第3話

スマホがブルブルと振動した。

まさに噂をすれば影、電話は康介からだった。

「まゆ、ちょっと待って」

南先輩が自分のスマホを私のスマホの隣に置いた。

「いいよ。スピーカーにして」

よく分からなかったけど南先輩の言う通りにした。

ー何回も掛けてくるな。こっちは仕事が忙しくて手が離せないんだから。急ぎじゃないなら切るぞー

康介は今日もイライラしていた。

気に触るようなことをした覚えがないのにな。もう少し、優しい言い方が出来ないんだろうか。

「あのね、康介」

ーなんだ?機械の音が五月蝿くて聞こえないんだ。今日も残業だから、夕飯はいらないからー

ガチャンと一方的に電話が切れてしまった。

私が事故にあって病院にいるのに、康介は一切耳を貸してはくれなかった。

悔しくて怒りがふつふつと沸いてきた。

「何が仕事よ。今日は家族サービスディー。家族を労る日でしょうが」

南先輩がすぐにリダイアルを押したけど繋がらなかった。しまいには電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないというメッセージが流れてきた。

「南先輩、康介とその女にぎゃふんと言わせたい。協力してくれますか?」

「もちろんよ」

「それと一華のこともお願いできますか?実家の両親に頼むにも、兄のお嫁さんがいるし、子どももいるし、一華が逆に気を遣うと思うんです。康介と、康介の両親には絶対に頼みたくない」

「分かったわ。うちは大歓迎よ。夜遅く帰宅して誰もいなくて、康介がどんな反応するか、それにどんな顔で一華ちゃんを迎えに来るか楽しみね」

「乗り掛かった船だ。俺も協力するよ」

「まゆさんにはずっと長く働いてもらっていて感謝している。痒いところに手が届くし、パン作りから配達と店番までまゆさんなら安心して任せられる。私たちも喜んで協力するよ」

「社長、亜沙子さん、優大さんありがとうございます」

下げられるところまで頭を下げた。

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