第11話

「康介、農繁期のときに家を手伝わないといけないからってまとめて有給を取ってること知らないでしょ?五月に三日、九月と十月にそれぞれ三日ずつ。全部、アタシと過ごしていたんだよ。朝から晩までずっと一緒。康介の母親と姉が奥さんを召し使いのようにこき使っているとき、アタシは康介の母親からお小遣いをもらい、毎日康介と堂々と子作りエッチをしていたの」

「そんな下らない自慢話をするためにわざわざ来たのか?」

「な訳ないでしょ。みみりんとはそんなに仲がいいって訳じゃないけど、先月の四月六日あたりかな?平日の真っ昼間から康介とみみりんが腕組んでラブホに入っていくのを見掛けてね。康介を問い詰めたらみみりんとも付き合っているとあっさりと認めたわ」

四月六日は一華の始業式の日だ。

康介は午前中だけ仕事をしてくると言って出勤し、帰宅したのは夜九時過ぎだった。一華の好きなドラマがはじまったときに帰ってきたから覚えていた。

「今月の連休明け。奥さんが梨の摘果と田植えでこき使われているとき、康介は三日有給で休みでね、アタシ、康介に赤ちゃんが出来たことを伝えるつもりでいた。康介とこの子と三人で過ごせると思った。でも康介はみみりんを選んだ。別れよう。みみりんに子どもが出来た。アタシはあっさり捨てられた。一年持ったからまだいいほうかな?」

ルーナさんのお腹にも康介の子どもがいると知りショックを受けた。

「康介はきみが妊娠していることを知ってるのか?」

「知ってる。でも、みみりんが康介にアタシがほかの男とも付き合っている。誰とでも寝る尻軽女だとありもしない嘘を吹きこんで、みみりんにぞっこん惚れてる康介はその嘘を信じてしまった。みみりんのほうが尻軽女だっていうの。本当、馬鹿な男。世間知らずのお坊ちゃんよ。サイテーのマザコンよ。康介の母親と姉も手のひらを返したように裏切った。三十歳のアタシより、若くて可愛い子なら、これからもたくさん子どもを産む、自分たちの言うなりになるとでもおもったんじゃないの?康介に子どもをおろせって言われたの。積み立ての建物共済が今月満期になり200万円入る。半分やるから別れてくれって。冗談じゃないわよ」

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