第5話
「康介は?この緊急事態になんでいないんだ」
「それが……」
南先輩にも話したように、兄たちにも今日何があったか包み隠さず話した。
「南原さんのところに一華がいるなら安心だ
それにしても康介の野郎、一度ならず二度も……」
「前もあったのによくまぁ懲りない男だ」
電話はずっと繋がらないまま。まだ家に着いてないのか電話も寄越さない。充電がそろそろなくなる。
「充電器持ってこようか?」
「南先輩に頼んだ。一華なら充電器がある場所も、私の着替えと自分の着替えがどこにあるか分かるから。一華はお母さん疲れているでしょ、そう言って私が頼まなくてもいつも家事を手伝ってくれる。でも康介は帰宅すると真っ直ぐ自分の部屋に向かってしばらく出てこない。休日なんか一華のことはほったらかしで一日中部屋にこもっている。康介は私の前ではいつも不機嫌そうにしている。ご飯を食べても後片付けや茶碗を洗ってはくれない。飯はまだか?風呂はまだか?って怒るくせに自分ではなに一つやろうともしない。農繁期のときは手伝わないといけないし、洗濯や、給食のエプロンと白衣のアイロン掛けをしたり、掃除したりと朝から晩まで忙しいのに。ごめん。愚痴なんて聞きたくないよね」
「愚痴くらい幾らでも聞いてやる。仁志、お前は帰れ」
「は?なんで?」
「瑠花さんが待っているからだ。帰りが遅いとまたネチネチ言われるぞ。俺は独身だ。アパートに帰っても一人だ」
瑠花さんは市立病院に勤務する准看護師だ。仁志兄さんより六歳年下。経済的な理由から両親と同居している。実家に行っても二階からおりてこないし挨拶もしてくれない。仁志兄さんには悪いけど性格がちょっとキツいから苦手なタイプだ。
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