召喚された異世界で(知らない奴が)魔神を退治したら日本に送り返された俺。向こうでは役立たずだった祝福、『異世界商人』で日本初のダンジョン攻略者になる!
第035話 【いきなり登場した不審者、そして始まる探偵物語】
第035話 【いきなり登場した不審者、そして始まる探偵物語】
玄関を上がり、応接間(ずぶ濡れでお邪魔したとき、シャワー上がりに案内された和室)まで案内される俺――というより全員参加で応接間に移動したんだけどさ。
うん?知らないオッサン?どうやら叔父さんだったらしい。奥ではその息子も待ってたし。
男だった時のアテナと比べてかなり大人しい感じだけど、なかなかの男前なので少しイラッとする、心のとても狭い俺である。
てか室内、ちょっと広めの応接間だけど家具もあるし、さすがに七人も一部屋に入ると結構な圧迫感があるな……。
「真紅璃くん、朝から急に呼び出したような形になってしまい申し訳ない。
まずは昨日の騒ぎの謝罪と、娘を元に戻してくれたお礼を」
大きなテーブルの上に手を付き、こちらに頭を下げるアテナの親父さん。
「これまでの娘の悩み、そして私たち家族の悩みを解決して貰ったこの恩……どれほど感謝しても感謝しきれん……」
「いえ、彼女にも説明いたしましたが、治療しようと思っての行動ではなく偶然が重なっただけの話ですので。
お気持ちは受け取らせて頂きますので、どうぞ頭を上げてください」
厳つい親父にいつまでも頭を下げられてるのは居心地が悪いからな。
「ありがとう。しかし君はあれだな、高校生にしてはえらく場馴れしているというか、物怖じしないというか」
「まぁ迷宮科なんていう、魔物と呼ばれていようが、生き物の殺生を推奨するようなところに通ってますので」
「なるほど……いや、そう言えば娘に聞いたところによると、君はかなり優秀な生徒らしいじゃないか?
私は弟とは違い、あまりダンジョンという物に詳しくは無いのだが……何やら珍しい魔物を、魔法を使い一人で退治したとか?」
「それもたまたま、そいつに効果のあるスキルを覚えていただけの話ですので、特に自慢にはなりませんけどね?」
「ははっ、君にかかれば最終的には何でも『たまたま、運良く』という話になるのだな」
だって事実だから仕方ないじゃん。
多少スライムを倒すのが上手くなったところでまだまだ駆け出し冒険者レベル。
異世界で棒切れ片手に、ドラゴン相手に大暴れするような、人外に片足突っ込んでる一部勇者とは違うんだよ……。
「まぁそれでもだ!君には大きな借りが出来たのは確かなことだ。
もしも、君に何か困ったことがあれば……何でも相談してくれたまえ。
これでも家は三代続いての警察官だからな、それなりに社会的な信用はある。
むろんその信用に足るような社会貢献もしているつもりだ。
しかし、もちろんアレだぞ?何でもと言うわけにはいかないからな?
特に娘との交際などは……」
「あー、兄貴、そろそろ交代してもらってもいいかな?
ええと、真紅璃くんだったかな?っと、まずはこちらの自己紹介が先だな。
俺は『久堂(くどう) 信一(のぶかず)』、これでも少しは名の知れた探索者だ。まぁ若い子に名前を知られているような見目が良くて若い、一握りの上級探索者では無いけどな。
隣のこいつは息子の『透』、アテナちゃんが昨日まではそう名乗ってたから、名前だけは知ってるだろう?」
なるほど、くどうしんい……のぶかず。
探索者よりも探偵をしてそうな名前だな。あと、変な薬で子供になってそう。
アテナのお父さんよりもガッシリとした、ちょっとしたプロレスラーみたいなおっさんである。てか、身体がデカければ声もデカい。
「久堂……透です……」
それに対して息子さん、ティアラちゃんとタメを張れるほどの小さな声。
別になよっとした感じでも無いんだけど、たぶん大人しい子なんだろう。
「ご丁寧にどうも。自分は真紅璃夕霧です。職業は……家事手伝い?」
「ははっ、なるほど。
それで……いきなりで申し訳ないが、その家事手伝いのユウギリくんは、誰も取り外すことの出来なかったあの石をどうやって姪の体から取り出せたのかな?」
玄関先で出会ったときに感じた通り、やっぱりこのオッサンからは不満というか不機嫌な気配を感じるんだよなぁ……俺、一応は息子さんをもとに戻した恩人だよな?探索者だから、何かを感じ取って警戒でもされてるのか?
様子を伺うためってわけでもないけど、あまり嬉しくはないがオッサンと二人でじっと見つめ合う俺。
しかし、お兄さんである、アテナのお父さんの話に割って入っての質問が『どうやって石を取り出したか』なのか。
別に無事に息子さんの身体からも石は外れたんだから、興味はあるだろうけど今すぐにしなきゃいけない話でもないだろうと思うんだけど。
てか、このオッサンが知りたいのは本当に外し方なのか?……もしかしてだけど、外し方じゃなくて付け方、つまり解除方法じゃなくて発動方法を知ろうとしてる……なんてことも。
昨日の、アテナと親父さんの電話のやり取りを聞いたところだと、息子さんの回復に泣いて喜んでた……いや、泣いてたとは聞いたけど喜んでたとは言った無かったような?
もしかしたら可愛い娘が息子に戻ってガッカリした、なんてことは……さすがにちょっと穿ち過ぎな考えだろうか。
ただの俺の思いこみだが、ちょっときな臭く感じるオッサンから隣に座る息子さんに視線を移す。
こいつはこいつで妙にガチガチに緊張してるんだよな。どういう反応なんだこれ?
でも、もしも本当に娘が息子に戻ったことに喜んでなかったとしたら、そもそも息子の方も喜んでいないとしたら。
うーん、言ってしまえば他所様の家庭の話、それも友人の叔父家族なんていうこれから付き合いが出来る事なんてない相手、これ以上踏み込む必要も無い話なんだよな。
ちらっと女の子になったばかりの友人に視線を向けると、彼女もこちらを見ていたらしく目が合い、ニコッと微笑む。
うん、放って置いてまたこいつが何かあっても困るしな。
そもそもの話なんだけどさ、あの赤い石っていうか『性別転換の魔導具』、作動させるためには『石に触れている状態で、それなりの魔法力を流し込み、発動語句(コマンドワード)を唱える』必要があったと思うんだよ。
まぁ異世界の魔導具と同じなら、コマンドワードは声に出さなくとも念じるだけでいいのかも知れないけど。
つまり、アテナが男の子になった時、本人か従兄弟のどちらか、または一緒に石に触れる事が出来た第三者に『アテナが男になって欲しい』または『従兄弟が女になって欲しい』と願った人間が必ずいるわけで。
そして回復した時の雰囲気から、アテナ本人とその家族はそんな事は思っていなかっただろう……いや、たまたま、刹那的にそんなことを考えてしまうこともあるかもしれないか。
うん、ちょっと性格が悪いかもしれないけど、向こうから振ってきた話でもあるんだし?ここで少しくらいこちらからカマを掛けるような事をしても文句は言われないだろう。
「どうやって外したか、ですか?
先程もお話したように、本当に偶然なんですけどね?
どこかの本で読んだのかアニメで見たのか……何となくその方法を試してみたら成功したと言いますか。
というか、逆に聞きたいんですけど、探索者をされている方なら『あの石が魔導具である』ことはわかっていたんじゃないですか?
もしかしてそれを、何の鑑定もせずに息子さんや姪御さんにプレゼントされたと?」
「真紅璃くん、さすがにそれは……弟も悪気があってしたことではないんだ。
たまたま不運が重なった結果の話なのだからな……」
「いや、兄貴、確かに普通ならそう思われるのも仕方がない。
それに彼はアテナちゃんの彼氏さんだからな、愛する彼女をそんな目に合わせた俺を疑うのは仕方ないさ。
そもそも……彼に対して大人気もなく、拗ねた態度をとっていたのは俺の方なのだからな」
「叔父さん!?ぼ、僕とユウはまだ、そ、そういう関係ではないからね!?
そっかー、でもヤキモチかー、そこまで遡ってヤキモチやいちゃうのかー」
あれ?言い訳が始まるかと思ったのにやけにしおらしい態度になっちゃったんだけど……。
そして緊張感のないアテナの発言でお父さん以外の場の空気が少し和む。
いや、本当に和んでる場合なのか?
もしかして、これはこのオッサンの罠ではないのか!?
そもそもここは俺にとっては『他所の家(アウェー)』。
問い詰められたことに反論するのではなく、反省することにより大人の態度を演出。
それにより、問い詰めた小生意気な探偵気取りの小僧である俺をただの小生意気な高校生に仕立て上げようとしている!?
その脳筋丸出しの外見からすっかり騙されていたが、このオッサンの兄は警察署長を務めるような人材、つまりキャリア組なのである!
そう、このオッサンも腕立て伏せをしながら顎で数を数えることしか出来ないような人間であるはずが無いのだっ!!(物凄い偏見)
「まぁ、一応言い訳はさせてもらうが……あの石に関してはちゃんと迷宮事務所で鑑定してもらったんだよ。
そして鑑定結果は『幸運のお守り』だった。
もちろんどれほどの効果があるかまではわからなかったんだけどな?
恥ずかしい話になるんだが……当時の俺は少しばかり荒れていてな」
えっと、いきなり自分語りが始まっちゃったんだけど、何の流れなんだこれ?
とりあえず、ただただ的外れな事を言っただけかもしれない自分が無性に恥ずかしくなってきたんだけど?
―・―・―・―・―
「久堂信一(のぶかず)……探……索者さ」
てか、何だこのいきなり始まった『犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ』みたいな流れ……。
犯人(アテナちゃん男体化の原因)が解った方はコメント欄まで!(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます