第12話

「呆れてものがいえない」

「別れるならDNA検査をしてから別れてくれと康介に頼んだ。奥さんは浮気していたみたいだけど、この子は正真正銘康介の子よ。康介もアタシも五体満足なんだもの。奥さんの子どもみたく、この子は障がいをもって産まれてこないわ」

「あの~~一言だけいいかな?一華ちゃんが軽度の発達障がいなのも、左利きなのもまゆのせいじゃない。個性だ。よってたかって全員でまゆの浮気を疑って。江戸時代から続く由緒正しい名家、箭内家には今まで一人も発達障がいの子どもはいない。だから一華を私たちの孫とは認めない。小6にもなって読み書きがちゃんと出来ないなんて母親の教育が悪い。康介はなんでこんな嫁をもらったのか。箭内家の恥さらしだ。きみもまゆを侮辱するのか?」

「一志兄さんもういいよ」

箭内家は女系家族だ。お義父さんもお婿さんだ。

普段は物静かで大人しいお義父さんだけど、お酒が入ると人が変わる。康介もそうだ。

「その話し、悪いけど全部録音させてもらったわ」

真っ赤なスーツを着た背の高い女性が颯爽と現れたからびっくりした。

「箭内まゆさんはじめまして。雫石ミサトです」

「雫石って、まさか……」

ルーナさんの表情が変わった。

「私は被害者だよ。慰謝料はもらうほうだよ。絶対に払わないからね」

慌てて立ち上がるとまるで逃げるように病室を出て行ってしまった。

「まだ何も言ってないのに、気の短い人ね」

「あ、あの……」

「話しは聞いてる。早速だけどお兄さん出番よ」

「まゆは何者かに命を狙われいます。一人には出来ません」

「それは大丈夫」

ミサトさんの背後から大輝さんが姿を現したから二度びっくりした。

「久し振り……だね」

大輝さんがびくびくしながらあたりを見回した。

「真美さんは私が事故に遭ったこと知りません」

「なら大丈夫だね。良かった」

ほっとし胸を撫で下ろす大輝さん。

「大輝さんあとは頼みましたよ」

ミサトさんが一志兄さんと一緒に自宅へと向かった。

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