年なのにね。


ホント、勿体無い人材ですよ。



「あぁ、いえいえ、とんでもないです。私の方こそ、初対面の時から色々お世話になっちゃって。あの時は、本当に助かりました。ありがとうございました」

「あぁ、いやいや。あの後、ちゃんと、お礼もして頂きましたから、そこは問題無いですよ」


そりゃあまぁね。

ヤクザの人を相手に、下手に礼儀を欠かす様な真似はしちゃイケナイませんからね。

それ故に、アメリカから帰って来たその足で、ちゃんとお礼をしには行きましたよ。


その辺はヤクザ云々を抜いたとしても、人として常識の範疇ですしね。


でも……この女の身だと、遠藤組の敷居は異常なまでに高かった。

あそこに単独で入って行くのは、今でも怖いと思っております。



「すみません。そう言って頂けたら有り難いです」

「ハハッ、相変わらず向井さんは、折り目の正しい子だね」

「そんなそんな。まだまだ無作法者ですよ」

「そんな事ないよ。十分に折り目正しいよ」

「そうですかね?……あの、それはそうとですね。今日は、どう言ったご用件でしょうか?なにか私に『何か聞きたい事がある』との事なんですが……」

「あぁ、そうだね。こうやって無駄話も楽しいけど、本題を先に済ませなきゃね」

「あっ、はい」


そう言って、私が話を聞く体制をとろうと思った矢先。

遠藤さんは、御付きの厳つい顔の男性に、なにかを言い始めた。



「西田さん。悪いんだけど、昼食を摂れる場所を確保して貰える?」


あれ?


食事って、なんの話?



「あぁ、はい。康弘さん、どちらにしますかい?」


あぁ!!この厳つい人。

嶋田さんの家で、遠藤さんの家に電話した時(序章25話参照)最初に出た『~ですかいの人』だ!!


この人が、噂の玄さんと同じ言葉を話す『~ですかいさん』だったんだ!!


なるほどねぇ。

道理で玄さんと年代が似てる訳だ。


そう言えば……玄さん元気かなぁ?

1年近く逢ってないと、なんか、妙に懐かしく感じるなぁ。



「えぇっとねぇ。そうだなぁ。……向井さんは、好き嫌いはある?」

「あぁ、いえ、これと言っては無いですけど。どこかに行かれるんですか?」

「あぁ、いや、実は僕ね。まだ昼食を摂ってなかったもんでね。行き付けの寿司屋にでも行って、良かったら、話がてら『食事でもどうかな』って思ってね」

「いやいや、そんなそんな。以前にもお世話になってるのに、お話をする位なら、何所でもお聞きしますよ」


話を聞くだけなのに、お寿司って……


お昼過ぎに呼び出したからって、そんなに気を使って貰わなくても……


私なんて、吉野家の牛丼で十分ですよ。

贅沢言うなら、MacのマックシェイクでOKですよOK。


昼食、もぉ食べたんで……



「そぉ。じゃあ、何所でも良いなら、そこで話をさせて貰うよ。申し訳ないけど、少し付き合って貰って良いかな?」

「あぁ、はい。それは構わないんですけど。……でも、良いんですか?私、廻ってるお寿司しか食べた事が無い様な女ですよ。それに制服のままですけど、その辺も大丈夫ですか?遠藤さんに恥を掻かせたりしませんかね?」

「うん、大丈夫。誰も文句を言う人なんて居ないよ。心配しなくて大丈夫」

「あぁ、でも……」


流石にねぇ。

話を聞くだけで、お寿司頂く訳にも……


・・・・・・


いや、ちょっと待てよ。

ワザワザ此処を待ち合わせの場所に指定したのに、こうやって敢えて場所を変えるって事は、この話って、人に聞かれちゃ不味い話をするんじゃないの?


……っとなると。

これって、ひょっとして、真琴ちゃん絡み……倉津組の組関連の話じゃないのかな?

しかも、私が真琴ちゃんの親戚だと言う事を遠藤さんは知っている訳だから、有り得なくもない話だし、それだと辻褄も合う。


っと成ると、お寿司屋さんに行くのは特に問題はないけど、此処は少し探りを入れた方が良さそうな感じだね。



「まぁ、僕がお腹が空いてるだけだから、出来れば向井さんにも、お付き合い願いたんだけど」

「あの~~~、遠藤さん。不躾な質問で申し訳ないんですけど。倉津組と、何か有りましたか?」

「おや、鋭いねぇ。……まぁまぁ、そうは言っても、向井さんに、直接、害のある様な話じゃないんだ。ウチと、倉津さんの所の問題なんでね」

「あっ、あの……それって、真琴ちゃん関連ですか?」

「まぁね。けど、これ以上は、此処で話す様な内容じゃないんで。取り敢えずは、まずは場所を変えて、店に移動させて貰って良いかな?」

「あぁ、はい。そう言う事情なら、お付き合いさせて頂きます」


しまったなぁ。


去年から色々な事があり過ぎたのと、その状況の中で、あまりにも自分が幸せな人生を送っていたから、実家の事は完全にノーチェックだった。


勿論『この体じゃあ干渉出来無い』って部分も含めての話だけどね。


でも……本心で言えば、もぉ一生、倉津の姓とは関わらないつもりで居たんだけど。

こう言う微妙な話を、別の組の遠藤さんから齎されると、気持ち的には、どうにも気になって仕方がない。


これは、どうしたもんかなぁ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


倉津家の長男である倉津君が不在になって、一番の問題点と言えば……当然「あれ」しかないんですが。

それを普通に問題視しても、特に今の眞子が大事に感じる部分が少ないと思いますので、次回では『少々意外な形での問題定義』をしたいと思います。


これに関しては、例え今の眞子であって大ダメージが行く筈ですからね。

いや寧ろ、今の眞子だからこそ、予想以上の大ダメージを受ける事になると思います。


それがどう言う事なのか、気にして頂けましたら。

次回もまた遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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