第2話ロマンスの神様

私は間宮咲27歳。彼氏はいない。だけど、好きな人はいる。

相手は同じ会社の営業部の小川拓矢さん。拓矢さんは、30歳のスポーツマン。

仕事終わりに、仲間とフットサルに興じている。

だけど、私は3年前に失恋してから、新しい恋にシフトする事自体にためらっている。

でも、会社では優しい先輩であの逞しい身体に惚れてしまった。

私は、近くの神社にお祈りに行った。

この神社は古くからある神社で、境内では御守りやおみくじなどを販売している。

私は祈った。

『小川さんと、お付き合い出来ますように!神様お願い』と。

私は、神社から帰ろうとしたとき、後ろから声を掛けられた。

「お姉さん、お姉さん」

振り向くと中年のオジサンだった。傍らには、オジサンには似合わないきれいな女性も立っていた。

「な、何か用ですか?」

「何か用って、君が祈ったから願いを叶えてやろうと思ってね」

「何の事ですか?」

「男の子と付き合いを祈願したね。それを叶えてやろうと思ってね」

「変な、宗教の勧誘には騙されません!失礼します」

私は、足早にその場を立ち去った。暫く、歩いて横断歩道で信号待ちしていると、また、声がする。

「君の名前は間宮咲。年齢は27歳。好きな人は小川拓矢30歳。君の右肩にほくろがあるね?好きな食べ物は、お寿司。嫌いな食べ物はトマト。趣味は詰将棋。渋いねぇ〜」

私はこのオジサンがホントの神様か?と、思い始めた。

「お姉さん、驚かせてゴメンね。この方は、縁結びの神様なんです。私は学業の神様なの。父が太宰府で仕事していてね。私はここで合格祈願の願いを叶えているの」

きれいな女性は、そう言った。


「どうやって小川さんと交際出来るのですか?」

私はわらにもすがる気持ちでいた。

「君に小川君が興味をもってもらうようにするよ」

「何か、怪しいですね」

「あっ、人間のくせに生意気な!じゃ、もういい」

「ちょっと、先輩、彼女が可哀想じゃないですか〜」

中年の神様は我慢した。

「いいかい、咲ちゃん。日本には、八百万の神がいるの。で、日本の人口が1億3000万人でしょ?だから、神様1人当たり16人の面倒をみてるのよ。忙しいの。でも、私はこの神社で600年間、数々の縁談をまとめてきたの。はいっ、この香水。これで、明日出勤しなさい。小川君は君に興味を持つだろう」

中年の神様は私に香水を渡した。お礼を言おうとすると、姿は無かった。


「さ〜て、見ものだな?」

「先輩、あの香水ってどこで仕入れたの?」

「あ、あれ?あれは、ドラッグストア」

「ドラッグストア〜!」

「中身はファブリーズだよ」

「先輩、大丈夫?」

「ま、見てなさい」


翌朝、私は神様からもらった、香水で出勤した。

「おはようございます。小川さん」

「お、おはよう」

会話はそれだけだった。

週末も、彼はフットサルに興じていた。

ベンチに座った小川の隣に座り、スポーツドリンクを渡した。

それがきっかけだった。

翌々週、彼からお食事の誘いを受けた。私は、もちろん承諾した。

そして、1ヶ月後、小川さんから交際を申し込まれて、お願いしますと言った。


私はまた、神社に行って祈願した。

この、恋が恋のままで終わりません様にと。

すると、懐かしい声が。

「やっと、神社に来たか。な、成功したろ?」

と、中年の神様ときれいな女性神様が現れた。

「あ、あの、香水が切れそうなんです。もつ1つもらえませんか?」

「いや、もう、あの香水は必要ない。小川君は、君との将来を考えているよ。それに、あの香水、実はファブリーズなんだ。だから、君の力で彼氏をゲットしたんだ。自信を持ちなさい」

中年の神様は笑顔だ。

「将来、子供が出来たら学業祈願頑張るから、賽銭はずんでネ」

「あ、ありがとうございます」

と、私は頭を下げた。頭を上げると、正面の神様達は消えていた。

私は、2年間お付き合いして、名字が小川になった。

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