日曜ショートストーリー
羽弦トリス
第1話厳しい先輩
僕は福祉施設に勤める24歳の男だ。
名前は竹畑光一と言う。僕は2年間下っ端で働き、先輩から仕事を教わり今の所順調に仕事をしている。
また、プライベートでは先輩の奢りで酒を飲ませてもらったり、同僚とはよく遊びに出掛けた。
そして、春に新人が数名就職してきた。
僕は先輩らしく、厳しく後輩に仕事を教え、笑いに走る僕を捨ててカッコいい先輩であろうとした。
「後藤君、腹圧はこのヘソから下を押さえて、排尿させるんだ」
「はい。やってみます」
と、指導して自力で尿が出せない利用者のケアを教えた。
また、夜勤のとき床ずれの出来た利用者のガーゼを取り替えたり。
これは、看護師の仕事だが夜勤は看護師がいないので職員が行わなければいけない。
約1ヶ月後、後輩に厳しい先輩として君臨した。
同僚の山下君は、
「最近、竹畑君の事をカッコいいっていう新人が増えてきたよ!」
と、ビールを飲みながら言う。
「ま、僕は演劇部だから、どんな先輩でも演じれるけど、新人になめられちゃいけないかね」
「無理しない方がいいよ。この前、オレの彼女に、『山下君には、内緒だよ!結婚しよう』って言ったでしょ?」
「うん、言ったよ。悪い?」
「うちの彼女は、笑っているけど、やっぱり竹畑君は面白い先輩の方が似合うよ!」
「な〜に、心配すんな。頭がキレて仕事が出来る先輩として、頑張るよ」
「まぁ〜、竹畑君がそれでいいなら」
ある日の夜勤。
夜勤始めての新人の女の子、吉田ちゃんの指導をする。
体位交換や、摘便、吸引、胃ろうによる栄養材の投与、オムツ交換。
教えることは山程あった。
夜勤終了間際、朝の起床と、胃ろうの準備をしていた。
利用者の食事の際の、お湯を沸かしている時だった。
吉田ちゃんは茶碗を布巾で拭いてが、布巾を床に落としてしまった。
僕は、その布巾を拾おうと前にかがんだ瞬間、
ブリッ!
ビクッ!!
「誰だ!」
「せ、先輩です」
僕は放屁して、自身でビックリした。
「ご、ゴメン。出ちゃった」
吉田は笑いながら、
「先輩って、ホントに面白いですね」
「ぼ、僕の何を知ってるんだい?」
「昨日、日勤終わりの山下さんから、竹畑先輩は笑いのプロって言ってましたから」
「そ、そうかい。じゃ、新人ちゃん達は皆、僕の事を知っているのかい?」
「はい、竹畑先輩がいつ、新人を笑わせるかと、この日を待ってました」
「なんだ、知らなかったのは僕だけか……」
皆さん、新人さんの前で失敗したことがありますか?
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