第002話 【ひと夏の経験、そして成長!……でもまだゴリラには勝てない】

 結局何をするために家に寄ったのか不明なまま、アテナが自宅に帰ったのは十七時。

 九月の初めだし、まだまだ外は明るい時間だ。

 いや、間違いなく俺が一緒にダンジョンに入ろうと誘うのを待ってたんだろうけどね?

 少なくとも学生の間は誰とも組まずに、スライム退治に励みたいんだよな……ジョブ経験値的に。


 ちなみに昼飯はピザのデリバリー……は勿体ないので近所のピザベレーで持ち帰り。

 パン生地が揚げパンみたいで美味いんだよな!

 トッピングはもちろんチキンテリヤキ一択。異論は認める。

 いや、そんなことはどうでもいいんだよ。


 ゴールデンウイークからこっち、あまり深く考えないで購入していた下級ジョブスクロール。

 最初は【神官】【魔法使い】【盗賊】【戦士】とバランスよく育ててたんだけどさ。

 その後は割りと適当な感じになってて……。


『どうせコンプリートするならどれから始めても構わんだろう?』


 みたいな?最初はそれでよかったんだけどね?

 下級ジョブをMasterすることによってさらに新しい下級ジョブスクロールが追加されたりもしててさ。

 うん行き当たりばったり、とても良くない。

 数も増えてきたし、初めて中級ジョブにも手を出しちゃったし、ここらで一度再確認しておこうかと思ったわけだ。


 てことで最初に入手したのは上記の四種類。

 一人パーティで何でも出来るもん!って感じだな。

 治療スキルも攻撃魔法スキルもすでに一度は役立っているので俺の目に狂いはなかった!

 ……というか、それ以降全然使って無かったりするんだけど。


 そしてゴールデンウイーク明けから夏休み前までに取ったのが、


 戦士から分岐した【剣士】と【兵士】。

 魔法使いから分岐した【魔女】。

 神官から分岐した【ドルイド】。


 の四種類。この時点ではまだ十分にバランスは取れてる感じだ。

 でも夏休みに入ってからが、かなり近接職に偏ってたんだよな……。


 最初に選んだのは盗賊から分岐した【山賊】【海賊】。

 ほら、夏休み=アウトドアじゃないですか?

 ……その時は、まったく予定は入ってなかったけど、海とプールには行ったので何の問題もナッシング。

 山賊は山歩きとか得意そうだから、海賊は泳ぎが得意そうだからという理由で育てた。どうせなら、一緒にいる女の子くらいにはカッコいいと思われたい男心なのである。


 次に選んだのは兵士から分岐した【重装兵】【弓兵】【騎兵】【工兵】【輜重兵】。理由は歴史モノの映画を見たから。

 オススメは『ロ○ク・ユー』。騎士に憧れた青年が馬上槍試合で活躍するお話なんだけど……何度観ても泣く。

 いや、映画に流されてないでもっと真面目に選べよ!と、言われそうだけど、泥臭い戦争映画……面白いじゃん!男の友情とか、映像で見る分には憧れることもあるのだ!


 その後も、だいたいそんな感じの流れで(映画とか漫画に影響されて)……。

 武器を持ってない時の殴り合いにも対応しようと【拳闘士】。

 拳闘士と剣士からの発生系で名前がカッコいい【剣闘士】。

 弓兵を取ったんだからついでにと【狩人】。

 弓兵と騎兵からの発生系でこちらも名前がカッコいい【遊騎兵】。


 ……見事に魔法職皆無である。

 どう考えても中級ジョブとか言ってる場合ではなく、下級魔法系ジョブの充実が急務である。


 次は、今回増えたアクティブスキルなのだが……多い、物凄い多い。

 普段遣いしてないと間違いなくとっさには思い出せないだろこれ。

 一応おさらいも含めて、現状で【Master】(ランク10まで上げきったもの)しているジョブすべてのスキルを並べると、



【神官】  『手当』『治療』『解毒』

【魔法使い】『魔法の矢』『魔法の糸』『火球』

【盗賊】  『警戒』『(建物内の)罠の察知』『解錠』

【戦士】  『強打』『受け流し』『武装修練』


【剣士】  『斬撃』『すり足』『剣術』

【兵士】  『捕縛』『集団行動』『武装修練』

【魔女】  『念動力(テレキネシス)』『念話(テレパシー)』『眠りの粉』

【ドルイド】『健康な植物』『絡みつく蔦』『植物の急成長』


【山賊】  『山走り』『生き汚い』『斧術』

【海賊】  『水泳』『軽業』『小型船操船』

【重装兵】 『重装備』『挑発』『盾術』

【弓兵】  『遠視』『照準』『弓術』


【騎兵】  『騎乗術』『騎乗突撃』『剣術』

【工兵】  『野外作業』『(野外の)罠の察知』『罠の設置』

【輜重兵】 『騎乗術』『操車術』『所持重量増』

【拳闘士】 『視力』『効果的な打撃』『体術』


【剣闘士】 『体術』『剣術』『武装修練』

【狩人】  『警戒』『効果的な射撃』『弓術』

【遊騎兵】 『警戒』『気配を消す』『弓術』



 『これ、ダンジョンで使うスキルか?』というのもいっぱいあるけど、気にしてはいけない。

 そして『剣術』とか『武装修練』とか被ってるスキルもあるけど、スキルの表示が『剣術レベル3』とか『武装修練レベル3』と、なっているので無意味ではない……と思う。


 いや、体感で分かるだろ!って言われそうだけど、スキル以外にも『基礎能力値』が大幅に上がってるからさ。

 うまく身体が動くようになったのが、スキルのおかげなのかどうかの判断までは難しいという。

 剣術の師範とかと対人戦をすれば確認も出来るんだろうけどね?

 スライム相手ではそれほどの変化も無く。


 てことで続いては増えた『基礎能力値』、パッシブスキルだな。

 『体術』とか『剣術』とかの『ナントカ術』も、体に染み付いていて魔法力を消費しないからパッシブスキルなんだけど、ここでは『基礎能力値』が上がるものだけを合計して並べると、



 ・耐久力(HP):二十一割上昇


 ・魔法力(MP):八割上昇


 ・魔法力(MP)回復速度:六割上昇


 ・物理攻撃力(STR):十七割上昇


 ・物理防御力(DFE):十四割上昇


 ・魔法攻撃力(MGA):二割上昇


 ・魔法防御力(MGR):六割上昇


 ・回避率(AGI):十七割上昇


 ・命中率(DEX):二十三割上昇



 耐久力と命中率が群を抜いて高いな。

 そして何割表示はややこしいから出来ればパーセンテージ表示に……切り替わった!?

 まぁ、あれだ、耐久力ならおおよそ三倍、物理攻撃力なら三倍弱って感じか。


 数字の見た目だけならかなり強くなってる気がするけど、握力換算すれば成人男性の握力50㎏が150㎏になったところで、まだまだゴリラの500㎏には敵わないんだよなぁ……。

 いかん、考え方が原西妹みたいになってる。

 別に握力でゴリラに勝つ必要なんてないもんな。


 何にしても。しばらくは魔法系ジョブを中心に育てていかないと……。

 でも、今の俺のジョブ、中級ジョブの『魔法剣士』なんだよな。

 もちろん名前の響きがカッコよかったから取った!


 でも、中級ジョブってMasterするまでに必要な経験値量が今までの五倍なんだよ。

 つまり、スライムを『5000匹』倒さないとランク10にならないという……かなり早まったよなこれ。

 でも中級のジョブスクロールって魔石10000個だからさ。

 購入金額に直すと三百萬円。

 Master前に下級ジョブに上書きするのは勿体ない額なんだよね……。


 あ、能力値の上昇に伴い、『★(コモン)』だった俺のランクが、『★★★★(ハイレア)』まで上がったよ!

 これ、パッシブスキルで上がってるステイタスの上昇率を考えると、『★』でダンジョンに入るのって結構な自殺行為なんじゃ……。


 もちろんレベルアップでの成長と、戦闘に対する慣れもあるけど、『★★(アンコモン)』と『★★★(レア)』だけでグループを組んでるトオル……じゃなくてアテナたちですら二階層で苦戦してたんだよ?

 でも、その後一緒に潜った俺がまったく苦労しなかったんだから、ただただ戦闘経験が足りなかっただけかもしれないな。

 何にしても、これからも十二分に安全マージンを取りながら潜らないとな。


 もちろん増えてるのはジョブだけじゃなく、魔石の貯蓄も順調に増えて、今ではおおよそ30万個ほどの余裕がある。

 そのぶん現金を使ってるから貯金はそれほど溜まってないけど……それでも三千萬円くらいはあるしな!

 まぁ足りなければ六条さんに捌いてもらうお薬の量を増やせばなんとかなるだろう。

 当然お薬の読み方は『ヤク』ではなく『ポーション』である。


 てか、『魔石があるなら異世界商店のランクアップ費用に当てろよ』と思われるかもしれないけど、中級の商品も鉱石の類もお高いからさ……いつなんどき性能の良い装備品が必要になるかもしれないので、今のところ貯蓄に回している。

 そもそも中級ですらまったく使ってないし?これ以上に高級な品物を出されてもどうせ買えないからさ。

 次に何が出てくるか物凄く興味はあるんだけどな。

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