第4話

女性の正体はすぐにわかった。

南先輩が一華と美咲ちゃんに、この人、どこかで見たことあるのよね。写真を見せると、

「大食い系ユーチューバーのみみりんだよ。髪の色が違うけど、猫のピアスが同じだよ」

「みみりん?」

「そう。お父さんが同じ推し活仲間なんだ。パパと友だちなんだ。いいだろう。みみりん可愛いいだろう、シンママとしてみみりんいつも頑張ってるんだ。だからパパ、みみりんを応援しているんだ。ママがいないときにいつも自慢していたから。同じこと何回も言うからもううんざり」

ハンドルネームMimiko(みみこ)こと、本名、伊藤いとう幸予さちよ。二十三歳。ごく親しい一部のファンだけにみみりんと呼ばせているみたいだった。

今頃康介は女と子どもと三人で賑やかにご飯を食べているんだろうな。康介もいない、一華もいない、一人で食べるご飯は寂しい。ため息しかでなかった。その時だった。コンコンとドアをノックする音が聞こえてきたのは。

「どちら様ですか?」

「警察です」

警察と聞いてどきっとした。

「事故のことでお伺いしたことがあります。お手間は取らせません」

「分かりました。どうぞ」

ドアが開いて二人の刑事が病室に入ってきた。

用件は運転手の説明がころころ変わっている。ただ単なる交通事故ではない。ドライブレコーダーの録画データの提出と、捜査に協力してほしいと言うことだった。

誰かが私の命を狙っている。でもなんのために?考えたくないけど康介か、康介の愛人が邪魔な存在である私を殺そうとしている。だとすると一華の命も危ない。

「どういうことですか?説明してください」

双子の兄の一志と仁志がずかずかと病室に入ってきたから驚いた。

捜査中ですので詳しくは言えませんがと前置きした上で兄たちにも同じように説明をしてくれた。




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