第6話
面会時間は九時まで。南先輩が携帯の充電器と私の着替えを持ってきてくれた。
「えっと……泣き黒子がついているから一志さん?」
「そうです。正解です」
「良かった。間違ったらどうしようかと思ったわ。私は玄関の前で待っていた。一歩も家には入ってない。一華ちゃん、しっかりしてるわね。自分の着替えとママの着替えがどこにあるかちゃんと分かっているんだもの。見直しちゃった」
「南原さん、姪がお世話になります」
「いいのよ。うちの美咲だってしょっしゅうまゆの家に泊まりに行っているんだもの。まゆ、一志さんにならあのことを話してもいいよね?」
「はい」
一志兄さんに探偵の雫石ミサトさんに康介の浮気調査を依頼したことを話した。
「ミサトは明日ここに来るわ。娘と同じ名前だからややこしいんだけど。まゆと一華ちゃんが自宅にいないことをいいことに康介は浮気相手と子どもを家に招き入れるはず。隠しカメラを寝室に設置して動かぬ証拠を掴みたいの」
「妹に頼まれたということで私が家事代行の雫石さんと雫石さんの助手を妹の家に連れて行けばいいですね。分かりました」
「一志兄さん、巻き込んでしまってしまってごめんなさい」
「何を言ってるんだ。俺は康介と康介の親に言いたいことが山のようにある。農家の長男の癖に家業は一切手伝わず、まゆにばかり手伝いを押し付けて。康介の親も親だ。息子可愛いで、嫁いびりをして。嫁は手伝うのが当然。タダ働きで朝から晩までこき使って。昭和かっていうの。今は令和だぞ。本当に腹が立つ」
一志兄さんが私のために怒ってくれる。それが嬉しかった。
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